東雲

朗読台本置き場

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最初にご一読下さい

当サイトに掲載している台本はフリー台本ですので、自由に配信などでお使い下さい。 使用報告は任意で構いません。教えて頂ければ、できるだけ配信などに伺って聴かせて頂きたいと思っております。 ~⚠️注意事項⚠️~ ・著作権を放棄した訳ではありません。過度な改変はおやめ下さい。 ・朗読する際は作者名も一緒に紹介して下さい ・自作発言はおやめ下さい。 その他なにかご質問等ありましたら遠慮なくお聞きください。 皆様の心に私の作品が届きますように🍀⋆゜

    • さよなら、またどこかで

      美守はお寺の境内から少し離れたところにある家に住んでいる。代々そのお寺を管理している家だ。今は祖父がまだ現役で頑張っており、母が手伝いをしていた。美守も時々バイトで巫女姿になって御守りを渡したり掃除をしていた。 家を出てお寺の裏にある墓地にむかう。お墓の管理も仕事の一つだ。美守は今年で十八歳になった。高校を卒業し、大学へ進学する。美守が通う大学は実家から離れたところにあるため、下宿をすることになった。受験期間中はお寺手伝いは控えていた。 通り慣れた砂利道を歩き、お墓を見て

      • 終着点の行方

        病院と言ったらどういう所だとみなが思うだろうか。一番に思い浮かぶのは病気を治す所だろう。手術などの治療が成功して病気が治る、それが病院の役割だと皆思っているのではないだろうか。でも、病院はそれだけではない。この場所は生と死が交わる交差点。生きる命もあれば死んでいく命もある。そんな場所ではないだろうか。  周りを木々で囲まれた静かな所にある病院にて。朝、八時。いつもの時間に職場の鍵を開ける。ドアの上には『検体検査室』のプレート。ここは二百床ほどの小さな病院の検査室。主に慢性期の

        • 結言

          「聞いたことある?」  誰かが僕に言ったことがあったっけ?その言葉を発した時の誰かの表情、声色、周りの風景はもう忘れてしまったけれど、言葉だけは覚えている。 「人が最初に忘れるのは、人の声なんだって」  祖父が他界した。死因は老衰だ。九十の半ばまで大きな病気にかかることも認知症になることもなく健康に生きてきた。だが、骨折して歩くことが出来なくなってからは速かった。ライフワークにしていた散歩などの毎日の運動が出来なくなり、急に老いた。寝たきりになり、徐々に弱っていく祖父を

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          声劇台本「忘れ谷」

          主人公:男 マスター:男 男性 マ:実在するかもわからない、都市伝説となっている場所がある。周りを山で囲まれており、普通の人が試しに行ってみても見つからない場所らしい。唯一心に傷を負った人だけが訪れることができるという。時々ふらっといなくなり、いなくなったと思ったらふらりと帰ってくる人がいることを考えれば、あながち都市伝説ではないのかもしれない。 主:(僕はなぜこの街にいるのだろうか?とても大事なことを忘れている気がするけれど、思い出すのが怖かった。) 主:おはようござ

          声劇台本「忘れ谷」

          「月光」

          いつも通り早くに眼が覚める。街はまだ暗闇に包まれて眠っている時間だ 目が覚めてしまった、起き上がって何をするともなくぼーっとしていた。夜眠るのが怖かった。このまま眼が覚めないんじゃないかって怖くなるんだ。いっその事眼が覚めなくても良いかもしれないと思う反面、朝が来ると目が覚めたことにホッとする自分がいる。 いつもの通り栄養補助食品を摂取し、満員電車に揺られる。電車から吐き出される人の流れに乗って職場に向かう。特に何かあるわけでもなく、代わり映えのしない日常を今日も

          「月光」

          「華」

          いつも下を向いていた。 まだ不完全で出来損ないの自分を嘆いて、ただただ俯くのみ。だけど、きっと勇気が足りなかっただけなんだろう。自分自身を見つめこれが私だと認める勇気が、出来るはずもないのに自分はこんなものではないと虚勢を張っていたんだ。このままではいつまで経っても咲けない。蕾の、自身の重みに耐えきれずにただ朽ちていくのみ。 ふと隣を見てみた。そこには大きな一輪の花。吹く風にゆらゆらと揺れながらもしっかり顔を上げていた。その姿は美しくとても眩しかった。私もあんな風になりた

          「蛍」

          淡い光が闇に筋を描いて飛ぶ。またはある所で止まって明滅を繰り返す。ここまで足元も見えない道を歩いてきたけれど、おそらく川の近くなのだろうせせらぎがかすかに聞こえる所に来た途端に広がる幻想的な風景。一つ一つの光は小さいけれど無数に飛び交う蛍の光は隣にいる君の横顔がうっすらと見える程度の明るさはあった。  さらに足を進めて、光の川へと入っていく。蛍が僕たちの周りを静かに飛ぶ。  一匹の蛍が君の肩に止まった。足を止めて、尾を光らせて羽を休めている蛍の様子を見ていた。蛍火に君の白いう

          「透明」

          「透き通った海とか湖は綺麗だけど、透明度が高いと生産性は下がるんだって。それに澄んだ水は清浄だとは限らないんだよ。有害物質が含まれていても濁るとは限らないから」  南の島で熱帯魚を見ていた時にえらく物騒な事を君が言った。どこでそんな情報を仕入れてくるのだろう。周りの人々は純粋に楽しんでいるのに君は何を考えているのだろうか。少し呆れた感じがするが、よくよく聞いてみると興味深い話であることも多い。期待半分で耳を傾ける。君はそんな事も構わず、じっと魚たちを見つめながら話を続ける。

          「ぱちぱち」

           午前四時半。時計のアラームがなる、貴方が起きる前に私は音を止める。のびを一つしてゴソゴソと寝床を出る。途中で貴方が薄らと眼を開ける時があるけれどまだ寝てても良いよと一声かけてベッドを降りた。  朝起きてまずする事はお米を炊くことだった。お米をといで炊飯器のスイッチを入れる。次にお弁当にいれるおかずの用意をし始めた。  前は貴方は自分でお弁当を作っていた。でも朝六時くらいに出勤する為にそれより早く起きて夜は十九時くらいに帰ってくる。そんな貴方が朝少しでも多く眠れるようにと途中

          「ぱちぱち」

          「夏の友人」

           昔、子供だった時のことだ。帰省した田舎での出来事。よくある子供の遊びで近くの森の中に秘密基地を作っていた。親にも誰にも知られない自分だけの場所。  一人で冒険を楽しんでいたある日のこと、だれも知らないはずのその基地に小さなお客が舞い込んできた。浴衣を着た自分と同じくらいの子供。誰なのだろうかと思ったが、近所の子かまたは自分のように帰省してきている子供なんだろうと思っていた。最初こそ折角の場所が侵害されるような気がしたが、気が合ったのだろうかすぐに仲良くなった。  秘密基地以

          「夏の友人」

          「視線の先」

          薄暗い館内は空調が効いていて涼しかった。ゆらゆらと蒼い光が来館者の顔を照らす。家族連れや友人同士、好きな人と一緒に楽しんでいるようだった。その中で私は人混みの間をすり抜けて目的の水槽の前に立つ。一番大きくて、ジンベイザメやマンタが悠々と泳いでいた。その大海原の一部を切り取ったような風景が目の前に見られる場所にいくつかソファがあった。私は空いていた場所に腰掛ける。隣には一人で座っている人がいた。頬杖をついてじっと水槽を見つめている。誰かを待っている雰囲気ではなかった。なんという

          「視線の先」

          11/29「夜」

           日が暮れていく。ぼんやりとベランダから辺りが暗くなっていくのを見ていた。昼と夜の境界線が曖昧になるこの時刻は逢魔が時と呼ばれているらしい。『誰そ彼』そう呼びかける相手は果たして人かそれ以外か。ふとした瞬間にあの世とこの世の狭間に入り込んでしまう、そんな感じだった。  視線を部屋の中に移す。自分以外誰もいない空間。電気も付けずにいる真っ暗な部屋はまるで闇がぽっかりと口を開けているようである。そんな部屋に戻るのが少し怖くなった。もしあの闇に呑まれてしまったらもう二度と戻って来れ

          11/29「夜」

          12/20「冬の大三角」

           さあ空を見上げてみよう、星を語るのはそれからだ。この季節、南東の空に見えるのはオリオン座。一等星であるおおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンと冬の大三角形を作る星座だ。冬の代表格と言っても良い。特に明るい星なので街灯のある街でも見つけることが出来る。寒さが厳しくなるにつれて空高く昇り、冬のキンと張り詰めた空気の中存在感を露わにしていく。大三角形の一点を担うオリオン座のベテルギウスはもうすぐ死に逝く星だそうじゃないか。六四○光年という果てしない時を超えて地球にたどり着く光

          12/20「冬の大三角」

          12/20「クリスマスキャロル」

          寒い。  吸い込む冷たい空気で肺が痛い。僕は首に巻いたマフラーをぐいと口元まで引き上げた。幾分ましになったような気がするが、気休めなのはわかっている。早く暖房の効いた建物の中に入りたい。そう思い歩く速度を速めた。片手には紙袋。中には綺麗にラッピングされたプレゼントが入っていた。  今は十二月も中旬。もう少ししたらクリスマスだ。プレゼントを買い求める人で混雑するデパートからやっとの事で抜け出し、僕は電車に乗って都会を離れた。しばらく電車に揺られてとある駅で降りた。そこは静

          12/20「クリスマスキャロル」

          10/31「いたずらはいりませんか?」

          つい最近まで暑いと言っていたのにいつの間にか涼しくなって秋が来た。この調子だとあっという間に寒くなって冬が来るだろう。街路樹の緑が黄色くなりかけているこの頃、今日は一段と街が賑やかになっていた。あちらこちらにあるジャック・オ・ランタンや十字架の飾り物。シスターや狼男、包帯男、フランケンといったコスプレをしている人達が楽しそうにしていた。駅前の交差点ではお祭り騒ぎの中を迷惑そうに横切る仕事帰りの人達、交通整備をする警察官などでごった返している。  今日は十月三十一日、そうハロウ

          10/31「いたずらはいりませんか?」