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「ウェルパ」が導く新企業戦略
column vol.1129
コスパ(コスト・パフォーマンス)、タイパ(タイム・パフォーマンス)という言葉がよく聞かれますが、次は「ウェルパ」が脚光を浴びるかもしれません。
〈AERA.dot / 2023年10月8日〉
「ウェルパ」とは何か?
ウェルパとは「ウェルビーイング・パフォーマンス」。
効率的に合理的に「心身が満たされ、生き生きと健康で過ごせる状態(幸福)」を目指すというわけです。
コスパ、タイパ、ウェルパは、もちろん、それぞれが独立することもありますが、相関し合うこともある。
3つが相関する事例として「コンビニジム」が挙げられます。
ちょっとした隙間時間(タイパ)に、リーズナブルな金額(コスパ)で楽しめる。
効率よく健康(ウェルパ)になれるわけです。
特にウェルパは「時間」と切っても切れない関係にあります。
ウェルパという言葉の生みの親である電通未来事業創研の立木学之さんは、このように言及されています。
人々の関心の先、すなわち投資先は富から時間へシフトしていく
なぜ、投資先が富でなく時間に移るのでしょうか?
投資先は富から「時間」に移る
それは、富は人間が生み出したもので、人間次第で代替可能になるからです。
例えば、高級車やハイブランドは以前は所有することでステータスを手にすることができましたが、シェアサービスが現れたことにより「使用」することは気軽になりました。
ですから、高級車に乗っている人が必ずしもお金持ちではないわけです。
一方、時間は基本的には24時間と決まっており、人間がコントロールできるものではない。
人生という長い時間で見ても、20歳の人にとって20歳の10月20日は一度きり。
来年もう一度というわけにはいきません…
つまり、毎日、毎秒が代替不能と言えます。
以前は「所有価値」は幸せの象徴と一般的には捉えられていましたが、気がつけば「使用価値」に変わり、「富=幸せ」という概念も以前よりかは気薄になっている。
そうなると、いかに「一秒一秒に幸せを重ねるか」ということが重要になります。
子どもの「初めて」を見届ける。
夫婦で楽しく晩酌をする。
ゆっくりと一人で趣味を楽しむ。
「投資先」という言葉に引っ掛けると、よくお金の投資先の構成を「ポートフォリオ」と言いますが、まさに「幸せ時間のポートフォリオ」をいかに組み立てるかを重要視する人が増えているのです。
24時間をなるべく幸せのリターンがあるように構成していく。
そんな生活者の日常がイメージできるかと思います。
「タイムシェア」を意識する
そうした生活者マインドを捉えていくと、以前、【ファン化は “タイムシェア率” がカギ】でも紹介しましたが、企業のマーケティング戦略において「タイムシェア」への意識が重要になってきます。
これは、同業種競合だけではなく「時間帯競合」も考えていくということ。
例えば、キリンビールの競合はどこでしょうか?
最初に頭に浮かぶのは、アサヒビールやサントリーなどビールを製造する会社ですよね?
一方、時間帯競合で見ると、トヨタ自動車も競合になります。
つまり、お酒を飲みながら運転できないからです。
ノンカフェインのハーブティーも、夜の時間帯はビールと競合するかもしれません。
快眠のためにハーブティーを飲もうとしている人からすると、眠りの質を下げると言われているビールは飲まない可能があります。
つまり、夜の時間帯の中で競合する企業に目を向けるというわけです。
サウナと競技場でのスポーツ観戦も競合しますよね。
逆にあえてスポーツ観戦をしながらサウナを楽しめる競技場をつくれば競合解消です。
時間帯で競合しそうな企業とあえてアライアンス(連携)を組むことも戦略の1つでしょう。
「趣味嗜好軸」+「時間軸」も考える
もう1つ意識したいのが、ターゲット分析です。
最近は「ペルソナ」設定は、どこの企業でも行うようになりました。
20代女性/港区在住/大手IT企業に勤務/趣味はヨガ……
など、戦略ターゲットをきめ細かく設定し、顧客マインドを読み解いていく。
この時、軸になるのが「趣味嗜好」分析です。
私はさまざまな企業のマーケティングサポートをしているのですが、まぁまぁ思うのが「そこに『時間軸』を加えていただきたい…」ということです。
例えば、「無香料の洗濯洗剤」と聞くと、「香が苦手な人」というイメージが頭に浮かびますが、そういう方ばかりでもないと思っています。
むしろ、良い香は好きだけど、あえて無香料を買っている人もいるのです。
例えば、その人が夜仕事から帰ってきて、夕食と洗濯を同時に行うとします。
当然、夜なので部屋干しします。
すると、夕食の美味しそうな匂いを打ち消すように香料の香りが入り混じります。
そうなると…、楽しい食事が半減…という人もいるはずです…
ご飯とは別に単独で洗濯ができるなら(外に干せるなら)、香り入りでもOK
つまり、無香料を選ぶのは「趣味趣向軸」だけではなく「時間軸」の可能性もあるのです。
もしも、その人が逆に「香料入りの洗濯洗剤」を買うようになったら、もしかしたら、その人の時間割が変わったかもしれません。
ターゲットは「趣味趣向軸」+「時間軸」で見ると、より顧客解像度が上がるでしょう。
ちなみに、夜に趣味を楽しんでいた人が朝活を始めたら、自ずと夜の時間帯はシュリンクする。
家族や健康を犠牲にしてお金を稼ごうとする人が減少していることからも分かるように、一日をなるべく心地よく過ごしたいという人は増えています。
「ウェルパ」という概念は、そうした生活者への時間への高い意識が、より鮮明に見えてきます。
「顧客が分からない…」と思ったら。
まずは、「時間」に着目すると、今まで見えなかったものが見えてくるかもしれません😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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