まっさんの『変身』

ある朝、グレゴール・まっさんが、気がかりな夢から目覚めた時、自分がベッドの上で一匹の巨大な安倍総理に変わってしまっているのに気づいた。

こ、この俺が総理大臣かよ…

こんな大役務まるわけない。コロナの蔓延で国民はイライラしてるし、連日早くなんとかしろとせまってくる。でもコロナを流行させたのは俺ではないし、コロナのこともよく知らない。なんでもかんでも俺に八つ当たりするのはやめて欲しい。

どうか、コロナを憎んで安倍は憎まず… でお願いしたい。

総理大臣は無理だ。俺はそんな器じゃない。やり直し。寝よう。

グレゴール・まっさんが、再び気がかりな夢から目覚めた時、自分がベッドの上で一匹の巨大な清原和博に変わってしまっているのに気づいた。

俺が清原和博かよ、もとい、ワイが清原和博か。これはちょっとええかもな。少年時代に憧れた、あの清原和博に自分がなってるんや。

務まるか務まらへんかはわからへんけど、プロ野球選手の日常は興味ある。試合に出てみよう。ワイは清原や。

ピッチャーは野茂か。かかってこいや！

なんやこいつ！ めちゃめちゃ速い球投げるやんけ！ こんなもん絶対打たれへん。デッドボール当てられたら死ぬかもしれん。怖い。

ワイはプロ野球選手の器やない。やり直しや。寝よう。

グレゴール・まっさんが、またまた気がかりな夢から目覚めた時、自分がベッドの上で一匹の巨大な西村ひろゆきに変わってしまっているのに気づいた。

これはいいかもしれない。先行き不透明なこの時代に、ぶれない信念のもと行動できている男だし、先見の明もある。

超イケメンの部類ではないけれど、ややイケメンで、実際、俺よりはイケメンだ。気に入った。

でも連日SNSで、常に人の先を行く考えを発信し続けるのは大変そうだな。年に一回ぐらいなら俺にも出来そうだけど、毎日毎日、何年もこれをやり続けるなんて到底出来っこない。

俺はこんなに頭の回転速くない。無理。やり直し。

グレゴール・まっさんが、まーた気がかりな夢から目覚めた時、自分がベッドの上で一匹の巨大なパチプロに変わってしまっているのに気づいた。

これはやれる！ 絶対に俺でも務まる！

でもなんだろ？ この気分が晴れない感じ…

普通に働いてた頃は、毎日パチンコ・スロットだけで生活できたら、どれだけ楽かって考えてたけど、なんだか気分が冴えない…

夏休みの宿題はたんまりあるのに、まだ全然手をつけてない。でも夏休みは残り僅か… そんな気分だわ。

しかも勝てない。金もがんがん減っていく。

姪っ子や甥っ子にも、とてもじゃないけど、伯父さんはパチプロで生計を立てているなんて胸張って言えない。無理。寝よう。

グレゴール・まっさんが、気がかりな夢から目覚めた時、自分がベッドの上で一匹の巨大な女に変わってしまっているのに気づいた。

女か…

なんていうか… 性別が変わっただけで、やっぱり思考は俺のまんまじゃん。

女なら玉の輿に乗って人生楽勝なんて考えたこともあったけど、そもそも男だった頃に、逆玉に乗って人生あがり！ バラ色！…なんて計画にうつしたこともない。

最悪、エロをうりに成り上がっていけるだろ…ぐらいに考えてたけど、絶対無理だな。怖い。そういう世界に飛び込んでいけない。

よく知らん男とセックスなんて出来ない。無理。やり直し。寝よう。

あ、でもその前に…

せっかく女になってるんだから、ちょっとオッパイ揉んでみよう。

なんだこれ…

男の頃に自分の胸揉んでみた時とあんま変わらんじゃん。ちょっと肉付きが良いだけの俺じゃん！

感動ゼロ！

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ここで無職のグレゴール・まっさんは、親父に突き飛ばされ、ドアまで吹っ飛んでいった。

そこでドアがステッキでバタンと閉じられ、

やがで、

ついにあたりは静かになった。

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