脱「普通」への挑戦
column vol.391
私は街中華が大好きで、コロナ前はよくガイドブックを片手にさまざまな店舗をまわっていました。
そんな思入れのある街中華ですが、大阪王将の「街中華モデル」に興味を惹かれました。
〈東洋経済オンライン / 2021年8月6日〉
「地域密着&個性化」に着手
街中華モデルとは、チェーン店の様相とは打って変わって“昔ながらの中華料理屋さん”のイメージ。
広さも20坪あるかないかの路面店で、利用者の帰着駅で食品スーパーなどに近い「日常買い回り動線」内にあるという立地戦略をとっています。
背景には、繁華街を中心とした大型店舗の頭打ちということがあります。
業績は順調であるものの、繁華街といっても国内にそうたくさんあるものではありません。
さらに、テレワークなどコロナによって働き方も変わり、今までに比べると都市に人が集中することはなく、分散傾向にあります。
地域密着。メニューもお店ごとに異なる街中華モデルへの移行は必然の流れと言えるでしょう。
ちなみに、7月5日にオープンした両国店は開店1ヵ月の売り上げは目標値の159%。4月30日に東長崎にオープンした店舗では売り上げが当初目標値の2倍近くを記録しているそうです。
街中華屋の「事業継承」問題の解決に
さらに街中華モデルは、街の老舗中華料理屋の後継問題の解決にも繋がるのではないかと見られています。
その例となっているのが、東京武蔵野市にある武蔵野緑町栄楽店。
地元で63年店を営んできた中華料理屋さんが古希を迎え、後継者もいないしコロナ禍もあって店をたたむところを大阪王将が店舗を借受けることに。
さらには、メニューのレシピや食器類も引き継いだそうです。
街中華は全国に6万軒とも言われ、後継者問題を抱えている店舗も非常に多くあります。
同社の植月剛社長も「街中華モデルで課題解決を探ることができればと考えています」と意気込みを語っており、街中華モデルが大阪王将のさまざまな顔(個性)を創るだけではなく、社会貢献に寄与しようとしています。
同社では50周年をにらみ2018年11月からこれまでに35店舗展開(2021年5月末時点)してきており、街中華モデルの展開が拡大されればされるほど、大阪王将の顔はより多面的になっていくことでしょう。
コンビニも個性化の時代
他にも、今まで標準化されていたものが、より個性化シフトしているケースもあります。
その1つが「コンビニ」です。
例えば、ローソンは6月、埼玉県狭山市の店舗を「書店併設型」に改装してオープン。
似た店を大量に出店するビジネスモデルが限界を迎えていることから、新たな一手を打ち出しました。
〈朝日デジタル / 2021年8月9日〉
同店では、弁当、おにぎり、日用品といったなじみの商品に加え、本や雑誌など約1万5千冊を揃えています。
書店併設型店は数年前から埼玉、神奈川、広島の3県ですでに21店を展開していますが、これまでの店舗が地域の書店の協力を得ていたことに対し、狭山市の店舗は、新たに連携した出版取次大手の日本出版販売から仕入れています。
これにより、全国をカバーする仕入れルートがあれば、近くに書店がなくても柔軟に出店できるようになるというわけです。
ファミリーマートが100円均一の「ファミリーマートコレクション」を打ち出したり、コンビニは掛け算による新しい化学反応を生み出そうとしています。
今後もコンビニの行く末に目が離せませんね。
安価にあぐらをかかない絶え間なき挑戦
100円均一といえば、300円ショップのスリーコインズも絶賛好調の様子。コロナ禍のステイホーム需要を追い風に売上を伸ばしています。
経営するパルグループホールディングス(HD)の2021年2月期決算によれば、スリーコインズの売上は前年比100.8%の259億6,000万円と好調に推移。
店舗数は215店となっており、10年前の約3倍にまで増えているのです。
同店の躍進を支えているのが、企画力です。
毎月700~800点もの新商品が発売されるというから驚きます。
〈毎日新聞 / 2021年8月9日〉
そして何よりもクオリティの高さが際立ちます。
昨年3月に発売した「ワイヤレスステレオイヤホン」(1,650円)は70万個以上を売り上げているのです。
左右のイヤホンをつなぐケーブルもない商品で、同じスペックの相場は大体4,000円くらい。
スリーコインズらしい安い価格帯で作れないかと、模索し大ヒットを生み出しています。
そして、何より顧客目線で企画しているところが見てとれます。
ある社員は生活の中で不便に感じたことを企画に繋げていたり、自分にとって縁遠い商品については、ユーザーの観察を徹底的に行うなど、自身が納得したものを提案していると感じます。
結局、当たり前ですが仕事をするのは人なので、同じ業務でも想いの差によってビジネスの広がりや成果も変わってきます。
イノベーションを起こす上で、ビジネスモデルやノウハウ、方法、システム(ルール)などに目が行きやすいですが、まずは社員一人ひとりの想い(動機)が重要。
と、そんなことをスリーコインズの記事から感じることができました。
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