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X世代

ゲームをしよう
故郷に帰るように
スイッチ入れたら
あの日と同じ画面
でも
ずっと変わらないのは
画面の向こう
こっち側は
たくさん
降り積もって
あの日には
届かない
本当は
ゲームじゃなくて
マンション経てる前の
あのモータープールに
帰りたい
たくさん並んだ
トラックを
次から次へ
渡り歩いたあの日に
積荷に忍び込んで
鉄やコンクリートで
遊んだり
どこから
流れてきたか
わからない
オイルに浸かってたり
おっちゃん来たら
隠れて
トラック出すまで
息を潜めたり
赤い空が
本当に美しくて
人生で
一番空に近かった
あの頃の
モータープールも
遊んだ友だちも
平和な街の空気も
活気も
戻っては来ない
ゲームだけは
故郷のフリして
スイッチとともに
現れるけど
心が本当に洗われるのは
思い出の中の
トラックの冒険だけだ

故郷をどれだけ
刻んだだろう

ゲームに
掻き消される前に

どれだけ
空は近いと思えただろう

ゲームに
掻き消される前に

時代の大きな
分岐点で

僕らの故郷も
書き換えられて

プラザ合意
バブル経済
バブル崩壊
失われた30年

昭和の終わり
平成の始まり

あの不可逆的な
流れの中で

確かに見えない何かは
変わっていった

純粋な僕らは
言語の外側を
本当はよく知っている

そろそろ
種明かしも
終わる頃

壮大な実験の後に
僕ら世代の
人生をデータ化して

時代の分析でも
始めようか──

未来がきっと
それを望んでいる

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