不思議な夢

以前に見た不思議な夢をまとめてみました。
まるで物語のような、小説のようなものが多いですが、どれも本当に見た夢です。
不思議な夢を見るようになってから、幻想的な小説を読むと、本当にそういう夢をみたのではないかと思うようになりました。特に夏目漱石の「夢十夜」は、本当に見た夢なのではないかと思っています。

夢1 温泉宿おんせんやど

温泉宿に友人数人と一緒に来ている。木造もくぞうの宿はたいへん大きく入り組んでいる。温泉に行くには、その宿を出て、道路を渡っていかなければならない。
温泉に入って宿に帰り、皆で部屋へ戻ろうとするが、迷路のような宿で、皆とはぐれてしまう。行けども行けども誰もいないし、迷まようばかり。
細い木造の階段を上っていると、窓の外に清楚せいそな長い黒髪くろかみの女の人が立っているのが見えた。一瞬いっしゅん通り過ぎそうになるが、そんなところに人がいるはずがないともう一度見ると、こちら側の壁と向こうの出窓に向けて1本の細い板が繋つないであって、その上に立っている。高さは非常に高い。いけないと思って近づこうとするが、飛び降りてしまう。
あわてて人を探してまわるが、なかなか見つからない。やっとのことで、昔風むかしふうに着物を着て野菜をたらいで洗っている人達をみつけて、女の人が飛び降りたと言うと、最初は驚おどろいて聞いていたが、僕が道路を渡って温泉に行った帰りだと言うと、途端とたんに皆の表情が曇くもり、つっけんどんな感じに変わる。どうも道路向こうの温泉に入る客は安い部屋の客で、そんな客の言うことは信用できないと思っているようだと感じる。つっけんどんに「どこに落ちたのさ」と聞くので、「裏手うらてだと思う」と言い、宿の裏手に黒髪の女性が倒れているさまを思い浮かべると、彼女が僕の手を伝って上へ這い上がってくる様に感じる。腕を見ると、肩より少し下のところに女性の顔がある。目を閉じていて清楚な感じで恐ろしい顔ではないが、その顔が徐々に上の方へあがって来ているのが分かる。ついに僕の頭のところに来て、僕の顔が彼女の顔になる。いよいよ閉じていた瞼まぶたが開きそうだ。ああ、このまま乗っ取られてしまうのかと思ったところで目が覚めた。恐ろしかった。 
(2017.3月の夢、2017.10.30.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢2 祖父そふの言葉

山小屋に1人で来ている。夢の中で僕は女性なのですが、その事に違和感はない。外は嵐が吹き荒れ、雷が窓の前で何度も光り、凄い音を立てて落ちる。何か悪魔の仕業の様に感じ、また幽霊の様な影が、部屋の中を縦横じゅうおうに通り過ぎて行くのを目にし、恐ろしさのあまり、目を閉じ、耳を手で塞ふさいでじっと蹲うずくまる。
気がつくと嵐は去り、朝日が差している。立ち上がり、外を見ると木の電柱が並び、その電線に不気味な人形が、ほぼ等間隔とうかんかくにずっと先までぶら下がっている。一瞬ギョッとするが、祖父が昔言った「どんな恐ろしい事も、決して悪魔の仕業などではない。人がやった事だ。だから恐れることはない。人が対処すればいい事だ。」という言葉を祖父の顔とともに思い起こす。(僕の本当の祖父はその様なことを言ったことはなく、夢の中の女性である僕の祖父の言葉として回想される。思い起こされる顔も僕の祖父のものではない。)
立ち上がり、外に出て、長い棒で電線の人形を１つづつ外して行く。(感電する危険があるように、目が覚めて直ぐ感じるが、夢の中では平気である)だいぶ行ったところで、腰の曲がった老婆ろうばに出会う。一瞬いっしゅん恐れる気持ちが蘇よみがえりかけるが、心を落ち着けて近づくと「あんたどっから来たんだい？ちょっと運ばなきゃならないものがあるんだけど、手伝ってくれないかい？」と言うので、「はい」と言って、おばあさんの後ろをついて行くところで目が覚めた。
(日付不明、2017.11.2.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢3 異国いこくの星

僕は異国の星に住んでいる。何故なぜこの星に来る事になったのか、よく覚えてはいない。昔からの知り合いは一人もいない。この国に来てから世話になった人の紹介で、結婚する事になった。相手は年端としはも行かない少女だ。
インドかどこかの少女のように見える。こんな小さな子と結婚してどうするんだ？とも思うが、世話になっている人達の勧めだし、ここで暮らしていくためには仕方がない。彼女も断れない事情があるんだろう。
大きな湖があって、その中の浮島うきしまで結婚式が行われるらしい。沢山の人がいる。何でも荘厳そうごんな婚約の儀式ぎしきが行われるらしい。少女のきらびやかな衣装いしょうからも、それがうかがわれる。流れに任せるしかない。婚約の儀式が無事終わったら、この子と何とか仲良く暮らしていけばそれでいいだろう。そんな事を考えていると、少女の姿が見えないと騒さわぎが起きる。さっきまで直ぐ近くにいた少女の姿が見えない。皆、大騒ぎで探している。なかなか見つからない。僕は、このまま見つからずに、婚約が解消になってくれたらいいなと思う。子供のした事だ。いくら何でも罪に問われたりはしまい。しかし程なく少女は見つかって、僕の隣となりに連れて来られる。すると彼女は僕の方をまっすぐ見て「私、この人嫌い。」と言った。僕はほっとして少女の頭をなでて「君がそう言ってくれて良かった。嫌なら辞やめよう。嫌な結婚なんてする事はない。」と言った。周りがなんと言うかと心配したが、思ったほど騒ぎにもならずに、その場は治まった。
あれから2年がたった。婚約が解消した事は良かった。ただあれからずっと気になっている事がある。「私、この人嫌い。」と言った後、小さな声で口ごもりながら、少女は何かを言ったが、聞き取れなかった。何を言ったんだろう？気になる。何度か夢に見る。「私、この人嫌い。」そしてうつむき気味にボソッと、何か言う。だって、と唇くちびるが動いたようにも思える。だって何なんだ？一所懸命いっしょけんめい聞き取ろう、口の動きを読み取ろうとするけれど、分からない。
そんなある日、偶然、街まちで少女に会った。手を上げて「よう！」と言うと、彼女は押し黙ったまま訝いぶかしげにこちらを見て目を伏ふせた。やっぱり自分から嫌いと言って婚約を解消したのが気まずいんだなと思って、そのまま通り過ぎた。でも後から考えると、少女の訝しげな目はそれだけではない、何かを現しているように思えてならない。何だ？何があるんだ？あの時、結婚式で、彼女はなんと言ったんだ？
その晩、夢の中で、今日会った2年分成長した少女が、結婚式で僕に向かって言った。「私、この人嫌い。だって死相しそうが出てるもの。」驚いて目を覚ます。死相だって？あんな少女が口にするような言葉じゃない。あの荘厳な婚約の儀式。彼女は何か、そういった特別な事が分かる家系の出なのか？あの時、皆黙って何も言わなかった。皆には聞こえていたのか？彼女が言った事が。死相だって？あれからもう2年もたつじゃないか？俺の命はあとどれくらいなんだ？まさかあと数ヶ月とか？だとしたら、やはり婚約解消して良かったんだ。結婚していたら、あんな歳で、彼女は2年ちょっとで寡婦かふになっていたんだから。で、俺はあとどれくらい生きられるんだ？と、ここまで考えたところで気を失った。
目を覚ますと、病院の個室のような部屋のベッドに寝ている。周りに何人か人が座っているが、ほとんど見覚えはない。一人だけ、長くケニアに暮らしていた友人のTがいるのが目に入る。何だ、誰もいないと思ってたけど、お前は来てたのか。やっぱり外国の方がお前はあってるのか？嬉しくなって彼の方を向くと、Tはうつむき気味に「※っちゃんさ、」と言う。俺は慌てて「やめろ、聞きたくない。俺の命はあと数ヶ月なんだ。そんな事は分かってる。俺はそれまで精一杯せいいっぱい楽しみたいんだ。そんな事はいいから、何か楽しい話をしよう。」いつもみたいに、太鼓やリズムの話、トニー ・ウイリアムスの話なんかをしてくれ！Tは「そうか。」と言うと、いつもみたいに話はじめた。楽しい話だ。僕も相槌あいづちを打ちながら答えて、楽しいひと時。なのにどうした事だろう？何を話したのか、ちっとも頭に入って来ない。自分の命が短いと分かったショックで何も頭に入らないのか？違う！体調が悪すぎるんだ。聞いたそばから、何を聞いたのか分からなくなる。俺はそんなに悪いのか？あと数ヶ月どこじゃない。数日の命とかなのか？「※っちゃん、そろそろ行くよ。」Tがおもむろに言った。「うん」「またな」「うん」。Tが出て行くと、他の人達も皆出て行って、病室に一人になった。
具合が悪い。気を失いそうだ。今、気を失ってもちゃんと目覚める事が出来るのかな？朦朧もうろうとしながら、そんな事を考えていると、突然ドアが開いてYH(お笑いタレント)が入って来た。僕の方を真っ直ぐに見て「あんた死ぬの？」と言う。「うん。あと数ヶ月なんだ。」「医者がそう言ったの?」「うん、そうみたいだ。」「医者が死ぬって言ったら死ぬの？ 私は信じない。」病気で亡くなった叔母おばに、俺が言った言葉みたいだ。叔母は死んだ。良くなったように見えたのは一時いっときの事だった。「とにかく行くよ。」えっ？「あんたの部屋へ行くよ。」俺の部屋？ 俺の部屋？ 俺の部屋ってどこだっけ？ 俺はどこに住んでるんだ？ 思い出せない。YHは僕をベッドから起こし、手を引いて連れて行こうとする。僕がふらつくと、しようがないなという風に僕の事を支えながら、2人で外へ出た。その後どこをどう歩いたのか分からない。気がつくとビルの駐車場にある金属のドアの前にいる。このドアの向こうに、俺の部屋があるのだろうか？
YHは「ちょっと待って。電話がかかってきた。」と言って、少し離れてスマホで話し出した。こんな具合の悪い俺をここまで連れて来といて、ほっとくのか！と頭にきたが、なかなか電話は終わりそうもない。何か込み入った話の様だ。金属のドアを開けるのも億劫おっくうだけれど、彼女に話しかけるのも億劫だ。芸能人だし、やっぱり何かと忙いそがしいんだろう。僕は諦あきらめて、何とかドアを開け、中に入った。真っ直ぐ、一本の廊下らうかが続いている。思い出した！ここを真っ直ぐ行った突き当たりに俺の部屋がある！ホテルの部屋だ。俺はホテル暮らしなのか？それは思い出せない。とにかく部屋まで行こうと、ゆっくりと一歩一歩、部屋の方へ向かう。何か下半身が変な感じがする。見るとズボンはびっしよりと濡ぬれ、真っ黒い水のような便がスボンを伝って流れ、廊下を汚している。前を見ると、エレベーターの前に大きな男が立っている。僕の方を振り向いて「あっ、お前、何してるんだ。」と言う。僕は何も言わず、俯うつむいたまま部屋の方角へ向かう。何歩進んだか分からない。部屋はまだまだ先だ。気を失いそうだ。とてもたどり着けそうもない。僕は諦あきらめて、エレベーターの前に戻った。男はまだそこにいた。黙って僕を見下ろしている。「すいません。こんな風に汚してしまって」「・・・」「でも僕もう死ぬんです。」男は黙って頷うなずいた。「それで・・・？」低い声だ。僕は無理に満面の笑みを浮かべて(そしてそれが満面まんめんの笑えみだと映うつっている事を願いながら)「どうか皆に伝えて下さい。あいつは死ぬ時も、笑顔で死んでいったよって」そう言って気を失った所で目が覚めた。
(2016.2月の夢、2017.11.7.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢4 ダンスクラス

N先生のダンスクラスに行くと、皆、てんでバラバラに変わったふざけた様なダンスを踊っている。N先生が僕を見て「ひらひらも適当に何か踊って、これはそういうものだから」と言う。見るとドラマーは誰もいない。太鼓もない。N先生は「これは太鼓は入らない。そういうものだから」と。しかしよく見ると、バスドラに本皮を張った様な変わった太鼓が1つだけ落ちている。「ひらひら、やりにくかったら、その太鼓を抱えて叩いてもいいよ。ただ、これは太鼓が入らないものだから、ちゃんと叩かずに、ビョンって感じで」とN先生。ビョン？「あとダンスも忘れずに」。僕が恐る恐る太鼓を抱えて、撫なでる様に叩くと「そうそう、そんな感じ、踊りも忘れずに。じゃあみんな行くよ」と言って、皆で教室の中を踊りながら進む。窓際(いつもは窓などないが)まで来ると、窓1つに1つ顔が穴から覗いている。顔以外の部分は覆おおわれていて見えない。皆いつものドラマー達だろうか？と思ってよく顔を見るが、皆変な風に顔を歪めたり、メイクをしているので、よく分からない。ダンサー達はそれぞれ踊りながら、にこやかに顔に話しかけたりしている。顔を出している側も、変な顔のまま、何か答えている。実に楽しそう。「いい感じ、これはこういうものだから」とN先生。僕はどうしていいか分からず、左端の顔をじっと見つめてしまう。誰なのかわからない。誰だ？もしかしてKマンなのか？と、さらにじっと見つめると、窓が左端にスライドして、カーテンの陰に隠れてしまう。「ひらひら、そんな風に黙って見つめちゃダメ。これはそういうものじゃないから」とN先生にたしなめられたところで目が覚めた。(2016年6月の夢、2017.11.14.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢5 夢の進展

よく見る夢で、外国の学校に入学するんだけど、迷ってしまい、最初のクラスにたどり着けない。最初からこんな事じゃ、もうダメだと思うところで目がさめるというのがあるんだけど、この間はじめて、クラスにたどり着く夢を見た。そして数日後には、クラスを受けて「なるほど為になるな」と思うという夢を見た。なんなんだろうこの進展は。
(2016年の夢2017.12.31.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢6 精霊

夢の中で僕はある信仰の敬虔けいけんな信徒しんとで、大昔に地中深くに埋められたという精霊せいれいを探して、仲間と共に荒野をさまよっているのでした。
そしてついにここではないかという場所にたどり着き、皆で掘り起こすと、出てきたのは巨大なイカの化け物のようなものでした。なんだこれは！精霊なんかじゃない、イカの化け物じゃないか！という事になり、皆動揺どうようするが、僕らの後を追って多くの信者がやって来る。イカさん足を隠してと、無理矢理に白い細長い精霊であるかに見せようとする。イカの目はキョロキョロと皆を見ている。これが探し求めていた精霊である！と1人が言うと、皆ひれ伏して拝み、去って行ったが、何人かが訝いぶかしげに目配めくばせをしている。「あいつら気がついたんじゃないか！」「足を見たのかな？！」「どうする...」「やっちまおう！」と1人が言う。イカは「食っちまうか？」と。僕は「ちょっと待て、物騒ぶっそうなことを言うな！俺が話して来るから」と言って信者達の方に向かうが、いい案は浮かばない。どうしようかと思いながら歩いていると、はじまりの仲間と荒野をさまよう場面に突然戻る。皆真剣な面持ちで精霊を探している。まて、それは精霊なんかじゃない！イカの化け物だ！さっき見たじゃないか！と思うが声にならない。そしてまた掘り起こす。あー、イカの化け物だ！でさっきの繰り返し。また皆をいさめて去るが、やはりいい案はない。思案しながら歩くと、また始まりの場面に！これを4回繰り返し、あまりの事に苦しくて目を覚ましました。

他の夢では、苦しくて目がさめるようなことはありませんでした。ただ目が覚めてから、恐ろしいかったと冷静に思っただけでした。この夢は覚めてみると滑稽こっけいに思えますが、夢の中では真剣そのもの、その出口のなさは実に苦しかった。
覚めてみると、その内容は信仰をおちょくっているようにも思える程のものなのに、夢のはじめでは、自分が敬虔な信徒である事を全く疑わず、違和感を感じていないというのが、なんとも不思議なところです。
(2017末、2018.1.2.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢7 俳句

次々と人が死にゆく秋の夢

(2018.12.2.instagram(philosophysflattail)に投稿)

詩・短歌・俳句 2018｜之哲／Yuki Satoru｜note

夢8 学生寮

開けた場所に頭でっかちの不思議な形のビルが建っている。横から見ただけでも、下の階の3倍以上はあり、とても奇妙だけれど、中に入ってみると、その膨れた部分の部屋はとても開放感があって心地いい。この形状がいいのだと力説されるが、その点はよく分からない。しかし好感を持った事は確かで、K先輩と「良かったねぇ」と話しながら歩いて行くと、先輩の大学に程なく着く。大学のこんな近くに、あんな良いところがあったなんてと驚く。あの変な形状のせいで住みたがる人が少なく、学生も歓迎らしい。そんな事を話しているとKさんが「でもうちの学校の寮もなかなかだよ、見て行ったら？」と言うので見に行くと、確かに変わっていて、コンクリートの打ちっぱなしで、しかもすごく1部屋が広い。そこへ皆で雑魚寝ざこねをしている。最近ここを解体する話があり、学生達に様々な嫌がらせがあるという。そんな話を聞いていると、キングコブラを連れた男が入ってくる。年恰好としかっこうは学生達と大して変わらない。キングコブラは明らかに威嚇いかくのポーズをしていて、今にも襲おそってきそう。学生達は慣れてるのか、無視して寝転んでいる。見かけない奴がいると思ったのか、蛇を連れた男は真っ直ぐ僕の方へ向かってくる。僕が怖くて緊張していると「そんなに緊張してると、噛かまれちゃうよ、リラックスしないと、ほら、こんな近くでも僕はなんともない。あぁ、でもそんなじゃ危ないなぁ」などと言う。そんなこと言われてもリラックスなんて出来ない。なんとかすり抜けて逃げ出したが追ってくる。エレベーターを上がった次の階の部屋でまた捕まり、僕は布団を被り、緊張して硬くなって過ぎ去るのを待つ。リラックスしないと、などと声が聞こえるが無視して待つ。気がつくといつのまにか蛇と男は居ない。ホッとして、もといた部屋に戻ると、学生達は、なんともたわいのない話をしてくる。キングコブラなどはもう慣れっこで、どうでもいい事らしい。僕は彼らがまた戻ってきはしないかと気が気じゃないが、皆の話は止まらない。うまく切り上げられず話に付き合っていると、案の定、キングコブラを連れた男が現れる。僕はまた布団を被って硬くなり、去るのを待ちながら、もし噛まれたら死ぬのかな？ 今はキングコブラに噛まれても助かる方法もあるのかもしれない。だけどハブに噛まれて、毒を吸い出し助かっても、腕は腫れ、何日も痛くて熱が出て大変だと聞いたな、やだなと思ってますます緊張して硬くなっているところで目が覚めた。思わず「疲れたぁ」と声に出してしまった。妙に腹が減って、冷や飯と納豆、豆腐を食べて、また寝た次第です。

(見て程なく2015.12.5.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢9 荒野こうや

荒野の中をさまよっている。こんな暮らしをどれくらい続けているのか分からない。とにかく長い事だ。時々ミミズの化け物のようなものに出くわし、襲おそわれる。そいつは激しく絡からみ合っていて、頭がいくつもある。剣つるぎで応戦するがきりがない。ヘトヘトになると、神社へ行き
一休ひとやすみする。人は自分以外には見当たらない。皆あの化物ばけものに殺されてしまったか、どこか遠くへ逃げてしまったのだろう。そんな事を思い佇たたずんでいると、突然空に被かぶさっていた蓋ふたが開けられ、僕はつまみ上げられた。そして僕のいたところは透明の箱の中に作られた世界で、機械に入って自分の体を小さくしてから、その箱の中で遊ぶのが最近の流行はやりだと急に思い出す。(僕はそんな事ができる、遥はるか先の未来にいる。)普通は安全なように誰かがいるときにやるのだが、妻(実際の妻とは違う人、目が覚めても全く覚えのない人でした。僕自身も別人のようでした)が出張で留守中に、ついうっかり入って、出られなくなっていたのだった。ほんの3日の間の事という。化物ばけものは魚の餌えさに使われるイトミミズの丸い固まりだった。

(見て程なく2019.1.15.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢10 殺人者

とても焦っている。脂汗あぶらあせをかきながら、大きな建物の中をさまよっている。僕は少女を殺したらしい。詳しく覚えてはいない。やむを得ない事情があったという事は覚えているが、どんな事情だったかは思い出せない。もうすぐその少女が現れる。そうすれば、皆の前で彼女の体は溶とけて崩くずれ、殺人が露見ろけんする。その前に友人に会っておきたい。そう思って探している。
カフェテリアへ行くと、何人かの友人がいた。食事をしながら少し話をする。少女が現れそうで落ち着かない。他にも会いたい友人がいる。さよならを言って、そこを出る。
しばらく行くと、駅のホームに友人が集まっている。近づいて行って話かけると、皆温かく迎えてくれた。話に花が咲く。すると階段を見知らぬ黒ずくめの男達が降りてきて、僕の前に立ちはだかる。途端とたんに僕の体は溶け出し、崩れる。「あっ、お前、殺人を犯したんだな！」と男の1人が言う。友人達は悲しそうな目で僕を見ている。「あぁ、皆知っていたんだな」と思う。僕の体はすっかり溶けて、骨だけになった。僕が殺した少女は、僕自身だったのだ。

(見て程なく、2019.5.1.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢11 少女

少女が部屋で怯えている。女の子らしい、かわいい飾り付けのある小さな部屋。少女の姉が、「どうしたの？」と声をかけるが、少女は姉を振り切って逃げ出す。どこをどう逃げたのか、木造の広間に出る。少女はバルコニーへ出て、大声で助けを呼ぶ。
僕は古い帆船はんせんの様な姿の飛行船に乗っていて、そこへ通りかかる。手を差し伸べて、少女を船へと乗せる。大きな霧の塊がやって来て、少女がいた建物ごと飲み込んでいく。飲み込まれると、生き物はみな霧になってしまう。
船は急いでその場から逃げる。あいにく速度は船の方が早く、追いつかれはしないが、こちらの場所を察知できるのか、追ってくる。
だいぶ距離を離すことができ、少しほっとして船から下を見ると、僕の職場の仲間が集まっている。彼らと旅行中なのだという事を、その時思い出す。「どうしたの？遅かったじゃない？」などと言われるが、何か話してはいけないように思い、黙って皆を乗せ、船を出す。少女と皆はすぐに打ち解け、話をしている。良かった。
皆をホテルまで送り届け、それぞれが部屋へ向かうと、霧の気配がする。行けないと思い、少女の手を取って船に乗ろうとすると、1人残っていたKさんが「どうしたんだ？どこへいくんだ？」と言う。僕が不安気に彼を見ると、彼は僕の顔をじっと見て「分かった。あとのことは何とかする。早くしな。」と言うので、礼を言って乗り込む。
船を出すと、霧の塊がすぐそこまで来ている。船の方が早いので、追いつかれはしないが、どこまでも追ってくる。しばらく行くと、男が1人助けを呼んでいる。近づいてみると、霧と組んでさんざん悪さをして来た男だと気付く。今は仲たがいして、追われているのだと言う。複雑な心境だが、見捨てるわけにもいかず、彼を乗せて船を出す。
どれだけ逃げただろう、大きなビルの屋上際に船は泊まり、動かなくなってしまう。何か最初からここを目指して来た様に思えてならない。屋上へ降りると、人が1人やっと乗れるくらいの丸い小さな台がある。その台に乗ると、霧に呑まれても消えることのない、大きな体になれるという事を俄にわかに思い出す。台に乗ろうと前に出ると、先程船に乗せた男が先に乗ってしまう。男はビルと同じくらいの巨人のなり、ビルの横に立つ。すると霧がやってくる。男は霧に向かって、大きな棒状のもので殴りかかるが、あっという間に霧に呑まれて消えてしまう。この台に乗って、霧に呑まれても大丈夫な体になれるのは自分だけなのどだと悟り、台に乗る。僕が巨人になると、霧は巨大な鬼へと姿を変える。僕と鬼で五分の組んず解れつの戦いが続く。互いに疲れて、息がきれる。見ると少女はいない。この間に遠くへ逃げてくれればいいと思いながら、意識が遠のく。
気が付くと、僕は最初に少女がいた部屋に座っている。誰かが声をかけてくるが、誰だか分からない。霧の塊が迫っていると感じ、その人を振り切って逃げ出す。どこをどう行ったのか、木造の広間に出る。霧は間近だ、助けを呼ばなければとバルコニーへ向けて走り出した所で目が覚めた。
この夜は、2度途中で目を覚ました。しかし夢は途切れず続いたのでした。

(見て程なく2019.10.25.instagram(philosophysflattail)に投稿)

夢12 老婆ろうば

老婆が煮込にこんでいる。糞くそやら何やら汚きたないいものばかり入れてぐつぐつと。出来上がりは、糞やゲロの様ではないが、何かドロドロとした油粘土あぶらねんどのようで、食べられた代物ではない。それでも皆、老婆に「お食べ」と言われると、逆らえない。僕はたまらなくなって、街を出た。
それから何年経つのか、僕は山小屋で暮らしている。ある日小屋へ帰ると、何と老婆が煮込んでいる。嫌な匂においが漂ただよう。お調子者ちょうしものらしきおじさんが、「いやぁ、これはほんとにうまいんだよなぁ」とか言っている。しかしほんの少し口に入れ、分からないように出して、後は手をつけようともしない。そのお調子者が、婆ばあさんをおだててここまで連れてきたのだという。あまりの事にカッとなり、小屋を出る。怒いかりでしばし震ふるえる。微かすかな音に気が付いて、小屋の方を振り返ると、少女が小屋の前で淡々たんたんと掃き掃除そうじをしている。こんな時によく落ち着いていられるものだと、頭に来て少女を睨にらむと、彼女は前方の斜め上を指差ゆびさした。そちらを見て、真っ暗なのにセミが鳴ないている事に気が付くと、すっと3匹の光るエゾゼミのようなのが、空のかなたに並行して飛んでいく、その方向、山の向こうを見ると、何と富士山が橙色だいだいいろに燃えている！僕は驚おどろいて部屋に駆かけ込こむが、料理のことを思い出して再び駆け出す。でたらめにだいぶ走った。どれだけ行っただろう？息が切れて動けなくなり佇たたずむ。しばらくして、ふと上を見ると、また先程のように3匹のセミが、すっと坂の上の方へ飛んで行く。僕はセミに導かれるように坂を登って行った。そこで目が覚めた。
(見て程なく、2019.12.24.instagram(philosophysflattail)に投稿)

私の書いた文章より、先に触れた夏目漱石の「夢十夜」の方が遥かにすぐれている事は間違いありません。さすがという他ない。しかし「夢十夜」が本当に見た夢を元にしていると、私には思えるという事は変わりません。実際に見た不思議な夢も、優秀な小説家の手にかかれば優れた作品になるだろうと、そんなふうに思います。