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若き当主へ。 「六華苑」

みんな大好き邸宅シリーズ!

今回は旧諸戸清六邸「六華苑」をご紹介します😊

日本近代建築の礎を築いたイギリス人
ジョサイア・コンドル。
コンドル先生の手がけた建物は主に東京周辺にしか無いのですが
この「六華苑」は珍しく三重県にあるのです!

それだけではなくデザインも
コンドル先生がそれまで手がけた建物とは違い
シンプルで珍しいのです。
それは若くして家業を継いだ青年に向けてのメッセージなのでは?
というそんなお話です!

それでは参りましょう!





旧諸戸邸「六華苑」


三重県きっての大地主「諸戸家」
その二代目の諸戸清六が施主となり
大正2年(1913)に完成しました。

建物は洋館と和館がドッキングしたとても大きな屋敷で
池泉回遊式と呼ばれる歩いて回れるほどの広い庭園もあり
見どころがたくさんです!
「六華苑」という名前は
しばらく空き家だったこの邸宅を改修して
公開するにあたり一般公募で選ばれた名前だそうです。

一番の特徴はこの玄関横の4階まである塔!
実は設計の段階では3階までしか無かったのですが急遽4階に変更したそうです。

なぜかというと
この六華苑の敷地のすぐ横には
揖斐川が流れているので
その景色を眺めたかったのだとか。

残念ながら4階は非公開で実際の眺めは見れませんがそれはそれは良い景色らしいです。
高い所大好きなんで見たいです!見せてくれ!!
金なら払う!

4階にしたことで敷地のどこからでも見える
シンボルのような存在になってて結果良ければ全て良しです!

装飾の無いとてもシンプルな玄関ホール。
シャンデリアが引き立ちます。

階段の手すりにはハートの矢があって可愛らしい

食堂。
他の洋館だと葡萄の彫刻があったりするんですが
ここはマジで何も無い。
シンプルイズベスト!

この押入れに見えて開けると
クローゼットみたいな収納!
めっちゃ良いやんっ!!
押入れ収納用にわざわざニ○リでプラスチックの容器買わんでいいやん!
と、妙に感動しました。

サンルームも装飾がほぼ無いシンプルな空間になってます!

暖炉のデザインは古典主義からの脱却の象徴であるアール・ヌーヴォーが取り入れられています。




若干18歳の当主


初代諸戸清六は米問屋から始まり
そこで築いた私財で山林、田畑を開拓し上水道を引くなど三重県桑名市の発展に貢献しました。

しかし明治39年に初代が亡くなり
後を継ぐことになったのが
当時18歳、早稲田大学在学中だった
四男の清吾でした。

「勉強していてもロクなやつにならんっ!」
とのことで(ひどい笑)
大学を中退し三重に呼び戻され
二代目諸戸清六を襲名し家業を継ぐのでした。

やがて結婚し、23歳の時にこの屋敷の設計を
コンドル先生に依頼します。

この時、日本建築界の重鎮 of 重鎮だった
コンドル先生に
地方の若造が設計の依頼をどうやってしたのか。

どうやら三菱財閥の始祖「岩崎家」と諸戸家に繋がりがあり
三菱の建築顧問を務めたことのあるコンドル先生に依頼できたようです!

この三菱の岩崎家と諸戸家の繋がりについては
長くなるのでやめておきます。

そして清六25歳の時にこの邸宅が完成し
塔の4階でコーヒーを飲む写真が残るほど
若いうちは洋館での生活を楽しんでいたみたいですが
歳をとるにつれて和館での生活が中心になっていったようです。

和館は廊下と並行して畳廊下があります。贅沢!

老後は穏やかに暮らしたのでしょうかね?



エールを込めて


ジョサイア・コンドルの手がけた建物をよく知る人からすると
この六華苑がとてもシンプルなデザインだと気付くと思います。

ジョサイア・コンドルと言えば
西洋のコテコテの古典様式が多く
代表的なのはやっぱり「旧岩崎邸」ですね!

天気悪いなぁ

旧岩崎邸とコンドル先生についてはこちら↓

旧島津公爵邸もコンドル先生

天気悪いなぁ

そして旧古河邸…
実は撮影した写真が行方不明なので😭公式サイトをご覧ください。


もう一つ現存している綱町三井倶楽部という建物があるのですが
ここは会員制で一般公開されてないんです😭


と、ここまでコンドル先生の手がけた建物を見ると六華苑のシンプルさがわかると思います。

おそらく二代目清六の若さに
今までの威厳や格式のある古典的なデザインはそぐわないと思ったのかもしれません。

古典主義から脱却したシンプルでモダンなデザインは
これから未来を生きていく二代目清六に
「初代に囚われず自分の代を生きていけ」という
自身も20代前半で日本政府に招かれて来日した
コンドル先生からのエールなのでは?
と思うのです。



Information

実は名古屋から近いので名古屋にお越しの際は
見学してみてください!

参考書籍
「日本の洋館シリーズ 第三巻 大正編 I 」
藤森照信著

ここまで読んでいただきありがとうございました!
また次の記事も読んでもらえると嬉しいです😆
それでは〜

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