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伊上 申
2023年10月31日 23:17
チャプターエンド ――真っ白な空間にその人はいた。 上か下か、天井か地面かも定かでは無い空間にその人は横たわっており、まるで目醒めを待つ神の如く祈る様子で眠っている。 ーー俺は、目を覚ました。 俺? そう思い、ゆっくりと上半身を起こす。 首の付け根から両サイドに伸びる腕を動かし手の平を自身の目で見て確かめる。「ああそうか。お前はこの姿がいいんだな」 彼はそう呟いて静
2023年10月25日 06:47
チャプター10 その男はソファにふんぞりかえるように腰掛けていた。神門穢流(みかどえる)が用意した紅茶を一気に飲み干して、「ー…ん」 と、空になったティーカップをシンの少し後ろで控える穢流に差し出す。「お茶汲みさんでしょ? 早く次淹れてきて」 ティーカップの取手に指をかけてカップを揺らす男。「かしこまりました」 そんな男の横柄な態度に気を留めず穢流は軽く会釈をし、侍女の
2023年10月25日 06:31
チャプター9 ――その男性は、表立って分かるほどの復讐心を露わにしていた。「こいつら全員に復讐したい」 神門穢流(みかどえる)に充てがわれたソファに座るなり、二枚の写真をテーブルに並べる。「……」 シンは黙ってそれらを手に取り軽く目に通す。 一枚目は男性と同世代の男三人。二枚目は少し年上の男性が二人でこの内一人はどこかの従業員なのかエプロンをしている。 どれも全員男性で、
2023年10月24日 18:59
チャプター8 ――その女性は所作ひとつひとつに気品があった。 立ち振る舞いから、差し出された紅茶の飲み方全てに品の良さを漂わせている。「…すみません」 紅茶を飲んで一息付いた女性は少しはにかんだように微笑んだ。「あの……」 徐に一枚のポラロイド写真を、小さめのハンドバッグから取り出してテーブルに置いた。「そこに映る人達に復讐をお願いします」「……」 黙って写真を手にす
2023年10月24日 18:57
チャプター7「…なん、で……こんな事に………?」 ――その言葉は声にならなかった。 斗真(とうま)は俯き自身の胸を見る。中心から少し左寄りのあたりに、約一センチ程の赤黒い穴がポッカリと空いている。 ――撃たれた―― そう意識する前に斗真は前のめりに倒れた。床に強く身体を打ちつける音がするが、斗真の痛覚は既に絶えていた。 薄れゆく意識と共に閉じそうになる瞼を必死に見開き、彼が
2023年10月24日 06:53
チャプター6「お前が『復讐代行』をやるって?」 その男は、ソファに大股で腰掛けるなり片腕を背もたれにかけ、もう一方の腕は後ろに控える男に葉巻を用意するように差し出す。その仕草と同時に、差し出した手には葉巻が既にありいつでも【燻(くゆ)らせる】ようになっていた。 男の見た目は――【お供】を二人従え、冠婚葬祭の正装であろう黒の背広を着崩している。どこかの反社会的組織の一員であろう。 男