『星を詠む人 ~乙女な夏祭りの日~ (乙女座)8/23-9/22』
夏の夜は時に賑やかになる。
ベランダから見える街並みの向こうは、ぼんやりとオレンジ色の光が溢れる。
街行く人は色とりどりな浴衣姿、子供達は楽しそうに親の手を引いている。
私も浴衣姿でりんご飴なんかを買ってみたいな。
ふふ。私にも乙女心らしきものが残っていたなんて、
少し驚きだ。
夢見る乙女なんて言葉はあるけれど、
乙女はただ漠然と夢を見ている訳では無い。
そのどこまでも純粋な心で、
どこまでも繊細に完璧に描かれた夢を抱くのだ。
そして細やかで聡明な乙女は、
自分で描いた夢にさえ責任をもって向かいあう。
たとえそれが、どんなに途方も無い夢だったとしても。
でも・・・
高すぎる夢は時に自分を酷くちっぽけに見せてしまうもので、
どんなに踠いても近付けない夢に、
いつか乙女も疲れて立ち止まってしまう。
だけど夢見る乙女なんてものは一人っきりでは成り立たない。
夢を見る相手が必ずその向こうに居るから。
いつだって乙女の見る夢は自分の為じゃなくて、
誰かの為のものだから。
その夢の果てはきっと誰かの幸せだから。
自分と他人の為の責任を果たす強い心で、
何度立ち止まっても、乙女はその夢と再び向かい合う。
そしてまた歩き出すのだ。
「ひゅーーー・・・どん!」
そして夜空に打ち上げられた花火のように、
いつか自分の夢の花を大きく咲かせるのだ。
ふむふむなるほど・・・
夢見る乙女というのは中々侮れないものである。
私の夢はすっかりと終わっていて、もう叶う事なんか無いのにな・・・
なんだか今日は星が燻んで見える。
きっと夜空に咲いた花火の所為だな。
それでも私は星を詠む
星を詠んで・・・人を想うのだ。
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【星を詠む人】
読み手:深文
脚本・演出;tanakan
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