”小さな声を届けたい” 家入一真氏が語る困難の乗り越え方(後編)
クラウドファンディングのサービスを運営する株式会社CAMPFIREの家入一真社長。中学生でいじめを受け、引きこもりになった時、唯一社会との接点だったインターネットをきっかけにさまざまな事業を立ち上げました。
家入:次のヒーローはカオスの中からしか生まれないと常に思っていてー
そして今、インターネットを起点にチャレンジをする若者を支援するため、家入氏は新たな居場所創りを開始。その名も「やさしいかくめいラボ」。
家入:何か小さな一歩を踏み出そうとするときに、仲間がいたり先輩がいたり、全然違うジャンルだったけど、掛算して「こういうことやったら面白いんじゃないか」って新しいアイディアが生まれたり。そうやって小さな一歩を踏み出せる、それがきっと僕は“革命”っていうことだと思っていて・・・
後編では、家入氏がどのように困難を乗り越えてきたのか。そして今後、新たに挑戦し続けていきたいものとは? 根ほり葉ほり聞きます。
【自分にとっての誠実さ】
家入:やっぱり僕、こういう活動をしていると、僕のこういう発言が好きなんですとか、こういう本読んで会いに来ましたとか、すごくうれしいんだけど・・・だから家入さんについていきます!みたいな感じで結構来てくれる子たちもいるんですよね。で・・・そういう子たちに僕は、すごく嬉しいんだけど、依存しないでくれ~みたいな感じで拒否してしまうところがあって・・・。
それは例えば、ある時は僕にすごく心酔したとしても、でも僕が彼ら彼女らの、望まない行動とか発言をしてしまった瞬間に「やっぱり家入は違った」って一気にアンチになって、また違う誰かのところに依存していく行動を過去に見てきたこともあって、じゃあ最初から依存させない方が、少なくても僕にとっての誠実さかなって思って、いやいやそうやって、うれしいけど、僕はそういう態度で来る子とは一緒に働けないって拒絶していたんですよ。
そしたらある時、これは湯浅さんって社会活動家の方と話しているときに、同じような話をしたら、「いや、家入君、そうやって家入君が拒絶してしまうと、彼ら彼女らは今、現時点で家入君しかすがる人がいなかったのかもしれないよね」と・・・。「それなのに、家入君がそういうのは無理ですっていう風に拒絶したら彼らどうする?」「もう行き場所なくなっちゃうよ」と。「居場所作りたいって言っている家入君がそこを拒絶したらだめなんじゃないの?」って。確かにと…でも答えが出ない、僕どうしたらよかったんですかね?って言ったら、湯浅さんが言っていたのは「依存してくる力をうまいこと、いったん受け止めつつ、彼らに返してあげることなんだよ」と。
【居場所だけでなく役割を】
家入:僕、この前(光明寺の)松本紹圭さんっていうお坊さんと対談した時に、松本さんがおっしゃっていたのは、居場所っていうのは居場所だけだと、結局その中でうまく動ける人と、動けない人、発言できる人、できない人・・・結局、居場所っていう中で集まった人たちだけど、そこでもヒエラルキーが出来ていってしまって、居場所のなさを感じて出て行ってしまう子たちがいる。
お坊さんの松本さんが何をやっているかっていうと、毎朝の掃除っていうのをみんなでやっていると。掃除っていうのが大事だということ言っていて、それはどういうことかというと、掃除って役割が・・・すべての人に役割が発生すると・・・。
柿:うんうん、誰でもできるというか…
家入:できないってことは基本的にない。やっていく中で、でも、こういうところもうちょっとこうしたら上手く拭けるかも?とか、上昇していく余地もありつつ、すべての人にとりあえず出来ることとして役割が提供できることが大事なんだと。要は、居場所だけではダメで役割が大事なんだと。それを提供するためには、まずは誰でもできる簡単な掃除とかから始まることが大事なんだってことをおっしゃっていて。なるほどねって。
柿:めっちゃいい話ですね・・・。
家:そうそう、話を戻すと、そうやって僕に対して依存してくる子がもしいるとすれば、その気持ち、熱量みたいなものは確かにあるので、それを一旦受け止めつつ、じゃあ彼らに今できること、彼女たちにできることを今、役割としてなにか僕の方から設定してあげていけば、あとは自ずとして自分で色んなものを動き始めるのではないかなって解釈したんですよね。
柿:は~そうしよう!
家:うん。
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【家入流“困難”の乗り越え方】
柿:毎回、どうやって困難を乗り越えてきたのか?家入さん、まぁ困難だらけじゃないですか?
家:困難だらけなのかなぁ。
柿:僕がずっと見ている限り。困難そうだな・・・っていう瞬間が多々あったので。
家:あぁ~。
柿:そういう時、自分をとことん落ち込むようにするのか。どんな風に対処してきたか・・・。
家:う~ん、でもやっぱりねぇ。僕は結局逃げ続けてきたんだろうなぁって感じはします。自分の人生を総じて思い返すと、逃げ続けた人生だったなって思うというか・・・。
学校から逃げ、家庭から逃げ、会社に就職・・・一番最初起業する前ちょっとだけ就職したんですけど、そこでもなじめなくて、結局、途中から出社拒否みたいな感じで逃げ、ずっと逃げ続けて今、ここにいるという感覚がすごくあって・・・でもそんな自分だから言えるメッセージもあるんじゃないかなっていう風に思っていて、そんな自分だから作れる場所もあるんじゃないかなって・・・
例えば、僕はいじめをきっかけにして学校いけなくなっちゃいましたけど、その、いじめっていうある意味ライオンみたいな理不尽な突然現れた肉食動物みたいなものに対して、その、僕ら“うさぎ”みたいなもんなので、やっぱり僕らは逃げるじゃないですか・・・逃げて逃げて、逃げて逃げて。でもいつまでも逃げ続けるわけにはいかないけど。逃げたところで次はどう態勢整えて、どっちの方向にいこうかって考えるのはすごく大事だと思っていて、でも、やっぱり往々にして社会の仕組みだったり、大人たちはウサギに対して、もっとライオンと戦えと強制するし、押し付ける。
動物ですら長い耳で防衛本能を発揮して命を守り、逃げるのに、人間はなんか理不尽な大きな化け物みたいなものと戦うことをすごく強要される世界。これはなんか、それによって、生きづらさを抱える人たちも沢山いるだろうし。逃げることすら許されずに立ち向かい続けた結果、ある時、心がポキンと折れてしまうことだったりあるだろうし、そういった人を少しでも減らしたいなっていうのがすごくあって・・・
だから、過去にいろいろな困難はあったのかもしれないですけど、その時、その時でそれがあったからじゃあ自分は次につなげて活動できることを割と考えている間は、なんか困難が困難にならないっていうか・・・。失敗も失敗じゃなくなるというか・・・。なぜかっていうと、それがあったから、今こういう活動できているので。それがなかったら、多分僕わかんないけど。普通に就職して普通に企業で働いてような気もするし・・・いや、わかんない(笑)
柿:ははは・・・(笑)
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【若者に伝えたいこと】
柿:全部のメッセージがそうなんですけど、若者にあえて伝えたいことっていうと?
家:ん~そうだね…なんだろうなぁ。
柿:一つは「逃げてもいい」ってこともあるでしょうし。
家:そうですね。とにかく居場所って・・・僕、居場所、居場所、居場所ってよく言うけど、逆に居場所がないとダメとか、居場所を見つけなきゃみたいな強迫観念になってしまうと申し訳ないんだけど、「世界は広い」ってことですよ。僕が言いたいのは・・・
要は、僕はリバ邸っていう場所を創っています、やさしいかくめいラボっていう場所も作っています。でも世の中にはもっといろいろな場所が存在します。それこそ柿次郎もいろいろな場所を創っているし。それはもしかしたらNPOかもしれないけど。いろんな居場所があって色んな活動をしてる人たちがいて・・・だから今いる場所が本当にフィットしないとか、つらいな・・・って思うんだったら、僕はどんどん渡り鳥のように飛び出して、どんどんいろいろな場所を見たらいいと思うんですよ。
ここしかない、これしかできないって思いこんじゃうことで、自分の可能性を自分で狭めてしまって、生きづらさを抱えてしまうことって往々にあると思っていて。今いるところで戦わなければいけないっていうのは全然思い込まないでほしいなぁ・・・というところで。
僕なんか誰しも人生、一冊の本になることくらいの出来事とか、つらいこと、コンプレックスとかってあると思うんですよ。誰しもどんな人でも。例えば自分はこういう家庭環境で生まれてきて、こういうことがありました、こういうことがつらいです、劣等感を感じています。そんな自分が次の1ページどう描くかってことを考えながら僕は今まで活動してきてつもりで、いきなり白馬の王子様がやってきていきなり明日から宝くじあたって、全部逆転満塁ホームランってことってないんですよ・・・人生って。本当に1ページ1ページ、僕がこういう人生を送ってきた中で感じたこととか、じゃあ自分にできることってなんだろう?じゃあ次のページ書こう、次のページ書いたら世界がどんどん広がってきて、じゃあ次にこういう活動しようって。それのずっとページの積み重ねで今ここにいると思っていて・・・
これを見た後に、自分の次の人生の1ページどう書こうかなって、それが起業!とか、NPO立ち上げる!とか、大きなことじゃなくていいと思うんですよ。それこそお寺の掃除に参加してみるとかでいいんですよ。そういうところから始まることって、いっぱいあるんだろうなってすごく思います。
柿:そうですねぇ・・・例えば新聞配達って僕もやっていたんですけど、あれって、人と会わなくて仕事を全うできて感謝もされる・・・僕、それが自分のすごい原体験というか。社会との接点が新聞配達だったので。
家:なんかね、自信をなくしてしまっている状況って、要は社会との結び目がほどけてしまっている状況なので、いきなりそれで強い結び目を作ろうとしたって難しい訳ですよ。小さい結び目をどう作っていくかって、それって、本当に小さな「ありがとう」って言ってもらえる事だったり、「やってもらってよかったよ~」とか。小さな成功体験とか、小さな感謝がきっとそういった状況にある人に必要なんだと僕は思うんですよね
柿:うんうん。世の中にある仕事って山ほどあって、ちっちゃい仕事に毎日ちゃんと時間を使って、「ありがとう」って言ってもらって、お金もらったり・・・そういう体験を積み重なっていくと、さっきの言葉を借りると、次のページを作りやすいというか・・・
家:そうですね。「僕はこういう人生でこう、這い上がってきた」みたいな話を成功者が語るわけじゃないですか。でもそれって、再現性ないですからね、まったく・・・だから「こうしたほうが良いよ」っていうのを僕は言いたくないし。でも、少なくとも今いる場所で同僚だったり、親だったり、兄弟だったり、子どもだったり・・・なんでもいいんですけど、喜ばれることを小さくてもいいからやってみるみたいなことって、きっとできることだと思うし、そこから生まれるものってきっとあると思っていて。だから何かそうですね・・・僕は起業によって救われたからこう、人を集めてイベントやったりしてますけど。起業だけが最高だということを全然言いたくないし、本当に就職して会社の中で日々、自分のやるべきことをやっている人たちは僕は美しいなって思いますし。そういった人たちは本当に尊い。
柿:そうですね。いろんなやり方があると。
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【人生を変えた本】
柿:家入さんの人生を変えた本はありますかね?
家:持ってきました。
柿:お!?
家:人生を変えた・・・かどうかはわからないですけど、村上龍の「希望の国のエクソダス」。さんざんツイッターとかでも「やさしいかくめいラボ」でもみんなまず、これは読めっていっているので。
柿:どういう本ですか?
家:20年くらい前に書かれていて、衝撃が走って、定期的に読み直す。これもまさに、最近読み直したから鞄に入ってたんですけど。
これはどういう話かというと、中学生がある意味突然、日本中で同時多発的に不登校に・・・学校に行かなくなるんですよ。彼らはネットを駆使して、色んな支部を作って連絡を取り合いながら、自分たちでビジネスを作り出したりとかして、最終的にこの希望のない国で自分たちの学校にいる意味もないし、自分たちの独立国家を作ろうと・・・。最終的に北海道にみんなで移住しようとするみたいな話。エクソダスって「脱出」って意味なんですけど。希望の国の・・・で、20年前に書かれたと思えないくらい、まずインターネットって、もちろん20年前にもあるんだけど、そこまで中学生が使いこなすって、想像できた人って少なかったと思うし。フェイスブックみたいなものも描いているわけですよ。学生同士かネットで繋がりあってコミュニケーションして・・・。他にも経済の話とか、原発の話とか、いろいろなものが出てくるんだけど、もう預言書みたいなものだと僕は思っていて。今だに僕は会社のミッションとか、「やさしいかくめいラボ」もそうですけど、いろんな活動を創るときに僕はまずポエムを書くんですね。なぜこれをやる必要があるのかポエムを書くんですけど、その中で毎回引用するのがこの中(本)に出てくるセリフで、主人公というか、中学生の代表とされる男の子があるとき、国会答弁をするんですけど、その時に冒頭にいう言葉が「この国には何でもある。豊かになった。だけど希望だけがない」っていうんですね。
それが何か、今の日本をすごく象徴している言葉だなって思っていて、高度経済成長で国も豊かになろうとし、会社も豊かになり、家族も、個人も豊かになり、ある意味、経済が大きくなってお金的に豊かになることが唯一の幸せだとされた時代の中で、ある意味追い求めるものがあるって人間楽ですよね?この山を登らなきゃいけないって「みんなで登ろう!」それが結果みんな幸せになることだからって中で追い求めた時代があって、その中で確かに日本という国は豊かさが実現したと。まぁ物もあふれているし、貧困問題とかもあるけど、基本的には食とか、住むところとか、みんな不自由なく生きられるくらいの豊かさを実現したけど、それ以降の希望が描けてないっていうのが、この本で言っていることなんですよね。
柿:面白そう・・・
家:だから、まあでも今の若い子たちって本当にお金とかじゃなく、やりがいとか社会性みたいなものにすごく興味関心もつ若い子多いじゃないですか・・・。それってどういう事かというと、やっぱりお金とか豊かさみたいなものだけがある意味幸せの基準だったところから外れてきているんだと思うんですよ。何が幸せか分かんなくなってきている。だから何かそういったことも含めて、すごく描かれた一冊なんで是非読んでくださーい。
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【最近 気になったニュース】
柿:気になったニュースってありますか?最近。
家:最近?・・・あー、僕は…そうだなー、前澤さんの1億円・・・?
柿:そうっすね、100万円を?
家:100人に配ります・・・
柿:あのお年玉のやつですよね。
家:うん、あれは今でも僕すーごい・・・今でも印象に残ってるというか、ちゃんと言語化できていないんだけど・・・
「嫌だな」って思ったんですよね、僕は・・・。持続可能かどうかっていうことはすごく考えるんですよ。今自分がやろうとしていることが持続するのかしないのか。僕が例えばお金がすごくあって、みんなにお渡しして、それでじゃあこの活動頑張りなよって言って渡すのは全然良いんだけど、それって僕のお金が尽きたら終わっちゃうじゃないですか。それって持続可能な仕組みじゃないですよね。クラウドファンディングってあくまでこういうことやりたいっていう個人だったり小さな中小企業だったり、活動体、クリエイター、アーティストといった方々がいて、そこに共感する同じような個人の方々がお互いにお金を応援したり、仲間になったりっていう仕組みで、他対他でいろんなものを生み出していく。それによって新しい・・・従来の中央集権的な金融ではなく、自律分散型の新しい金融の形つくろうっていうのが一応思想なんですよね・・・
「リバ邸」もそうだし「やさしいかくめいラボ」もそうで、やっぱり僕が「何かもう飽きたやめた」って終わってしまう仕組みっていうのはやっぱり弱いですよね?それと同じように、お金をある程度持った方が、うーん・・・ただ一方的にお金を配るっていう仕組みっていうのは、「祭」っていう考え方でいうと別にそれにとやかく言うことではないんですけど、ちょっとこう継続しないよねと。それで一時的にみんな期待してしまったり絶望してしまったり、まあもらって「嬉しい」ってなっても、100万円なんてあっという間に使ってしまうので・・・そういった中で、あれが本当に持続する仕組みなのかっていう観点から考えた時にちょっと・・・
柿:まだ他にやり方とか、まあそれも家入さんの今後の活動を通して何かこう・・・言語化できればいいなっていう感じ・・・
家:そうですね。
【エンディング ・・・消えた?】
柿:あれ!?・・・家入さんちょっと! 消えてる!? ナニコレ?
家:今、どうなってます?
柿:えーっと・・・イイ感じっす、ははははは(笑) とにかく消えてます。
魔法のマントみたいでめっちゃイイ。
家:もう飽きました・・・
柿:なかなか家入さんの今回みたいな話が映像でまとまったものって・・・ないような気がしますね。ないっすよね?
家:確かに、そーなんすよ。
柿:こういう話を求められないんですか?
家:なんだろう、あんま映像にそもそも出ないというか、誘われない・・・
柿:誘われない!?じゃあ今回貴重な機会になったんじゃないかなぁと・・・よかったです。
家:なので、これからはこれをいろんな人に送り付けていこうかな!
柿:これはYouTubeで(Facebookでも)前編・後編に分かれてアップするので。なんかあったらそれをとりあえず送っておけば・・・。
家:そうですね。
柿:まだまだ話しきれないところもね、あったんですけども。また定期的に家入さんに来ていただきましょう!
家:あっ、もう準レギュラーで。
柿:準レギュラー(笑) そーっすね!めちゃめちゃやりやすいんで。
じゃあ、今日は家入さんありがとうございました!!!
家:ありがとうございました。
柿&家:Dooo!!!
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