本田哲也

PR専門家。本田事務所代表。シンガポール在住。カンヌライオンズ公式スピーカー/審査員。…

本田哲也

PR専門家。本田事務所代表。シンガポール在住。カンヌライオンズ公式スピーカー/審査員。ブルーカレント・ジャパン創業者。得意領域は戦略PR/広報、ブランドマーケティング、ナラティブ戦略。『戦略PR』『ナラティブカンパニー』『パーセプション』など著作10冊以上。ウイスキーラバー。

最近の記事

PR視点のブックレビュー:嶋浩一郎著『「あたりまえ」のつくり方 ビジネスパーソンのための新しいPRの教科書』

PR(パブリックリレーションズ)はどうして生まれたのか? その源流は、100年以上前の米国の鉄道会社にあるといわれている。広大な国土に鉄道というインフラを一気に開発していく過程では、様々な利害関係や地域社会との軋轢が生じる。鉄道事業への理解を促しつつ、鉄道という「新たな常識」を、社会に受け入れてもらう必要があった。 1920年代の女性の喫煙キャンペーン(「禁煙」キャンペーンではなく「喫煙」キャンペーンだ!)では、ニューヨークで女性モデル達がタバコを「自由の松明」として掲げて

    • どこよりもはやいカンヌライオンズ2024 PR部門受賞作品レビュー!「PRの6ルール」で解説します

      2024年もやります! (おそらく)どこよりもはやい、カンヌライオンズ「PR 部門」のレビュー。 2024年6月17~21日、世界最高峰のクリエイティブの祭典、「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下、カンヌライオンズ)」が開催された。 2024年は、92カ国から2万6753点が応募、そのうちPR部門にエントリーされたのは1,528エントリーで、最終的に50の受賞が決まった。 この記事では昨年に引き続き、カンヌライオンズ 2024 PR部門の中から

      • 広報PRの5年間を振り返ってみる。「本田事務所5周年」に寄せて。

        本田事務所は今月、5周年を迎えた。 2019年4月。「令和」の訪れとともに、日本初のPR戦略立案に特化したファームとして本田事務所は始動。おかげさまで素晴らしい仕事と仲間に恵まれ、5周年を迎えることができた。感謝しかない。ありがとうございます(設立の趣旨や僕の想いはこの記事に詳しい)。 というわけで、この節目に、広報PR領域と本田事務所の5年間をざっくり振り返ってみようと思う。 2020年。「コロナ禍」がすべてを変えた2020年があけるなりやってきたのが、新型コロナウイ

        • 新人広報PRパーソンへ、PRストラテジストが伝えたい5つのこと

          ようこそ、PRの世界へ! 新年度を迎え、新たに広報PRの仕事に就いた人も多いのではないだろうか。 PRの仕事は大変なことが多いけれども、同時にとても面白くてエキサイティングなのが醍醐味。僕はPRの専門家として、「X」(旧Twitter)でもよくPRについて投稿している。今回はその中でも過去に反応のよかった投稿を取り上げ、PRの仕事とはどうあるべきなのか解説してみよう。 この春からの新人PRパーソンだけでなく、(その上司や先輩になるであろう)バリバリと仕事をこなしている現役

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          どこよりもはやいカンヌライオンズ2023 PR部門受賞作品レビュー!「PRの6ルール」で解説します

          今年もやります! (おそらく)どこよりもはやい、カンヌライオンズ「PR 部門」のレビュー。 2023年6月19~23日、世界最高峰のクリエイティブの祭典、「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下、カンヌライオンズ)」が開催された。 70周年を迎えた今年2023年は、86カ国から2万6992点が応募、そのうちPR部門にエントリーされたのは1600エントリーで、最終的に52の受賞が決まった。 この記事では昨年に引き続き、カンヌライオンズ 2023 PR

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          「認知」だけの時代は終わった。新刊「パーセプション 市場をつくる新発想」の「はじめに」を発売前に全文公開!!

          11月7日に、僕の新刊『パーセプション 市場をつくる新発想』が刊行されます。パーセプションとは「客観的な認識」のことです。 「このお菓子、昔からあるから知ってる。でも子供向けのものだから買わない」「あの会社、有名だから知ってる。でもブラックらしいから入社したくない」ーーこれらはすべて、知名度や認知度はあるが、認識(パーセプション)が好ましくないため成果が出ない、ということ。マーケティングや広報PRのみならず、企業経営や事業開発にもとっても重要な考え方です。もはや、「知っても

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          PRパーソンが一度は観た方がいい、超個人的おすすめ映画5選

          そのつもりはなくても、エンターテインメント作品から自分の仕事に役立つヒントや知見を得ることがある。もちろんPR領域も例外ではない。 そこで今回は、これまでの中で人気のあった記事「PRパーソンが一度は読んだ方がいい、超個人的おすすめ本5選(実用書じゃないよ)」に習って、PRパーソンが一度は観た方がいい超個人的なおすすめ映画を5本紹介しよう。 そもそも日本では、PRや広報領域の仕事が映画やドラマの舞台として登場することは比較的少ない。けれどもPRが生まれたアメリカでは、PRを

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          PR視点のブックレビュー:池田紀行著『売上の地図』

          トライバルメディア池田さんの、久しぶりとなる渾身の著。池田さんとは個人的にもずいぶんと長いお付き合いですが、1年前に拙者『ナラティブカンパニー』刊行をテーマに鎌倉のご自宅で対談した際に、「実は新刊の構想があって、”売上の地図”というコンセプトなんですよ」とおっしゃってたのを思い出す(その時の対談はこれです。前編と後編あります)。 さて、そういうわけで、本書のコンセプトは明確明瞭この上ない。『地球の歩き方』といえば、多かれ少なかれバックパッカーに憧れて世界を旅した僕たち世代に

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          どこよりもはやいカンヌライオンズ2022 PR部門受賞作品レビュー!「PRの6ルール」で解説します

          カンヌライオンズが、3年ぶりの現地開催! 世界最高峰のPR作品が一堂に会するカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(以下、カンヌライオンズ)がついに今年、リアルでの開催となった。 87カ国から合計25,464点の応募があり、PR部門には1,488点がエントリー。2022年6月23日の夜に49作品の受賞が発表された。 今回は(おそらく)どこよりもはやく、Cannes Lion 2022 PR部門の中から、特に僕が面白いと感じた作品を、PRの6つのルールに沿

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          最近よく聞くキーワード「ナラティブ」についての理解が深まるナラティブ関連本おすすめ5選

          私ごとで恐縮だが、拙著『ナラティブ・カンパニー 企業を変革する「物語」の力』が世に出てちょうど1年が経った。 もちろんこの本だけの影響ではないけれど、この1年で、日本でも明らかに「ナラティブ」への関心が高まっていると肌で感じている。 実は「ナラティブ」はいろいろな分野にまたがる概念で、先行研究の長い歴史があり、その定義や解釈は多岐に渡る。いろいろな分野とは、例えば行動経済学や教育学、臨床心理の分野。カウンセリング、企業の人事領域もそうだ。物語学(ナラトロジー)という領域も

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          「PRパーソンじゃない人」も読んだ方がいい、戦争プロパガンダ本のおすすめ5選

          ロシアがウクライナに侵攻を始めてから1ヶ月半が経過した。1日も早い戦争の収束とウクライナの人々の安寧を願うばかりだ。 この侵攻が始まって以来、テレビでもネットでも毎日のようにロシアのプロパガンダに言及する発信を目にする。そう、戦争には戦争プロパガンダという領域がある。過去においても武力ではない情報戦の影響が戦争の勝敗に及ぶことがあった。 今は世界がSNSで簡単につながり、すぐに情報を発信したり受け取ることができる。一方、コロナ禍でのインフォデミック(不正確、あるいは誤った

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          PRパーソンが一度は読んだ方がいい、超個人的おすすめ本5選(実用書じゃないよ)

          日本の書店のPRや広報の棚に行くと、海外と比べてスキル習得を目的としたタイトルが多いな、といつも感じる。プレスリリースの書き方やメディアに売り込む方法——などなどの実用書が本当に多い。 もちろん、必要とされているから、とはわかってはいるけれども、個人的にはちょっと残念だなと思っている。なぜなら、いまだにPRが狭く解釈されている証拠だから。プレスリリースやメディアリレーションズといった手法はPRのほんの一部に過ぎない。 そういうわけで、先日Twitterで次のようにつぶやい

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          PR視点のブックレビュー:蛯谷敏著『レゴ 競争にも模範にも負けない世界一ブランドの育て方』

          7歳の我が娘はずっとレゴファン。幼い時は幼児用の「レゴデュプロ」に親しみ、今はもっぱらレゴを代表するシリーズとなった「レゴフレンズ」をネットフリックスで観てはブロックで遊んでいます。そして僕自身も子供の頃からのレゴファンであり、レゴはまさに僕たち親子の「共体験」なわけです。 さて、レゴと言えば、言わずと知れた世界一の玩具メーカーです。1916年にデンマークで創業し、現在は2万人を抱える非上場の一大グループですが、一方で同社は、幾度もの経営危機を乗り越えてきたことで知られてい

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          PR視点のブックレビュー:音部大輔著『マーケティングの技法』

          PR専門家としての僕の「原点」と言える仕事のひとつが、2000年代前半に手がけた「洗濯における除菌啓発」です。「洗濯物に菌が残っている」というセンセーショナルな内容は、SNSも存在しない時代に、テレビや新聞で集中的に報道されました。当時圧倒的な影響力を誇ったみのもんた氏が、「奥さんご存知でしたか?」と洗濯除菌の必要性を視聴者に問いかけたとき、日本全国の主婦の認識=パーセプションは変容するに至ったのです。そして言うまでもなく、この仕事のクライアントはその後15年に渡ってパートナ

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          PR視点のブックレビュー:デイヴィット・パトリカラコス著『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』

          「戦争は終わった」8月15日にアフガニスタンの首都カブールを制圧したタリバンは、そう宣言しました。この戦争のきっかけでもある20年前のアメリカ同時多発テロは、「対テロ戦争」という新たな戦争の概念を生み出しましたが、本書はまた異なる戦争の捉え方を主題に据えています。それが「ナラティブ戦争」です。 「ソーシャルメディアの登場で、戦争は新たな次元に突入した。強力な兵器を有するものが勝つ時代は終わり、『言葉』と『ナラティブ(語り)』で戦う時代が到来した」それが本書の主張です。こう聞

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          PR視点のブックレビュー:鹿毛康司著『「心」がわかるとモノが売れる』

          2011年3月。東日本大震災の直後、僕のもとには次々に大企業からの相談が舞い込みました。『戦略PR』が注目されて間もなかった僕への相談が何だったかというと、「テレビCMが当面打てないから、代わりにPRでなんとかならないだろうか?」というもの(いくつかは丁重にお断りし、いくつかは可能な範囲でサポートさせていただいた)。テレビをつければ、画面は震災報道とACの公共広告ばかり。そんな中、鹿毛さんがつくったミゲル少年が歌う「消臭力」のCMは、日本中に強烈なインパクトを与えました。

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