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【読書メモ】独学の思考法

地頭を鍛える「考える技術」
山野弘樹 著

考えるとはどういうことか

本を読むことは他人の思索の痕跡をなぞっていて、他人の考えを蓄積しているだけであると著者は言う。お手本の字をなぞっているだけの状態。
自分自身の字を書いていないのに、お手本をなぞって上手く書けて満足している人が多くいる。陰謀論にハマってしまう人もその一例である。
自分で考えていないという。

私も思い当たる節が多々ある。
本で読んだ知識を引っ張ってきて、さも自分で考えたかのように思ってしまう。仕事で仮説検証を行う際だって、頭の片隅から、聞いたことのあるような仮説を引っ張って来て、聞いたことのあるような考察結果に落ち着く。
自分では考えたつもりになっている。自分自身すら騙してしまうのが怖いところである。

ただ、だから読書が悪だ。読むべきではないということではない。
自分で字を書くにしろ、まずはお手本がいる。
読んで満足するだけではダメだということだ。読んで、考えなくてはならない。

自分の足で走るための5つのスキル

私は「手本をなぞる」という言い方がしっくりきたので、それに例えたが、著者は自分で考えることを「走ること」と例えている。
自分で考えないことは人の足跡を辿る状態である。
ではどうすれば自分の足で走れるのか。著者はそのスキルを5つにまとめている。

・問いを立てる力
 
思考の出発点を決める
・分節する力
 
重要な情報を見極めて、関連性を整理し、どこが理解できていないか
 ということを理解する
・要約する力
 
要約とは筆者の主張を構成する重要な骨子だけを抜き出して、
 そこで展開されるロジックを最もコンパクトな形で再構築する知的作業
 である。重要な骨子を抜き出す=分節する力である
・論証する力
 
テーマの問いがあり、それに対しての問いがあり答えがある。そして最後
 にテーマに対しての結論が出る。問いと答えの循環によって本論全体の
 ロジックは緊密に繋ぎ合わされていく。ここに自分の問いを入れずに、
 要約した情報を羅列するだけでは議論は展開されない。
・物語化する力
 
人に上手く伝えられないということは、自分の理解がまだ乏しいという
 ことである。掴み、山場、オチを設けることで、物語の輪郭をはっきり
 させる。

これらを応用する

対話的思考
 問いによって他者に寄り添う。他者の意見をすぐに否定するのではなく、
 事例の具体性を問う。定義の具体性を問う。根拠の具体性を問う。
 また、判断の普遍性を探究する問いも有効である。「大学は絶対に
 行った方が良い」と主張する人がいれば「大学ならどこでも良いのです 
 か?」という具合だ。問いによって他者に寄り添うことで、頭から否定
 否定するものでもなく、何も考えずに他者を肯定するものでもなくなる。

チャリタブルリーディング
 他者の思考を解釈する方法である。相手の欠点があれば補ってあげ、長所
 があれば伸ばしてあげる。相手の議論をより完全なものになるように
 サポートするように読む方法だ。
 まず相手が一面の真理をついていると仮定する。何らかの意味で相手が
 正しいことを言っていると思うということである。
 対話の万能薬であるとは言えないが、論理的に配慮がなされ、論理的にも
 道筋の通った対話や議論の場を創り上げていく際に有効な手法である。



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