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「場所」の空気を大切にする

column vol.75

突然ですが私、町中華が大好きです。一時期は、毎週のように町中華巡りをしていたこともあります。もともと昭和の空気感が好きなので、老舗中華店には特に惹かれます。

時にはボロボロの建物もあります。しかし、そういうお店の多くは不思議と居心地が悪くはありません。JR鶴見駅の近くにある「満州園」もそうです。満州園は緒形拳さんを始め、著名人にも愛された老舗中華店。

商業施設の中で経営しているのですが、建物は古く、地下で窓もないので、見た目にはキレイで快適とは言えません。ところが、とても居心地が良いのです。今日はこの居心地の良さの正体についてお話ししたいと思います。

愛情は「場所」の空気に表れる

「見えないところをきれいにすると、見えないとことがひかりだす」。経営の神様といわれた松下幸之助さんの言葉です。

お客さまを大切にする気持ちはなかなか伝わらないものだけど、見えないところを大切にする姿勢は空気として表れるということです。

満州園の店員は、決して愛想が良いとは言えないのですが、何か親しみを感じる方々ばかり。そして、店内をきちんとキレイにしていることが伝わります。

床がベタベタしていない。夜に行っても醤油やラー油などが汚くなっていない。メニューのボリューム感が良い。もっと言えば食材をケチっていないと感じる。などなど、細かいところを見れば見るほど、顧客第一主義を貫いています。

「お客さまを大切にしよう」。そういった想いが細部に宿り店全体の空気をつくっているから居心地が良いのだと感じています。

店もメニューも同じだが…

一方、私の知り合いが勤めていたカフェレストランで、その真逆のことが起きてしまいました。もともとそのお店は、横浜のオシャレなカフェとしてオープンし、一時は芸能人も多く訪れドラマや映画のロケにも利用されるほど、いい感じのお店でした。

しかし、当初のオーナーが他のことに挑戦したいと、他の人に譲渡。新しいオーナーは残念ながら、前オーナーと比べるとこだわりもお店への愛着もありません。何より、お客さまを大切にしようという気持ちが希薄だったと知人は話します。

例えば、「テラス席は外だから、少しぐらい汚くてもバレないから、そこに掃除の時間をかけるな」とか、「仕込みはできるだけ大量に行い、保存しておけ」とか、「忙しい時は、若干料理の量を減らせ(仕込みに時間をかけられないから)」など、自分本位の指示が飛び交っていたそうです。

すると、徐々に客数は減少し社員も離職リクルートをしても、以前ほど応募が来ない。売上が伸びず、人員も確保できないから、さらに手を抜こうとする。その悪循環で新オーナーになって数年で閉店することに。

店も、レシピも変わらないのに、あっという間の結末でした…。確かに、新オーナーになってからお店に行った時、以前のような居心地の良さを感じませんでした。それで知人に確認したら、オーナーが変わったと教えてくれたのです。

本当に心構えって大事だなぁと思った体験でした。ということで、我々を大事にしてくれるお店は、こちらもお店を大事にしたいと思います。そんなことをふと思い出しながら食べた町中華の味は、いつもと変わらない同じように美味しい味でした。

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