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「メンバーシップ2.0型組織」で行こう! (後編)withコロナ時代の組織の新常態

前回のメンバーシップ2.0型組織で行こう!(前編)では、ジョブ型組織が今後日本で浸透・定着するかどうかを考察しました。
今回は、これからの日本にフィットする組織のあり方として、「メンバーシップ2.0型組織」をご紹介します。

■日本の活路はメンバーシップ型組織の“進化”にある

私は、メンバーシップ型組織の進化形こそ、次世代の組織モデルにふさわしいと考えています。その進化形を「メンバーシップ2.0型組織」と呼ぶことにします。
メンバーシップ2.0型組織は、ジョブ型組織のようにコミュニティの要素を排除せずに、むしろ積極的に、イノベーションや社会的価値の創造のために、ビジネスにおいてコミュニティの力を活用していこうというモデルです。
ただし、これからのビジネス組織におけるコミュニティは、従来のメンバーシップ型組織(以下、メンバーシップ1.0型組織と呼びます)のように、前近代的なコミュニティ(=村社会的)ではいけません。個性や多様性が尊重される21世紀にふさわしいコミュニティを創造していく必要があるのです。

メンバーシップ1.0型組織、メンバーシップ2.0型組織、ジョブ型組織の位置づけは、次の図を見てください。

図メンバーシップ2.0型組織

メンバーシップ1.0型組織は、コミュニティとしての性質が強いものの、同質性が高く、同調圧力が強いという特徴を持っています。一方、メンバーの自立度は低く、組織に依存しています。

ジョブ型組織では、個人の自立心は高く、プロ意識も高いもののコミュニティとしての性質は弱く、個人主義で機能集団的な組織です。

メンバーシップ2.0型組織は、ジョブ型組織と同様に個人の自立度が高く、専門性も高いのですが、仲間とともに追いかける夢の実現のために専門性をチームワークの中で活かそうとします。メンバーは個人主義ではなく、組織の中でコミュニティを形成し、それをビジネスの創造力に昇華しています。コミュニティの性質は、メンバーシップ1.0型組織の同質的なものとは異なり、オープンで個性や多様性が尊重される自由なコミュニティです。

■メンバーシップ2.0型組織への進化のポイント

メンバーシップ1.0型組織からメンバーシップ2.0型組織へ進化していくためにはどうすればよいのでしょうか。
メンバーシップ2.0型組織に進化するためには、次のようなポイントにおいて組織・人の成長・進化が必要です。

〔メンバーシップ2.0型組織への進化のポイント〕

図メンバーシップ2.0型組織への進化のポイント

まず重要なことは、一人ひとりのメンバーが、自分の“ありのままの個性”を思う存分に発揮するような働き方、生き方にシフトすることです。メンバーシップ1.0型組織の強い同調圧力の中では、“仮面”をつけ、自分らしさを隠して働いている人も多いと思いますが、“自分らしさ”の解放が、メンバーシップ2.0型組織への扉を開きます。

組織進化の観点からは、重厚な階層主義や序列意識を弱め、ミニマムな階層構造・フラットな関係性へとシフトしていくことが必要です。そして、“自分らしさ”を解放することで出現する“多様な個性”を互いに尊重しあうこと、また個性の違い(ダイバシティ)を新しい価値を創造するための源泉として活用することが大切です。
また、これまでの同質性が高い組織文化を前提に、空気を読むなど、曖昧さを大切にしていたコミュニケーション・スタイル(ハイコンテクスト)を、ある程度、曖昧さを弱め、明確に言語で表現していくスタイル(ローコンテクスト)に近づけていくことも必要でしょう。

■ジョブ型組織の優れたところは取り入れよう

メンバーシップ2.0型組織は、ジョブ型組織と必ずしも対立する組織モデルではないということも重要です。
メンバーシップ2.0型組織とジョブ型組織では、組織として大切にする価値観は異なるのですが、組織能力という観点からは、メンバーシップ2.0型組織は、ジョブ型組織の優れた組織能力を取り入れています。例えば、専門性の追求、論理的で合理的な思考スタイル、分業による効率性など、ジョブ型組織の優れた組織能力は、メンバーシップ2.0型組織でも、必要に応じて使う場面があるでしょう。
つまり私たちは、ベースとしては日本人の長所を活かしてメンバーシップ2.0型組織を目指しながらも、ジョブ型組織の良い点は排斥することなく、必要に応じてジョブ型組織の優れた組織性能を、メンバーシップ2.0型組織の中に統合していくことができるのです。

■より良い社会を創造していくために

これまで述べてきたように、メンバーシップ2.0型組織は、日本という国ならではの強みを活かした組織モデルです。つまり、メンバーシップ2.0型組織への挑戦は、日本人にとって優位性がある挑戦テーマといえるのです。
同時に、私達が直面している根深い問題、すなわちメンバーシップ1.0型組織の持つ負の影響力は依然としてこの国に深く根を張っており、それはビジネス、教育、政治、共同体など、社会のあらゆるところに暗い影を落としているように見えます。
このような状況の中で、メンバーシップ2.0型組織づくりへ向けて挑戦していくことは、「日本社会をより良いものにしていくこと」への挑戦でもあります。メンバーシップ2.0型組織はビジネスにおいてメリットがあることはもちろんですが、同時に、これまでの日本社会の旧態依然とした負の遺産を問い直し、より自由で創造的な新しい文化・コミュニティをみずから創り出し、社会をより良いものにして、後世につないでいくという意味を持っているのです。

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