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PR視点のブックレビュー:蛯谷敏著『レゴ 競争にも模範にも負けない世界一ブランドの育て方』

7歳の我が娘はずっとレゴファン。幼い時は幼児用の「レゴデュプロ」に親しみ、今はもっぱらレゴを代表するシリーズとなった「レゴフレンズ」をネットフリックスで観てはブロックで遊んでいます。そして僕自身も子供の頃からのレゴファンであり、レゴはまさに僕たち親子の「共体験」なわけです。

さて、レゴと言えば、言わずと知れた世界一の玩具メーカーです。1916年にデンマークで創業し、現在は2万人を抱える非上場の一大グループですが、一方で同社は、幾度もの経営危機を乗り越えてきたことで知られています。本書ではその軌跡が、代々のリーダーによる経営の舵取り、新たな事業への挑戦とブランド育成などの観点から、実に綿密に語られます。

レゴのパーパスは「ひらめきを与え、未来のビルダーを育む」。かつて最大の経営危機を迎えたとき、レゴはこの創業の想いに立ち戻り再建を果たしました。現CEOのニール・クリスチャンセンは、2017年の就任からPRやSNSで同社のパーパスを社内外に積極的に発信しています。それが社内の改革にもつながり、また事業を通じて顧客やビジネスパートナーとどのような物語を紡ぐべきかーーまさにレゴならではのナラティブ実践にもつながったのです。ナラティブの起点はパーパスであり、パーパスの具現化がナラティブ。この点において、レゴは素晴らしいナラティブカンパニーだと言えるでしょう。

例えばオグルヴィが手がけた、この素晴らしいクリエイティブも、レゴのパーパスとナラティブを見事に(コピーやタグラインを一切使わずに!)表現しています。CEOの言葉、企業としての発信、広告クリエイティブーーこうしたすべてが、社会的な存在意義をベースに統一される。これが、これからの企業の目指すべき情報発信のあり方ではないでしょうか。

ちなみに、個人的に本書の中で印象に残ったのは、現在レゴグループ会長を務めるクヌッドストープ氏の「鉄板のプレゼンテーション」。黄色4種類、赤2種類の形の異なるたった6個のレゴブロックを聴衆全員に渡し、60秒間で「アヒル」を作ってもらうというもの。「はい終了!」の声で組み立てに熱中していた聴衆が周りを見渡すと、ひとつとして同じ形のアヒルはない。そこでクヌッドストープ氏は笑顔でこう言います。「アヒルに見えないアヒルもいるかもしれませんが、どれも立派なアヒルです。それだけ、人は多様で豊富なアイデアを持っているのです」。ちょっとグッときませんか? オススメです。

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