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白昼夢の青写真2次創作 case2 短編集

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・ウィルの酒場で起きたとある出来事「信仰」(前後編) ・ウィルの恋物語「少年少女」(全4話) ・その続編「沛雨」(全4話) ・オリヴィアの過去「生きる」(前後編) ・オリヴィア…
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2023年10月の記事一覧

【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第4話】

【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第4話】

今日も今日とて、最悪な事態から一日は始まった。酒場の開店準備中、父が「む…」と呻き、包丁を動かす手が止まり、その場に座り込んだ。父の目が、再び見えなくなったのか。俺はじゃがいもをほっぽり出して父のもとへ駆け寄った。これで最後かもしれない、と思うと、背筋が冷えた。

「大丈夫か、父さん。見えていないのか。」

「慌てるな…準備を進めろ。夜にはよくなる。昨日も嵐で、客はロブとエドの二人しか来なかったか

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【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第3話】

【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第3話】

息子のウィルが、エドから文字を教わって以来、夜な夜な何かを書いていることは知っている。
エドから、「ウィルは、一度の説明で全部を覚えてしまう。天才だ。」と聞いたことがある。
あいつが、いつか成し遂げたい何かに出会うことがあるなら、それを叶えるべきだ。その才に見合った場所にいるべきだ。
いい年した息子が未だに甘えた小僧でいることが、もどかしくもある。

店の2階の集会所で、神に問うた。
「父親として

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【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第2話】

【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第2話】

エドの伝手でやってきた医者は、終始、重々しい表情だった。疲れていただけだ、酒があれば治る、と抵抗する父を説得し、診察にこぎつけるまで、2日がかかった。その間、父の目が見えなくなることはなかったように思う。しかし、店を開くことはなかった。父なりに、思うところがあったのかもしれない。

「詳しい原因などは、私にも分かりません。ただ、似たような症状を訴える人たちを、何人も見てきました。」
医師はそう前置

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【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第1話】

【白昼夢の青写真case2 2次創作 「沛雨」第1話】

一人ひとりに、人生がある。家族がいて、友達がいて、ドラマがある。我々の日々は決して、楽しいことばかりではない。むしろ、苦しみや悩みの方が多い。

さらには突然、病気になったり、怪我をしたりする。そうすれば、その日の生活を営むことすら危うい。唐突に、大事な人を失うこともある。日々、理不尽の連続。それに抗うすべもなく、己の無力さに絶望する。このテンブリッジに住む人間のほとんどは、あまりにも弱い。

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【白昼夢の青写真case2 2次創作「悪夢」】

【白昼夢の青写真case2 2次創作「悪夢」】

女の奴隷の生活なんて、私が詳らかに語らなくたって、容易に想像がつくはずだ。容姿に恵まれてしまった私は、必要以上に「そういう行為」に奉仕することを余儀なくされてきた。

男という性が持つ根源的な欲求に加え、暴力性、嗜虐性、倒錯性などといったものを、子供の頃から突きつけられてきた。身体を隅々まで穢されてきた。魂に亀裂が入る音を、何度耳にしただろうか。

          *

私、オリヴィア・ベリー

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