スタートアップで働くなら読んでほしい基本の教科書30選:仕事力を作ってくれる知識と考え方
弊社のスタッフ向けに推奨している教科書リストをご紹介。新卒や中途入社にかかわらず全社員が対象です。
この教科書リストにある本は「この1冊で人生が変わった!」とかいう類のものではなく入門書的なもので、エンジニア/営業/マーケティング/CS等の職種にかかわらず、全ての人に最低限理解して身につけて欲しい内容です。
学校や読書より、明確な問題意識をもって日々の仕事に真摯に取り組むことがビジネスパーソンとしての大きな成長につながると信じています。でも、仕事だけでは成長できません。イベントやSNSで刺激を受けるのも大切だけど、基礎がないとそもそも役に立たないし、勉強してない人の底の浅さはすぐバレてしまう。
基礎能力を伸ばすには体系だった知識と理解が必要で、入門書を読むことが一番の近道。こういう土台を引き上げる努力が、弊社が提供する「現場向け動画教育システム tebiki」の事業開発にも役立っているなーと普段から感じてます(新入社員に配布したり貸し出したりしてます)。基本を勉強したい人に少しでもお役にたてればうれしいです。
( 貴山 @tkiyama )
※弊社の他の教科書シリーズ (営業の教科書/SaaSの教科書)もよろしければご参照ください。
教科書リストを作った理由
2つの気持ちから、この教科書リストを作りました。
ひとつは、教育にかける時間もお金もなくてごめんなさい、という気持ちです。
社員向けの「教育研修」があるのはたいてい大企業だけで、弊社のような小さな会社にとっては教育=OJT。大企業の集合研修、特に新人研修のほとんどは時間の無駄、というのは私の経験談ですが、それでもやはり一部は役立つし、何より企業の姿勢として、OJT以外の社員教育にリソースを使うことが大事だと思います。とはいえそんな余裕もないので、せめて推薦図書リストぐらいは作ろうと思いました。
もうひとつは、この程度のレベルは自分で勉強してきて欲しい、という気持ちです。
基本的なことをひとつひとつ教える時間はないし、会社のOJTや「人材育成」制度に頼らずに自分から学ぶ人じゃないと、いずれにせよ生き残れない。教育研修というと受け身で他人事な感じですが、本を読むかどうかは自分事。キャリアは会社が用意するのじゃなくて自分で作るものだよ、という思いを込めて、教科書リストを作りました。
※以下、「ピナ社」とは弊社のことです。社内スタッフ向けの文章をそのまま載せています。
データ分析
数字に強い人と弱い人の一番の違いは、データ分析の手法を勉強したかどうか。 ピナ社のアクションは、数値分析の結果に基づいています。数字を見る力がなければ、チームを動かすことはできません。実際のところ、ビジネスの現場では高度な統計分析は必要ない、というか役立たない。ほとんどが簡単な四則演算で事足ります。大事なことは、目的志向をもってデータを集めて分析すること。そのためにも、まずはデータ分析の基本を頭に入れましょう。
「14のフレームワーク」は、いろいろ切り口あるよねーぐらいで良いんだけど、この本の大事なところはデータ分析の準備に関する章です。 データ分析で一番大切なことは、分析そのものではなく準備。 何が目的で、どうやって、分析の結果どんなアクションを起こしたいかを明確にしてからデータ分析に入る。そうしないと延々と無駄な分析時間をかけることになります。
KPIなどの各種管理に表計算ソフトを使うわけですが、この本は、誰が見てもわかりやすいExcelファイルの作り方を解説したもの(Googleスプレッドシートも考え方は同じ)。
普段のビジネスには難しい統計解析も微分積分も不要。結局みんなが計算式を理解できる分析じゃないとチームのKPIとして使えない。大事なのは、数学センスじゃなくて明快なわかりやすさです。
自分1人が使う場合でも、1ヶ月前の自分は他人です。なぜ、なにを、どう計算したのか、誰から見てもわかりやすい表計算を心がけましょう。
(ちなみにピナ社の自動計算数値は青色text)
ビジネスの意思決定のための数値分析のやり方をわかりやすくまとめた本。
「数字なき物語も、物語なき数字も意味はない。」とはキヤノンの御手洗さんの言葉ですが、数字でビジネスを進められない人は、統計の知識不足というよりパターンを知らない事が多いです。比較とか外れ値とかのセオリーを知らないので、最初に目星をつけられない。統計を勉強しながら分析の場数を増やすのが一番なのですが、ちょうどよい機会がない人は、こういう本で勉強するのが近道。
(それなりに高度な統計の話が出てきます。全部わからなくても、なんとなくでもいいから理解するのが大事)
ミーティング/打ち合わせ
本を手に取るたびに佐藤可士和に見つめられる謎の本ですが、中身はとてもわかりやすい。基本的なことがすっきりまとまっています。
意識しないと、会議はとにかく長くなるし、議論の時間が長いほど、仕事した気分になってしまう。ミーティングそのものは何も生み出さないけど、人件費は確実に使います。ミーティングの結果、何をどう行動するかが大事。情報共有のために開催するのであれば、誰と、何のための情報共有かを考えて。
論理思考
誰かの発言をそのまま言ったり、代案なく批判するのは、「自分で考える」とは違うことです。では、「自分で考える」とはどういうことか。
「もっと考えろ!」と言われても、どうやって考えればいいのか。。。という人におすすめ。サッカー留学するピンキー君を主人公に、物語とともに話が進んでいくのですが、これが思わぬ展開で面白い。ビジネス書でこういう本は珍しい。
社内向け、取引先向け、ユーザー向け、それぞれに、「分かりやすい表現」があります。相手目線になることが、ビジネスパーソンとしての第一歩。駅の案内板などのイマイチな例がとてもわかりやすい。
論理思考力はトレーニングで伸びます。ロジカルシンキングの入門編。
「なに言ってるかわかんないだけど」「で、どうするの?」「なんで?」「事実と意見をわけろ」とかいう横柄な奴をギャフンと言わせてやりましょう!
仮説思考
普段の仕事で「仮説を立てる」ことを意識したことがない人は、必ず読んで下さい。他の人とくらべて、やたらと仕事が早い人、正解にたどりつくのが早い人がいます。そういう人は「仮説思考」ができている。「仮説思考」とは何か、そのメリットは、なぜ必要なのか、などなどを一冊にわかりやすくまとめた本。
一生懸命時間をかけたけど、成果がとても小さかった(もしくは時間の無駄だった)、という事はピナ社にもあります。その原因は、その課題が「イシュー」ではなかったから。根性に逃げず、悩まず、最短距離で、大きなインパクトのあるアクションを起こすための本。
経理・会計・財務
経理・財務、会計の原則とかしくみのことを、社長、副社長、専務、取締役も、部長も、課長も、普通の社員も、みんな同じように知らなければならない。」とは、信越化学工業の金児昭氏のお言葉。
ピナ社は商売しています。スタッフは全員商売人。カネ勘定ができない人は商売人じゃない。職種に関係なく、最低限の簿記の知識を身につけるべし。簿記(仕訳)が、損益計算書とか貸借対照表の基礎になっています。
B/S、P/L、C/Fの違いをなんとなく理解できたらこちらの本をどうぞ。初級〜中級レベル。要点がわかりやすくまとまってる。装丁が硬い紙を読んでると頭よくなった気分になれます。
交渉
「交渉学」で言われていることは、だいたいこの本でカバーできます。入門書として最適。「交渉は勝つか負けるかだ!」と誤解している人がたくさんいますが、そうではないよ、ということを理解するだけでも読む価値あり。
出版社が装丁を変えて発売しているので最近の本に見えますが、実際は1991年初版で「交渉学」の分野では古典。何が "決定版" かわからないし、"ハーバード流" っていうのもどうなの?という感じですが、原文のタイトルは"Getting Past No - Negotiating with Difficult People" なので気にせずに。入門書としては「【ビジュアル解説】交渉学入門」の方が優れていて、こちらは交渉のTIPS集として使えます。
「交渉」というと「価格交渉」などをイメージしますが、実際は日々の多くのコミュニケーションも「交渉」です。社内で誰かに何かをお願いするとき、クレーマーから理不尽な要求をされているとき、チームを動かすとき、良い結果をもたらせるかどうかは自分の交渉力次第。交渉の本はたくさんありますが、理論と実践がバランスよく配置された良書。最初に著者の自慢から入るので「いきなり自慢かよ...」となりますが...
チームマネジメント
管理職はもちろんですが、管理職でなくても「仕事を任せる」機会は多々あります。同僚に、後輩に、他部門に、社外に、などなど。いつ、誰に、どうやって、どこまで、「任せる」べきなのか。
業務責任者を任命する=「任せる」ではありません。仕事を割り振るだけなら誰でもできる。それはただの「丸投げ」で、責任もリスペクトもない。これまで、「丸投げ」=「任せる」ことだと勘違いした管理職のせいで、たくさんの人が不幸になるのを見てきました。
管理職にスピード出世したあとに、うつ病になって自ら降格を願い出た著者のノウハウはリアリティを感じる良書です。表紙はダサいけど。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントの基本は、自分のタスク管理。タイトル通り、タスク管理の超入門書です。「マンガでわかる」だから、マンガの挿絵が多いと思ったら、全部マンガでした。内容は超シンプル。これA4一枚で良くない?ぐらいな内容の薄さだけど、意外とできてない人が多い、タスク管理の基本がとてもわかりやすく書かれています。例えば、自分の持ってるタスクを全部書き出すとか。自分の時間は有限なので、仕事が増えてもやれることは目の前のタスクだけ。どんなにきつい状況でも、自分のタスクを冷静に見つめることができれば、解決の道は自然と見えてくるものです。
新規事業立ち上げ、新機能の追加、サイトリニューアル、、、そういう仕事をする人に読んで欲しい本。著者が言いたいことをひとことでいうと、「誰も必要としないモノを作るのはやめてくれ」。書いてあることは普通ですが、著者の魂の叫びを感じとれると、事業の指針となる本です。(英語ができる人はぜひ原著を The Lean Startup: How Constant Innovation Creates Radically Successful Businesses
ウェブマーケティング
ウェブマーケティングは変化が激しく、本で書かれていることがすぐ陳腐化しますが、基本はキーワード設計です。タイトルはかなり胡散臭いけど、エッセンスは本物。2006年に書かれたかなり古い本ですが、考え方は今も通用します。
オペレーション設計
この本でいう「片づけ」は一般的な用語とはちょっと違ってて、安全/品質/効率を管理するために、日本の製造業が数十年かけて開発してきた「5S」をわかりやすく解説した本です。
「トヨタの片づけ」を図にした本。5S(この本でいう「片づけ」)を頭で理解するのは簡単だけど、身体がついてくるまでは何年もかかる。図解版を併せてどうぞ。業務ミス防止の基本は5Sです。オペレーションをキレイに整理して、見える化していくと、自然とミスはなくなるよ。
ミスが発生したとき、典型的な反応はこの3つ。
「次は絶対ミスしないように頑張ります!(気持ちだけ)」
「仕事が忙しいから、仕方ないよね(本人がシュンとなっているので周りも遠慮)」
「頻度少ないから、まーいっか(雑)」
どれも間違い。ミスが発生したら、まず、「このミスは再発可能性あるか?」 と考えて、少しでも可能性があるなら、防止策を検討するのが正しい。責任じゃなくて対策をとる。責任なんて誰にもとれないしね。
ミスがあると、「自分/あの人は悪くない!普段頑張ってるし!」みたいな防衛本能が作動してしまうので、なかなか理解してもらえないのだけど、(自分or他人の)ミスを責めるんじゃなくて、再発防止策に意識を切り替えられるかが、オペレーション設計できる人とできない人の違いです。
経験上、だいたいの再発防止策は手間かからない。難易度が高いのはごく一部で、ちょっとした工夫で再発防止できることが多い。ヒューマンエラーは一定確率で必ず発生するので、「意識しましょう」じゃなくて仕組みが大切。対策はいろんな種類があって、システム化する、記録様式を変える、わざとめんどくさくする、紙にする、などなど。最後は指さし確認(指差呼称)。電車の車掌さんが声を出して指をさしているのは、声で脳を刺激することで習慣化させるためで、とても有効な方法だったりします。
文章の書き方/キャッチコピー
ウェブサイトでもメールでも、長い文章はわかりにくいし、相手が読んでくれません。メールのタイトル次第で、開封率はまるで違います。キャッチコピーの作り方というより、短いメッセージでどうやってユーザーを動かすか、という本だと考えてね。
「丁寧でわかりやすい文章を書けないんです」というあなたへ。
自分で訓練しないと、ビジネスメールは普通は書けません。勉強あるのみ。
一言でいうと「相手の立場にたって書きましょう」なんだけど、具体的な方法として、箇条書きにするとか、日にちは曜日も書くとか、相手の要望をお断りするときは結論に理由を添えるとか(これができるかでレベルが分かれる)、そういう普通のことだけど、ちゃんとできる人は少ない大切な事を教えてくれる本。
豊富な文例集。いろんなパターンの引出しを増やして、メールにかける時間を短縮しましょう。同じ著者が内容の大部分をwebサイトにて公開してるので、この本を一読してから、webサイトを都度参照するのがオススメ。
(特に新卒入社のみなさま!)あなたの敬語はかなり間違ってます。基礎からお勉強。敬語なんてどうでもいいと思っているあなたも、どうでもいいかを決めるのは、自分ではなく相手だよ。
漢検2級=高校卒業・大学・一般程度、というわりには結構レベルたかい。漢字読めない&書けないとかなりダサいので、仕事してて読めない漢字があったら勉強してね。ボキャブラリーを増やしたい方もどうぞ。
クレーム対応
普段ユーザーサポートをしないチームにも読んでいただきたい一冊。全てのアクションは、ユーザーからの反応を生み出します。時によっては特大クレームも。クレームはカスタマーサポートに任せておけばいいと思ってる組織に未来はありません。クレーム対応を普段やらない人こそ、それがどういうものか、せめて教科書でイメトレしましょう。
プレゼンテーション/講演
スティーブ・ジョブズのプレゼンは本当に素晴らしい。実はかなり綿密に準備されていて、そのメソッドを真似すれば、多少は近づけることがわかります。ビジネスプレゼンとして世界最高水準を理解するためにも、実際の動画とあわせてぜひ。YouTubeで検索すればすぐ出てきますが、映画「スティーブ・ジョブス」公開までに見ておくべき5つの動画とかにまとまってます。
プレゼンや講演のやり方の本はたくさん出てるけど、使える本は意外と少ない。すごい選手が良い監督になるとは限らないというか、著者の人はたぶんすごいプレゼンうまいんだろうなーとは思うけど、ノウハウ本としては使いにくいものが多いです。この本は、最初の方はいろいろ盛ってて辟易するのでさらっと読み飛ばして、49ページ目以降にTIPSがよくまとまってます。プレゼンはストーリーが大事とはよく言われますが、どういう組み立て方をすると、聴衆が面白いと感じてくれるストーリーになるかを教えてくれます。
おまけ
速読の本はたくさんありますが、だいたいどの本も「熱血指導」「うさんくさい速読術」「普通の速読スキル」という3つの内容から構成されてます。
「熱血指導」では、本をたくさん読むとバラ色の人生が待ってるぜ!ということを延々と語ってくれます。
「うさんくさい速読術」とは、ぱっとページを一瞬見ただけで内容が全て理解できるとか。ドラえもんの暗記パンレベルのすごさで、そんなのほんとにできるんだったら義務教育で教えようよ、という感じ。
「普通の速読スキル」が大事です。一番最初に目次を熟読しましょうとか、著者の狙いを理解してから読みはじめましょうとか。言われたらその通りなんだけど、ちゃんと意識すると読書スピードがすぐに1.5倍ぐらいになるので、知ってると知らないではかなりの違いが出る。
この本の場合、「普通の速読スキル」について書かれているのが第2章。ここだけだったら10分で読めるので、一度目を通しておくことをおすすめします。
健全な精神は、健康な肉体に宿ります。健康な人だけがタフな仕事をやり切ることができる。そして、健康であり続けるためには、適切な体脂肪コントロールがとても大切です。
この本は、私が減量してるときに、体重が落ちなくて困っているときに見つけました。最初の2章までは格闘家向けのディープな話ですが、第3章からは一般向け。「ダイエット」は痩せたらいいなだけど、「減量」は必達目標。格闘家の減量が根性に頼っていたのは昔のはなしで、闘うための身体のパフォーマンスを維持しながら体重を減らすやり方は非常に科学的です。「カラダと対話」しながら、身体に過度な負担をかけずに進めていく方法論は、一般向けも全く同じ。格闘家が培ったノウハウを一般向けにわかりやすく説明してくれる良書です。
さいごに
実際、このリストを作ってからの反応はどうかというと、やっぱり成長する人は積極的に読んで努力します。この教科書リストが、努力する人のサポートになってうれしい。個別の本の反応でいうと、こんな感じです。
誰でもやさしく理解できて、実践的で、業務に役立つ入門書は意外となくて、苦労して探しました。弊社の教科書リストがみなさまの役に少しでも立ってくれればうれしいです。逆に、この本の方がもっといいよ!、というものがあればぜひ教えてください〜。
ピナクルズ社では一緒に働く仲間を募集してます!
tebikiという、店舗/倉庫/工場などの「現場向け動画教育システム」を提供しています。社員一桁台になりたい人、会社の看板じゃなくて自分の力で事業をつくって世界を変えたい人、一緒にやりましょう!!