記事一覧
消える気持ち 川柳十句
砕く瓶おいでかつての登下校
才能と唇しろく繰り返す
香水の枝分かれする喫茶店
落日やあなたの猫の爪を切る
膝の皿もしくはメモを煮てひとり
消えるのがわかる気持ちが今わかる
浴槽に会いたいひとがいるはずだ
もういちど体の線をむすぶから
蚊帳に風まちわびている詩人の死
コンタクトレンズは夜にいなくなる
噴水の文法 川柳八十句
床に手をついてはじまるバラエティ
被写体のよく動く夏だと思う
足どりの上に足どりここは海
死にたくて自販機で水買ったこと
ポスターの瞳に画鋲やわらかく
その国の喧騒に澄む金魚鉢
間に合わない靴を履いているからだ
シースルーエレベーターに手を合わす
星々にむせる背中をさすられる
会話って半透明の帯みたい
その駱駝では買えない孤独
安心がほどかれてゆく喫煙所