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これから太宰治を読みたい人へ 〜「太宰治全部読む」を終えて〜

これから太宰治を読みたい人へ 〜「太宰治全部読む」を終えて〜

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『地図 初期作品集』をもって、これまで約1年半にわたり続けてきた「太宰治全部読む」が、めでたく最終回を迎えた。

今回は、企画の締めくくりとして、これまでの「太宰治全部読む」の取り組みを総括してみたい。

太宰作品をひたすら読み続けた結果、私は何を思ったのか。

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ここ数年ちくま文庫から刊行・復刊された昭和の女性作家の作品をプロフィールと一緒にまとめてみた

ここ数年ちくま文庫から刊行・復刊された昭和の女性作家の作品をプロフィールと一緒にまとめてみた

こんにちは。青山ブックセンター本店 文庫・ビジネス書担当の神園です。

突然ですが、ちくま文庫で昭和の女性作家と言えば、最近だと2020年3月に刊行された『向田邦子ベスト・エッセイ』が16万部を超える大きな反響を呼んだことが記憶に新しいです。自分もこのエッセイが好きで、ここに書かれている向田邦子が愛した表参道の老舗和菓子屋さん「菓匠 菊家」に訪れたことがあります。(青山ブックセンターからとても近い

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今日も、読書。 |最初の短編に、すべてを持っていかれて

今日も、読書。 |最初の短編に、すべてを持っていかれて

短編集の、はじまりの一編。

その一編にすべてを持っていかれて、そのまま最後まで、転がり落ちるようにして読んだ作品。

今回は、サラ・ピンスカーさんの『いずれすべては海の中に』をご紹介。

何年も読書をしていると、”慣れ”のためか、並大抵の設定では、驚かなくなってくる。

設定だけを見て、「この作品は気になる……!」と思わず手が伸びてしまうことは、あまりなくなってしまった。

ところで、本作『いず

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神戸市の図書館がスゴいのは知ってたけど、図書館司書はもっとスゴかった

神戸市の図書館がスゴいのは知ってたけど、図書館司書はもっとスゴかった

神戸市にはなんと「12」の公共図書館があります。最近は「東灘図書館」「北神図書館」「三宮図書館(仮移転)」「西図書館」が移転・開館し、「名谷図書館」が新設されました。

でも、建物がオシャレになって、本の数が増えただけではありません。勉強したり遊んでみたり、ときにはリラックスする場所として、ますます自由に過ごせる場所になりました。神戸市は昔もいまもこれからも、ずっと「図書館のまち」なんです。

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1年365日、「1日1冊本を読む」を休まず2年やりきった結果

1年365日、「1日1冊本を読む」を休まず2年やりきった結果

読んだ!!読み切った!!
1年365冊。
2年目。

1年間、毎日1冊本を読む習慣。

2年目を先日、やり遂げた!

365冊×2年=730冊。
よく読んだ!

いや、本当によくやった!

そう思うのだけど…
けっこうふつうにやりきった。
それほどの達成感はなかった。
一応、それなりに意識はしていて、記念すべき730冊目は何か特別な本を読もうと思って、積読状態(だってけっこう分厚いんだもん)になっ

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自然を楽しむ視点を教えてくれる、宮澤賢治のことば

自然を楽しむ視点を教えてくれる、宮澤賢治のことば

宮澤賢治は⾃然を楽しみ、それを⾔葉にすることが⾮常に上⼿な⼈でした。
賢治は自らの詩を「心象スケッチ」と呼んでいますが、それは、こころに映ったイメージを、そのとおりそのままに言葉でスケッチした、ということのようです。

つまり自然のなかで感じた「楽しさ」や「よろこび」「感動」を、そのままに書いている。エッセイストの澤口たまみさんは、こう書いています。

実際、自然を見る人であれば、その言葉の的確さ

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【書評】ジェームズ・M・バーダマン『アメリカ黒人史』--黒人は空を飛ぶ

【書評】ジェームズ・M・バーダマン『アメリカ黒人史』--黒人は空を飛ぶ

 今まで知らなかった話がいっぱい出てくる。アフリカから連れて来られた奴隷たちは様々な場所の出身だったので互いに言葉が通じなかったと思っていた。だがこの本によれば、そもそも彼らは多言語話者で、しかも奴隷船の中で独自のピジン言語を作ったりして、なんとか必死に互いにコミュニケーションを取っていたと言う。まあそりゃそうだよね。
 黒人奴隷たちが西洋の医学を信用していなかった、というのも興味深い。白人の医師

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この秋は、温めてきた1冊を読みます  「愛蔵版 冷静と情熱のあいだ」

この秋は、温めてきた1冊を読みます 「愛蔵版 冷静と情熱のあいだ」

ここ数日、手抜きnoteを量産していた(それでもスキをつけてくれた方々ありがとう……ちゃんと見ていたよ……)。

なぜなら、秋恒例の心身のバランス崩壊が来てしまったからである!!!!
悩んでるわけじゃないのに、身体が重い、無気力になるこの時期。

もはや毎年のことなので、この時期は抗わないように……抗わないように……と自分に言い聞かせ、がっつりお休みを取った。

さらに、先日の古本市終了とともに燃

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ハヤカワ文庫の100冊フェア「世界を知る。」始まります

ハヤカワ文庫の100冊フェア「世界を知る。」始まります

毎年恒例のハヤカワ文庫の100冊フェア。いま読むべき、オールジャンルからの100作品をご紹介する同フェアの今年のテーマは「世界を知る。」。9月上旬から全国主要書店にて始まります。

『同志少女よ、敵を撃て』カバーイラストを手掛けた雪下まゆさんがフェアイラストを担当

フェア帯や小冊子のイラストを担当したのは、今年の本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』やそのほか多くの話題作のカバーイラストを手掛け

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映画『ドライブ・マイ・カー』とセットで読みたい4冊!

映画『ドライブ・マイ・カー』とセットで読みたい4冊!

 第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞、第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞ほか4冠に輝いた話題作『ドライブ・マイ・カー』が、いよいよWOWOWで放送!

1冊目:女のいない男たち村上春樹(著) 文春文庫

 村上春樹さんが2014年に出版した短編集です。アカデミー賞受賞映画の原作「ドライブ・マイ・カー」が収録されていることで有名ですが、こちらを映画と比較しながら読み進めると、作品の深いテーマ性

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八戸ブックセンターという市営の本屋さん

八戸ブックセンターという市営の本屋さん

八戸ブックセンター(以下八戸BC)は八戸市の運営する「市営」の本屋さんである。「市営」、そんな本屋さんなんてあるの? 図書館じゃなくて? と、思ったあなたはまったく正しい。市営の本屋さんはここ、八戸と、北海道の礼文島にしかない(礼文島の「BOOK愛ランドれぶん」は町営の図書館兼本屋。離島にはまた別の大きな事情がある)。
実は数年前、僕の発行する「縄文ZINE」について置けないかと八戸BCから連絡を

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最近よく聞くキーワード「ナラティブ」についての理解が深まるナラティブ関連本おすすめ5選

最近よく聞くキーワード「ナラティブ」についての理解が深まるナラティブ関連本おすすめ5選

私ごとで恐縮だが、拙著『ナラティブ・カンパニー 企業を変革する「物語」の力』が世に出てちょうど1年が経った。

もちろんこの本だけの影響ではないけれど、この1年で、日本でも明らかに「ナラティブ」への関心が高まっていると肌で感じている。

実は「ナラティブ」はいろいろな分野にまたがる概念で、先行研究の長い歴史があり、その定義や解釈は多岐に渡る。いろいろな分野とは、例えば行動経済学や教育学、臨床心理の

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「箔押しを愛する、すべての者たちへ」

「箔押しを愛する、すべての者たちへ」

おそらく過去に前例がなく、この先も二度と出会うことができない、そんな予感がするお仕事。それが、2022年6月発売『 デザインのひきだし46 』の表紙への箔押し加工です。

これはもう、『 伝説となること間違いなし 』でしょう!

・ 前代未聞!! 表紙が全1000パターン
紙が10種類、箔色は20色、腐食版と彫刻版の2つの版で繰り出す、今回の表紙のパターン数は、なんと1000パターン!

1パター

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はじめて「夜回り」でホームレス状態の人に会った日から感じていたこと

はじめて「夜回り」でホームレス状態の人に会った日から感じていたこと

4月28日、写真集『アイム Snapshots taken by homeless people.』(発行Homedoor、発売ライツ社)が発売されました。

この写真集のカメラマンは、ホームレス状態の人たち。

・河川敷で10年以上暮らす元建設業の男性
・ネカフェ(インターネットカフェ)を転々とする元ホストの男性
・教会に通う元引きこもりの女性

年齢も、性別も、状況も、さまざまな人たちが

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