tanakan/理学療法士×作家/新作『坂道と転び方』無料公開中!

理学療法士。作家。つむぎ書房より『看取りのセラピスト』を出版。理学療法士としては、回復…

tanakan/理学療法士×作家/新作『坂道と転び方』無料公開中!

理学療法士。作家。つむぎ書房より『看取りのセラピスト』を出版。理学療法士としては、回復期から亜急性期を経て、ICUを中心に働き内部障害を中心に患者へと関わる。ご連絡はこちらからも→Xアカウント(旧Twitter)@tanakan56954581 他にも多くの小説ストックあります。

マガジン

  • 『星を詠む人』

    【あらすじ】 星詠みという言葉がある。それは占星術とも読む事は出来て、簡単にいうと天体に存在する星々の動きから、人や社会の在り方を経験的に結びつける・・・ことだと私は思う。 これは私が色んな人と出逢いを紡ぎながら前に進む物語。 それはまるで星の繋がりのように。           私は星を詠む。星を詠んで人を想うのだ。 読み手:深文 https://www.323-mifumi.website 脚本・演出;tanakan https://note.com/tanakannaika/n/n180b9baa3a29

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『坂道と転び方』 -1- 世界から逸脱した暗い部屋 (1/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

-1- 「世界から逸脱した暗い部屋」  僕の住む街は小高い丘の真下にあって、見上げるとゆるやかに続く坂道がどこまでも続いている。傾斜は登るほどに激しくなり、丘の中腹に小桜 岬の住む家があった。  二階建ての決して広いとは言えない家の玄関には、埃が積もりうっすらと白くなった車椅子がある。そして隣はベージュ色をした幅の厚いベージュのプラスチックで作られた短下肢装具が置かれている。ふくらはぎから踵を包み、足先まで伸びるプラスチックもまた、主人を失い寂しそうに埃でまみれていた。

    • 『星を詠む人 ~朝露と天秤の日~ (天秤座) 9/23-10/23』

      夏の暑さは何処へやら。 朝の空気は、どこか秋の匂いをその身に纏う。 視線の端には少し色味を失った葉っぱが揺れている。 その先端に集まった朝露が、ぽつりと地面に落ちて淡く弾けた。 何事も無理に釣り合いを取ろうとすると、いつかそれは破綻してしまう。 朝露が地面に落ちるように、 それはある日、唐突に訪れるのだ。 なぜならそれは、一見正しく秤の釣り合った天秤みたいに、 その中心はいつだって無理をしているから。 天秤がじっと耐えながら、その秤を揺らさないようにしても、

      • 先日の創作大賞2024の中間発表にてあえなく落選とはなってしまいましたが、本当に多くの方に目を通していただき感無量です。公開はしばらく続けようとは思いますので、この場を借りて応援頂き本当にありがとうございました!

        • 『星を詠む人 ~乙女な夏祭りの日~ (乙女座)8/23-9/22』

          夏の夜は時に賑やかになる。 ベランダから見える街並みの向こうは、ぼんやりとオレンジ色の光が溢れる。 街行く人は色とりどりな浴衣姿、子供達は楽しそうに親の手を引いている。 私も浴衣姿でりんご飴なんかを買ってみたいな。 ふふ。私にも乙女心らしきものが残っていたなんて、 少し驚きだ。 夢見る乙女なんて言葉はあるけれど、 乙女はただ漠然と夢を見ている訳では無い。 そのどこまでも純粋な心で、 どこまでも繊細に完璧に描かれた夢を抱くのだ。 そして細やかで聡明な乙女は、

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        『坂道と転び方』 -1- 世界から逸脱した暗い部屋 (1/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

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        • 『星を詠む人』
          4本

        記事

          【Re:Habilis ~失われた私とリハビリテーション~ / -1-『私のアナムネーゼ』

          『Re & Habilis』 -1-「私のアナムネーゼ」  28歳を迎えてしばらくが経ち、私の右手足は動きを失い言葉も失われました。  脳梗塞を発症しもともと無口だった私は夫へ想いを伝える術を失ったのです。  本格的なリハビリテーションを行う病院で、窓辺のベッドがあてがわれました。  横たわる私の隣で夫が私の代わりに私のことを伝えています。  正面に座るのは可愛らしい顔立ちの療法士です。  彼女は書類とバインダーを胸に抱いていました。  アナムネーゼと彼女は言

          【Re:Habilis ~失われた私とリハビリテーション~ / -1-『私のアナムネーゼ』

          『星を詠む人 〜大人なライオンの日〜 (獅子座) 7/23-8/22』

          雨の名残を残したままに、空は高くて日の光は私に降り注ぐ。 休みの日にはこうやって、空を眺めるのも良いなぁ。 私は空を仰いで、大きく胸を張る。 それはそれは立派なライオンみたいに。 「がおー!!・・・」 でも私は叫んだりはしない。 大人だから。 もし・・・人の目を気にしないままで生きていけたら。 そんな事をたまには思う。 まるでライオン君みたいに、 誰にも負けない強い気持ちで、 理想の自分の姿のままに胸を張る。 そんな姿にみんな頼ってしまう。 だってそ

          『星を詠む人 〜大人なライオンの日〜 (獅子座) 7/23-8/22』

          『星を詠む人 ~梅雨の蟹の日~ (蟹座)6/22-7/22)』

          こんな季節はなんだか憂鬱になる。 通勤中なんかは特にそう思うのだ。 シトシト雨降り、じとじとジメジメ・・・・ こうも簡単に人は環境で心が揺れ動くから不思議だ。 きっと今日が、空の果てまで見えるほどの青空だったのなら、 きっと私はそうは思うまい。 まったく梅雨ってやつは、なんて野郎だ。 だからと言って私はそんな事を口には出さない。 もし平気で口に出せるのなら、随分と生きるのが楽になるのは分かっているのだけど・・・ 赤く分厚い蟹の甲羅のようなそれは、感情までも包み

          『星を詠む人 ~梅雨の蟹の日~ (蟹座)6/22-7/22)』

          【『坂道と転び方』ティザーPV 第二報】

          —note創作大賞応募作品。表題左下のハートマークをぜひチェック!現在無料公開中!- 大好評をいただいておりますこの作品! 障がいとリハビリテーションを現職の理学療法士が記す、今まであったようでなかった作品。是非ともその世界を共に広げていきましょう!応援をよろしくお願いします。 本編はこちらから→

          【『坂道と転び方』ティザーPV】

          —note創作大賞応募作品。表題左下のハートマークをぜひチェック!現在無料公開中!- 「君たちの言う正常で正しい動作は私にとっては呪いの言葉でしかないんだ!」 僕と彼女は、人生における転倒から立ち上がれず暗く正常からは逸脱した場所で再び出会った。 本編はこちらから→

          『坂道と転び方』 《書き下ろし》「呪われた私と、私が呪った理学療法士」 (0/4章) /小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          《書き下ろし》「呪われた私と、私が呪った理学療法士」  朝焼けが終わったというのに遮光カーテンで締め切られた、私の部屋は暗いままだ。  カーテンの外には急勾配の坂道があり、中腹に私の家があるものだから油断すると朝日が部屋に差し込んでしまう。車椅子で下るには勾配が急すぎて難しく、今の私が歩いて下るなんてもってのほかだ。  家の前にあるただの坂道は、私にとっては忌々しい、暗がりへと閉じ込める呪いの坂道である。  部屋の明かりはパソコンのディスプレイだけで、映し出されるフィ

          『坂道と転び方』 《書き下ろし》「呪われた私と、私が呪った理学療法士」 (0/4章) /小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          『坂道と転び方』 -4- 私を呪った坂道と私を救った転び方 (4/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          -4-「私を呪った坂道と私を救った転び方」  不思議と眠れない夜はいつだって唐突に訪れる。あんな夢を見たからだと僕は自室のベッドから天井を眺めた。時計を見ても深夜を超えたばかりで、朝まで程遠い。  岬のリハビリを終えて自宅へ戻り、他愛もない両親との会話を終えて眠りに就く。いつもと変わらない夜だった。  僕と岬はなぜか海辺にいた。暗い砂浜で打ち寄せるさざ波が、白い泡を浮かべては消えるのを眺めている。  赤く重たい月が夜空に浮かび、ぬらりとした黒い海はどこまでも広がってい

          『坂道と転び方』 -4- 私を呪った坂道と私を救った転び方 (4/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          『坂道と転び方』 -3- 些細で深刻な生涯を縛る傷跡 (3/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          -3-「些細で深刻な生涯を縛る傷跡」  四月に入るとなぜか気持ちが浮き足立つものだ。年度末の終わりは働いていても、学校にいても環境が大きく変化を見せる時期でもある。浮き足立つのも仕方がない。  働いていない僕も同じで、階段を降りると朝だというのに揚げ物の匂いがキッチンから流れてくる。 「おはよー。もうすぐで今日のお弁当出来るから。岬ちゃんのリハビリは順調?」  母がエプロン姿の前で菜箸を右手に持ったまま言った。最初は夕飯の残りだった岬への差し入れは日増しに増え、今では

          『坂道と転び方』 -3- 些細で深刻な生涯を縛る傷跡 (3/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          『坂道と転び方』 -2- 正しくも正常ですらない生きる美しさ (2/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          -2-「正しくも正常ですらない生きる美しさ」  僕が岬の家に通う日々が始まってしばらく経った。母に事情を説明すると、どこか安心した表情で目尻を和らげた。 「よかったね」  母は僕に一言だけ言うと、軽い足取りでキッチンへと消えていった。  礼子が受傷した腰椎の圧迫骨折の多くは尻餅をついて脊椎を構成する円形の椎骨、骨が潰れてしまう。  潰れ方の程度によっては保存療法で治療は進む。胸から腹部へと伸びる硬いコルセットを装着して、痛みに合わせて車椅子へと起きる練習から始まる。

          『坂道と転び方』 -2- 正しくも正常ですらない生きる美しさ (2/4章) / 小説 【#創作大賞2024】 《完結》

          心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる小説!

           感動と感慨が交差する物語の世界へようこそ。理学療法士で作家のタナカンが贈る心揺さぶる小説の作品集を公開します。  私は理学療法士としての経験と知識を糧に、日々の出来事や人々との触れ合いから生まれる命なストーリーを創り出してきました。その筆致は繊細かつ力強く、登場人物たちの心情や葛藤を鮮やかに描き出します。  小説の中では様々な背景や状況、そして異なる世界で生きる人々の物語が織りなされます。その中には、困難に立ち向かいながらも成長し、希望を見出す姿があります。また、人々の絆や

          心揺さぶるストーリー!理学療法士×作家のタナカンによる小説!

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