古賀弘規

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  • 小説 コーチ物語

    コーチングのコーチ、羽賀純一。 彼のもとには多くのクライアントがやってくる。 この物語は、羽賀コーチによってクライアントがどのように成長し、羽ばたいていくのかをクライアントの視点から描いた物語である。 現役のコーチングのコーチが描く、人生のエッセンスが詰まった小説です。

  • 幸せな男女関係

    このマガジンでは、毎回幸せな男女関係を築くための考え方についてお届けします。 これから彼氏、彼女を作ろうと思っている方、すでにパートナーはいるけれど、もっと仲良くなりたいと思っている方におすすめの情報です。

  • Cafe Shelly

    魔法のコーヒー・シェリーブレンドを淹れてくれる喫茶店、カフェ・シェリーを舞台とした物語です。 主人公は訪れるお客様。今回はどんなお客様が訪れるのかな?

最近の記事

コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その8

「お前は何者なんだ?」  青年は味方だと言っているが、まだ信用出来ない。その青年は名刺を取り出して私に渡した。 「フリーライター、蒼樹雄大………その若さで、もうフリーライターか?」  ますます胡散臭い。フリーライターといえば、週刊誌などの記者を長年やっていた人間が独立してなるのが普通だからだ。その割にはこの青年はまだ若すぎる。おそらく二十代そこそこといったところだろう。 「よく言われます。もともとボクはジャーナリストを目指していたわけじゃありませんし。ただ、今行っていることを

    • コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その7

      「どうなってほしい、か………まぁ無理な話でしょうが、その力を自分にために使うのではなく、みんなのために使ってほしいですね。日本を動かすほどの権力を持ちながら、その力を自分のためだけに使おうとしている。そんなのが許せないんですよ」  私は自分で言った言葉に少し驚いていた。この時点で佐伯孝蔵に対しての憎しみの感情がどこかに飛んでいたからだ。 「みんなのためにその力を使って欲しい、ですね。なるほど。わかりました。そうなれば大磯さんはどうなるのですか?」 「どうなるって………」  こ

      • コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その6

        「大磯さん、ボクから一言感じたことを言わせてもらってもよろしいでしょうか?」  羽賀コーチは私の方を向いて、真剣なまなざしでそう言ってきた。 「はい、どうぞ」  私はマスターの出してくれたコーヒーをもう一口飲んで、羽賀コーチの言葉を待った。 「大磯さんは自分のほんとうの心がわからない。そうじゃありませんか?」 「はい、その通りです。さっきジンさんの話しを聞いて、私は家族の復讐のために佐伯孝蔵に反発しようとしていました。が、それは違うということも気が付きました」 「なるほど、だ

        • 幸せな男女関係「なんで一緒にいるんだろう? これをぜひ考えてみましょう」

          すでにカップルであるお二人に聞きます。 こんなこと考えたこと、ありませんか? 「どうしてこの人と一緒にいるんだろう?」 最初は、ただ一緒にいて楽しいから、好きだから。そんな気持ちの高まりで一緒に過ごしていたのではないでしょうか。 けれど、時間が経って、一緒に過ごすことが多くなるにつれて、そんな疑問が湧いてくることもあると思います。 下手をすると、こんなことまで思い始めてしまいます。 「この人と一緒にいる意味は無いよね」 「この人と一緒にいると、むしろ自分にとって悪い方に

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        コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その8

        • コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その7

        • コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その6

        • 幸せな男女関係「なんで一緒にいるんだろう? これをぜひ考えてみましょう」

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        • 小説 コーチ物語
          199本
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          33本
        • Cafe Shelly
          1本

        記事

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その5

          「そうはならないって、どうしてなんですか?」  私は率直にその疑問を、大柄の男にぶつけてみた。 「あ、紹介します。彼はジンといいます。私立探偵をしているのですが、今回の件では私と一緒にいろいろと動いてもらっています。そして今の大磯さんの疑問についても、ジンさんが調べてくれました。ジンさん、お願いします」  羽賀さんが口を挟んでくれたおかげで、私は感情的にならずに済んだ。でもどうして司法解剖で怪しまれないのだろうか? 「なぁに、簡単なことだよ。ズバリ、この件は警察の一部の人間も

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その5

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その4

          「あまり無理はしないで。今は身体を十分休めてくださいね」  私はそう言うのが精一杯だった。あまり無理はしないで。これは単に体のことだけを言っているのではない。私と一緒に会社を興し、そして佐伯孝蔵に反旗を翻すという決断のことも指している。 「でも……」  坂口さんは私の方を見つめて何かを訴えようとしている。が、私はその坂口さんの気持を悟って、先にこう伝えた。 「私は独り身ですから。どうにでも生きていけますよ。坂口さんは家族を大切にしてあげてくださいね」  これは私の本心ではない

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その4

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その3

          「大磯さん、これでも飲んで」  羽賀コーチは私に冷たい水をさし出してくれた。私はそれを一気に喉に流し込む。思った以上に喉が乾いていた。 「はぁ、ありがとうございます。ようやく落ち着きました。でもまさか、佐伯孝蔵から私に電話があるとは。羽賀コーチ、私、大丈夫でしょうか?」  あらためて不安が頭をよぎった。佐伯孝蔵は私たちのことを全てお見通しだ。彼は裏で日本を操ろうとまでした男。相志党の有力議員は彼からの献金で成り立っているとも言われている。 「大丈夫ですよ。意志があれば必ずそれ

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その3

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その2

          「大磯さん、今不安、ですか?」  羽賀コーチの言葉で私は今の自分の気持をもう一度考えてみた。  不安、確かにそれもある。が、それ以上に私の中から湧きでてくるもの。それは坂口さんに対しての期待感と信頼感である。彼以外にパートナーを組むことは考えられないし、彼がいてくれれば思ったとおり進みそうだという感じがする。 「羽賀さん、坂口さんをなんとか説得していただけないでしょうか?」 「うぅん、残念ながらそれはできません」  スパッと羽賀さんに断られてしまった。自分で何とかしろ、という

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その2

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その1

          「そうですか。ありがとうございます。この度はいろいろとご協力を頂き感謝します」  私は羽賀コーチからの電話で一安心をした。そうか、坂口さんも同じ思いだったんだな。  机の上にあるタバコに手を伸ばす。そして火をつけようと思ったがやめた。そうだった、そろそろ禁煙をしようかと思ったんだった。  思えば彼らと知り合ってから、私の気持ちは大きく変化した。私が務めている会社、リンケージ・セキュリティの子会社であり技術部門を任せているリンケージテクノロジー。そこの社員である坂口さんは私と組

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第四章 本当の心 その1

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その8

          「私は、私は自分を救いたかったんだと思います」  これが本音かもしれない。いや、間違いなく本音だ。 「自分を救いたかった、というと?」 「はい。今行っている仕事。これが裏の世界のことであり非常に危ない橋を渡っていることは十分承知しています。最初はそういった世界にスリルも感じたし、刺激もありました。しかし……」 「しかし?」 「最近では、本当にこれでいいのか。それを考え始めたのです。自分はいったい何のためにこの仕事をやっているのだろうか。日本を守るため。それは大義名分です。実際

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その8

          幸せな男女関係「恋は下心、愛は真心 さて、あなたはどっち?」

          恋と愛の違い、これについては前にもお伝えしました。 けれど、この違いがなかなかわからないのが私たちの恋愛事情です。 先日、こんな言葉を聞きました。 「恋は下に心があるから、下心である。  愛は文字の真ん中に心があるから、真心である」 なんとなくわかる気がします。 下心というのは自分の中で密かに考えているたくらみやもくろみのこと。 たとえば、あの人に親切にしたらお返しがくるかもしれない、だから親切にしておこう、といったたぐいのものです。 これ、恋愛に置き換えるとわかると思

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          幸せな男女関係「恋は下心、愛は真心 さて、あなたはどっち?」

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          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その7

          「兵庫、きさまどうして、どうして石塚さんを……」 「決まってるじゃないですか。日本がこれから正しい方に向かおうとしているのに、それを邪魔しようというのですから。だから消えてもらっただけですよ。でも、それもあなたたちに阻止されましたけどね」 「じゃぁ、最初からそれを狙って私に同調したフリをしていたのか?」 「ホント、大笑いですよ。まさか坂口さんから誘ってくれるとはね。おかげで裏切り者の情報は筒抜けでしたよ」  まさか、本当に兵庫が裏切り者だったとは。灯台下暗しとはこのことだ。自

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その7

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その6

           その日の夜、妻が帰った後にモバイルパソコンを開く。そこで羽賀さんからもらったマイクロSDの情報を見ようと試みた。  モバイルパソコンは妻に自宅から持ってきてもらった。 「あなたって、仕事の鬼よね」  そう皮肉を言われてしまったが。確かに、自分の家族が安心して暮らせる社会をと思ってはいるものの、家族のために時間を使うことが少ない。せめて入院している時くらいは仕事を離れて、というのが妻の言い分なのだろうが。  ともかく、今はこの情報を入手しなければ。その思いでパソコンの画面を開

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その6

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その5

          「あなた、あなた」  私が次に目を開けたときに目にしたもの、それは今にも泣きそうな妻の顔だった。そしてその向こうは知らない天井。  消毒液の匂いがする。ここは病院か。 「あなた、意識が戻ったのね。よかった」  泣きそうな顔から一転、安堵の顔に変わる妻。そうか、私は刺されたんだったな。なんとか命は助かったのか。 「あいたた……一体どうなっているんだ?」  私は意識が遠のく前のことを思い出そうとした。が、まだ頭の中がごちゃごちゃしてよく思い出せない。  しばらくして医者が登場。

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その5

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その4

           今回の大磯との打ち合わせは、今回の人工衛星に関する情報が羽賀さんたちの手によって友民党にリークされたことに対しての今後の対応についてである。といってもその打ち合わせはポーズだけである。なにしろ、その裏には私たちの活動があったのだから。  だが、この部屋自体どこで盗聴されているかわからない。社内では裏の活動に関しての話は一切禁句としている。だから私も大磯も、他人事のようにして会話を続ける。 「しかし、石塚が事故で死んでしまったのは驚いたな」  突然大磯からそんな言葉が飛び出し

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その4

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その3

           羽賀さんのコーチング、それは一見すると優しい口調で私に語りかけるものでもあるけれど、内容としてはとても厳しいものであった。 「では坂口さんが本当に欲しかったもの、それは家族とのゆっくりとした時間ということですね?」 「はい。私は家族を愛しています」 「家族を愛している。だからゆっくりした時間が欲しかったのか。本当にそうなんですね」  ここで羽賀さんはにこりと笑って、語尾を上げて私の目を見る。とても穏やかな表情なのに、「そうなんですね」と質問をされると考え込んでしまう。本当に

          コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第三章 真実とともに その3