見出し画像

さぁ、「個」売業へ

column vol.303

「個売業」という言葉は、小売業協会の生活者委員会、新井良亮委員長のお言葉を拝借させていただきました。

百貨店の雄、三越伊勢丹「個客主義」に転換すると発表しました。

〈WWD JAPAN / 2021年5月14日〉

細谷敏幸社長は就任時(21年2月)から強調していた「マスから個」へのビジネスモデルの転換を改めて強調したのです。

アマゾンがヘアサロンを出店

時を遡ること4月27日。驚きのニュースが舞い込みました。

アマゾンが初のヘアサロンをロンドンに出店

〈GIZMODO / 2021年5月14日〉

まだ計画段階ではありますが、ARのオンラインショッピング・ラボラトリー with 理容室の実店舗をロンドンのショッピング街にオープンさせようとしています。

目玉の1つとされているのが、AR(拡張現実)を活用したヘアカラーをシミュレートする技術。どのヘアカラーを使えば、どのような仕上がりになるのか、ARで確認することができます。

そして、もう1つが「point and learn」と呼ばれる技術。

ディスプレイ棚に映った商品を指差すと、そのディスプレイに商品の紹介ビデオが再生され、購入したい場合は、棚にあるQRコードをスキャンし、アマゾンUKのページで購入することが可能に。重たい思いをせずに帰ることができます。

急拡大と言われているEコマースも、実はリテール全体で言えば15%以下と言われています。

さらに、コロナ後のリベンジ消費を見定め、アマゾンとしてはよりリアル分野に進出したいというのが本音でしょう。

Amazon Goもそうですが、アマゾンが実店舗にも貫いている哲学が徹底的な個客主義です。もっと言えば、この哲学こそがこれからのリテールの主軸

三越伊勢丹の個客主義宣言は必然の流れと言えます。

『2.8次産業』を目指す

同店では優良顧客(年間購入額100万円以上)への売り上げは、それ以外の客向けの売り上げと比較しても堅調に推移しています。

今後はカード会員外商客を含め全ての顧客をデジタルIDで一括管理できる体制を構築。一人ひとりについて購買嗜好悩みごとなどの情報を蓄積し、全ての個客とつながっている状態へ。

その上で、お客さまの困りごと関心事を起点に商品やサービスを提供する、小売業製造業を融合した『2.8次産業』を目指しているそうです。

小売業の本質は本来、店員と個客のパーソンツーパーソンの関係で成り立っていたはずです。

進化というよりも原点(本質)に戻って一人ひとりのお客さまに寄り添っていく。そこにDXを手段として取り入れていくことが、これからのリテールコンセプトになっていくのでしょう。

ちなみに、2031年3月期を最終年度とする中長期戦略では、同期末までに過去最高益(14年3月期の346億円)を超える営業利益500億円を目指すそうです。

三越伊勢丹のこの舵取りは小売業全体で注目されていくでしょう。

個性を活かした「個」売業

個人に売る個売業もあれば、一人の個性を発揮して商品の魅力を発信する個売業もあります。

ビームスが天気予報士の天達武史さんとコラボした企画を展開しています。

〈WWD JAPAN / 2021年5月14日〉

天達武史さんというより「あまたつ」さんと言った方がピンとくる方は多いのではないでしょうか?

ビームスの「おしえてっ!あまたつー!!ビームスの、何℃で何着る?」に注目が集まっています。

こちらは、天気予報をチェックして服装を選ぶという日々のルーティーンに着目し、天候と服装の最適解をスタッフのスタイルサンプルなどを交えて紹介するマンスリーコンテンツです。

私も知らなかったのですが、あまたつさんは服好き・古着好きで有名だったのですね。

サイトでは風速に着目すべき点やそれに伴う体感温度の変化紫外線対策にもなる羽織りものの重要性などについてなど、天気のスペシャリスト×服好きという個性が爆発しています。

考えてみると、昭和の商店街には個性的な店主がたくさんいて、よくその人目当てで行っていたことを思い出します。

一人ひとりの個客に向き合うこと、小売店側(店員側)も個性をもって売り場に立つこと。そんな両側面を感じることができた今回の事例でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?