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【丸井グループ】「小売×金融」の会社が描く、新しい小売の形

もうずいぶん前のこと、田舎から上京した私には、マルイはファッション意識の高めな10代20代が来る場所でした。その後は生活で関わることもありませんでした。

今回の記事に丸井グループを選んだ時は、百貨店業界も縮小しているし、ビジネスも大変だろうと、勝手に思いながら調べ始めました。

しかしその予想は裏切られ、今回は、丸井グループという会社が百貨店業界の中でいかに個性的かを紹介することになります。同業に先駆けて、早々に百貨店を脱したどころか、デジタルネイティブ時代の小売の新しい形すら描き始めたこの会社を、ぜひ知ってください。

1.丸井グループって何をしている会社?

創業から「小売」×「金融」の会社

丸井グループは、創業からただの小売業ではありませんでした。最初から、家具の割賦販売(分割払い)を生業とする会社としてスタートしました。創業時から、「小売」×「金融」が丸井のビジネスモデルなんです。

「百貨店」×「クレジットカード発行」の会社へ

丸井グループは、〇I〇I(マルイ)という百貨店で衣料品や雑貨を中心にモノを売り、1960年には日本で初めてクレジットカードの発行をはじめました。クレジットカードは2006年にエポスカードとなりました。

〇I〇I(マルイ)は百貨店からショッピングセンターへ

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2015年以降、〇I〇I(マルイ)は百貨店からショッピングセンターへ変わりました。つまり、自分で商品を仕入れて売るのでなく、テナントに売場を貸して家賃をもらうようになりました。

家賃収入に変わることのメリットは、まず、モノの売上に左右されず、収入が安定することです。

そして、「モノを売る」ことにこだわらないため、テナント選びの自由度があがることです。飲食店やサービス店を選びやすくなり、結果、店舗全体の魅力を上げることにつながります。

クレジットカード会社も丸井の本業

丸井は、エポスカードというクレジットカードを発行しています。

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(写真:丸井グループ共想経営レポート 2019より)

丸井は創業から、お客の支払いを立て替えること(割賦販売)を本業の一つとしてきました。日本で最初のクレジットカード(写真の一番左)を発行したのも、実は丸井なんです。

クレジットカード会社の仕事は、信用を与えること

クレジットカード会社の仕事は、カード会員に信用を与えて、お金を立て替えてあげること、といえるでしょうか。

クレジットカード会社の主な収入には、加盟店手数料、分割払い手数料、キャッシング手数料があります。

加盟店手数料:会員が買い物をしたお店(加盟店)から丸井がもらう手数料です。(一般には買い物金額の3~5%くらいと言われます)
分割払い手数料:会員が分割払い、リボルビング払いをした時に、丸井がもらう手数料(利息)です。
キャッシング手数料:会員がお金を借りた時(キャッシング)に、丸井がもらう手数料(利息)です。
※この他に、ゴールド会員などの会費収入もありますが、全体に占める割合は小さいです。


今は、「〇I〇I(ショッピングセンター)」×「フィンテック」の会社

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(写真:丸井グループ共想経営レポート 2019より)

このように、丸井グループは小売と金融が密接に融合した独特のビジネスモデルを持つ会社です。そして、そのモデルはどんどん進化しています。

小売は、D2Cブランドのテナントを入れるなど、ますます「モノを売らないお店」を目指しています。

また金融は、クレジットカードの使える範囲を家賃に、光熱費にとどんどん広げ、さらに証券会社も設立しています。

上の写真のように、「〇I〇I(ショッピングセンター)」×「フィンテック」を使って、店で出会ったお客と、一生涯の付き合いをしていくというモデルといえるでしょうか。

2.丸井グループってどんな会社?

 2.1 どのくらい大きいの?

小売としても、クレジットカード会社としても、それほど大きくない

丸井グループの2019年3月期の売上収益は約2500億円です。小売業とクレジット業がほぼ半々の割合となっています。

規模を比べてみると、小売事業の丸井の年間取扱高は、3370億円(2019年3月期)です。これは、百貨店最大手である三越伊勢丹(1兆1968億円)の3分の1未満です。

一方、クレジットカード事業では、エポスカードの年間取扱高は約2兆3000億円です。これは、日本のクレジットカード会社の中では、10位にも入りません。

参考:クレジットカード会社の取扱高
同じ小売系では、楽天カードが9.5兆円(2019年12月期)、イオンカードが5.3兆円(2019年3月期)と非常に大きく、他にも大きな銀行系、信販系のカード会社があります。

このように、丸井グループの規模は業界最大手と比べるとそれほど大きくないといえます。

 2.2 どのくらい儲かっているの?

安定的に向上する収益性は、今や百貨店業界随一

丸井グループの2019年3月期の当期利益は253億円です。

どのくらい儲かっているのか、百貨店業界の企業と比べてみました。(丸井と他の百貨店ではビジネスモデルが違うため、売上高利益率でなく、ROEで比べています。)

ROE (Return on Equity) : 会社がどれだけ効率的に儲けられているか?を示す指標の一つ。「自己資本利益率」や「株主資本利益率」ともいわれる。「当期純利益÷自己資本」で計算される。

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(グラフ:有価証券報告書より作成)

 上のグラフを見ると、丸井のROEは2013年以降良くなり続けています。今の丸井グループは、この安定した収益性の向上が非常に特徴的です。

 2.3 なぜ収益性がすごく向上しているの?

クレジットカード市場の成長が後押し

収益性向上の理由の1つは、主要事業のクレジット事業の好調です。

その背景として、日本のクレジットカード取扱高が増加し続けていることが挙げられます。(下のグラフ参照)

Amazonや楽天をはじめ、ECでの買い物がどんどん増え、クレジットカードの利用も増えています。また、日本の電子決済率はまだ低いので、将来的にもさらに拡大するといわれています。

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(グラフ:丸井グループ インベスターズガイド 20202月)

PL主義からの脱却、やり切ったビジネスモデル転換

収益性向上の他の理由には、百貨店型からショッピングセンター型への転換が挙げられます。しかし、すごいのは、これだけの会社でビジネスモデルの転換をやり切ったことではないでしょうか?

丸井グループの特異性を示すのに一つの例があります。

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丸井の中期計画には、売上や利益の金額での目標がありません。

株主や投資家といったステークスホルダーにとって、より良い指標として、EPS(1株当たり利益)、ROE、ROIC(投下資本利益)といった指標で経営をしています。

こうした経営の考え方が、モノの売上にこだわらない、柔軟な考えとビジネスモデルの転換をもたらしたのではないでしょうか?

3. 丸井グループのまとめ

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(写真:丸井グループ共想経営レポート 2019より)

丸井グループは、安定した収益体制を構築し、これから攻めの経営に移ろうとしています。

D2Cブランド支援のための子会社設立、新しい小売のモデルとしてデジタル・ネイティブ・ストアを掲げるなどの戦略を次々に打ち出しています。

将来世代を含めた全てのステークスホルダーの「しあわせ」を拡大するための「場」であること、それが丸井グループの企業価値だそうです。

この「場」を共に創りましょうというメッセージが、写真の青井社長の

「この指とーまれ!」というメッセージに込められています。









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