太代祐一

太代祐一

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あなたたちの仕草 川柳三十句

もれている彼のあくびは狼煙かと 通話でもひしひしと頭を下げる 倒れてく自転車ふたりして見てる あ、と言ってあ、と口にする卵黄 日に焼けて少年らこれからが罪 とざす傘 色がよく滴ってしまう バスに間に合わない背広叩いてやる 周到な返事に骨がふるえてる 泉にわざと落とした鞄 問題を解くペン先がよく霞 シースルーエレベーターに手を合わす コンビニはあかるい趣旨で満ちている スマートに赤信号を渡りきれない かみさまの和式便所で声ころす 棘の棘 神奈川県に住

    • 場所 川柳十句

      あなたとは駄目で最後まで駄目で 啓かれて水から水辺へと 吸うたびに赤くなるのかなしくないの うるさいんだけど確かに脱脂綿 ここにいていいのと凭れ馬鹿にする 画面ではなんどもひとをはたいてた 水銀のようによだれだぬぐってやる ああここで鈍色が振り下ろされる はじめからやらなきゃいいのにねェ、ブドウ 帰り道なんども振り返る狐

      • 祭りの痒み 川柳十句

        罵倒されサンバイザーの男へと 仕立て屋の言われるままに蒼くなる 屈辱は洋菓子店の閉店後 制服の急いだ部分から咲いた 吸い殻は真夏 祭りの痒みを掻く 日射病さえ物忌みする日 根こそぎのアイスバーだった、恋が。 ボタン押す幽体離脱の三姉妹 老人に老いが追いつく指パッチン 花の名をわすれ緞帳が下がる

        • 手鏡に三度目の現実逃避 川柳十句

          日時計がプールサイドに差しかかる 通信を拒む寺山修司の血 酢をふくむ口でささやく美人局 木苺に渦巻く悪意よろこんで あとさき考えて砕け散るサラダ 手鏡に三度目の現実逃避 捻り出す無音の雲の術なげに あしあとのしない子猫をだきよせる 走り書き 光の量の調節を だらしない舌と舌とで成し遂げる

        あなたたちの仕草 川柳三十句

          信心は霧 川柳十句

          酩酊の末に彼女は落とし蓋 アラビックヤマト 信心は霧 確率で水羊羹を駄目にする ひなあられ叔母のわるぐちを二度言う 色の出るマグカップとの逃避行 手拍子で喉の渇きが剥がせない 地球儀を撫でる老婆の後頭部 腹筋が取り柄の人にゆるされる にんげんと人魚のさかいめが痒い 生き方も生き延び方もカカオ豆

          信心は霧 川柳十句

          歓びと鬱(3)

          タイミング次第であちこちが出口 もろきゅうで時空間へと辿り着く スクランブル交差点では恋ごころ 言い訳はシルクな語彙で編まれてく 夕方のあるみにうむの寂しさだ 兄貴なら神輿の中の闇に住む でたらめな文字に捕まる麦畑 背筋から背筋へさびしさが伝う 巷では人気のフレア着せ替えて 創るまで待てない子供らの衣装

          歓びと鬱(3)

          歓びと鬱(2)

          パラレルに辞めないおじぎ蓮の花 噴水は二度と会えない君の影 結局はピザの画像に恋をした 面会は天の川ごと引き連れて とうめいなアイスコーヒーゆるせない イヤホンのもう片方を菩薩へと くるしいくるしいスポイトの喉 レストラン日和カッコウが燃える 罰として銘菓になってもらいます いつまでも終えれない修学旅行

          歓びと鬱(2)

          歓びと鬱(1) 

          流水に削れる顔のモーニング トーストにこんがりと「運命」とある  珈琲の紫焔に舌を焦がすのみ 歯を磨く 呪いは今かけられる 髭を剃る 明日の夢が思い出せない 服を着る 閉じられるこころの所在 必要な書類を駆け抜ける悪寒 家を出る背中にいってらっしゃいを 道端の「無題」の花におはようを いちまいの空を剥がしてみたくなる

          歓びと鬱(1) 

          死を占えば 川柳十句

          銀杏の死を占えば黄金記 垂れ流しの蜜を両の掌で受ける  ゆうぞらに補給物資を鳴り響く 海外に行きたいインク滲むだけ 言い淀むつまり西瓜糖の日々を 属国を翻る翻す腕 図らずも荒らした音楽の墓穴 仕方なくお古の戦車参ります くたくたの腕に絡む草木花 つまるところ哲学のクラウドファンディング

          死を占えば 川柳十句

          瀉血日和 川柳十句

          水銀の頬に頬を寄せて白夜 ご機嫌な瀉血日和を抱く鳩 粉雪の再開ほろびゆく黙 モンブラン振り回したいその響き 吐気する九月の蝉のアクセント ファッションでカラスを纏うボールペン 気まぐれの地軸であれば構わない 帰路の束むんずと掴み御満悦 凪の海 僕は醤油を剝がすのみ 彼女らは成長痛の役を降り

          瀉血日和 川柳十句

          夏フェス 川柳五句

          僕たちは壊れた台車以前なの? 音階の百足ひたすら出口へと 太陽に引き攣っているこの体 セットリストは絹ごし豆腐 サイリウム折って無意識の夏フェス

          夏フェス 川柳五句

          もちもちしてる 川柳十句

          純銀のティッシュにくるむ一軒家 ふところがフィーバーしてるカンガルー 説教がもちもちしてるお父さん 飴玉のなかに寓意のふたりきり 立身を池に沈める日曜日 視線にてあなたを潰す弄び 早々にドミノになってしまう馬 兎たち打ちひしがれて乱反射 夏雲が白く捩れる腹の中 虹色の管でがんじがらめの鮫

          もちもちしてる 川柳十句

          埴輪のある暮らし 川柳十句

          あんぱんの胡麻の言い訳だったんだ 横領の電気ケトルに悟られる 老人ホームで押し黙る柚子 技術者がお茶漬け好む左遷先 鏡面は鯵の刺身に満ちていて 落雷は托鉢僧の肩凝りへ 畦道をなでるポケットモンスター 納豆のにおう埴輪のある暮らし 木苺を潰す指さき近未来 確率が暮れるまで踏みつけている

          埴輪のある暮らし 川柳十句

          缶切り 川柳十句

          びぃ玉を口にふくんで涼しそう 背中へとまわされる腕 君だって おにごっこしたあと角の後始末 そうやって一生を缶切り探す 獣らは脅すつもりが怯えた目 約束が曇り空から転げ落ち 腹痛のリズムに腹が立っている イミテーションの魂で良い しぼんだら風船ガムの孤独です 脳内の暗雲をかき混ぜる匙

          缶切り 川柳十句

          施し 川柳十句

          おはようの速度違反を慇懃に たくさんをうまれてみろよきも良よ 糞落とす瞬間しかと見届けた 吐瀉物にしてはあまりに赤すぎる 施しは切開の肺だと気付け 紫陽花を手折る女を見咎める 歌会の隣りで句会 暴発 笹の葉の濡れているのは怨み言 鎖された扉 僕だってドーナツ 殴打 殴打 水晶のシャワーヘッド

          施し 川柳十句

          ファンファーレ 川柳十句

          ファンファーレ  鳥零しつつ逝く夜道 ゴージャスに背伸びを一つしましょうか 水飴は知らない人に耳澄ます 豆知識ふみつぶし踏みつぶし 青 照明に蛇を晒され口惜しい 弁明は失意の末のトロピカル スクワットしつつカードの疎覚え 鉱脈を二度か三度は持ち上げる アンタの性に頭抱える 正直になればなるほど吹きガラス

          ファンファーレ 川柳十句