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PR視点のブックレビュー:池田紀行著『売上の地図』

トライバルメディア池田さんの、久しぶりとなる渾身の著。池田さんとは個人的にもずいぶんと長いお付き合いですが、1年前に拙者『ナラティブカンパニー』刊行をテーマに鎌倉のご自宅で対談した際に、「実は新刊の構想があって、”売上の地図”というコンセプトなんですよ」とおっしゃってたのを思い出す(その時の対談はこれです。前編と後編あります)。

さて、そういうわけで、本書のコンセプトは明確明瞭この上ない。『地球の歩き方』といえば、多かれ少なかれバックパッカーに憧れて世界を旅した僕たち世代にはお馴染みのシリーズだけれど、本書はまさにマーケティングという世界を旅するための「歩き方」を指南しれくれる書なのだ。売上に影響を与える20個の説明変数を構造化し「売上の地図」として提示してくれる。さらには、それぞれの領域でさらに理解を深めたい読者には専門書まで紹介してくれる(拙著『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』『ナラティブカンパニー』も紹介ありがとうございます)。

思えば、マーケティングの領域も、複雑かつ相互関係が掴みにくい世界になった。「なんとかマーケティング」という書籍や講座が氾濫したのちに、本書のようなニーズが発露するのは頷けるというものだ。僕自身も、昨年刊行した『ナラティブカンパニー』の「はじめに」にこう書いた。

一方で、近年注目されるキーワードの「相関関係」を体系的に整理する必要も感じていた。ナラティブ、パーパス、パーセプション、デジタルトランスフォーメーション、オーセンティシティ、SDGs―「横文字の、それらしいバズワードには惑わされないぞ」と警戒する気持ちもわかる。もちろん過去には、単なるバズワードとして消費され消えていった概念もあった。しかし僕は、少なくともこれらの言葉や概念には注目される必然的な「意味」があると思っている。問題は、それぞれが単発的に解説されていることだ。個別の街の存在は知っていても、それぞれの街のつながり― どこが発着駅でどこが終着駅なのか―を知らずに旅はできない。

ナラティブカンパニー 企業を変革する「物語」の力(本田哲也著)

マーケティングや広告、広報PRの仕事は、いわば「終わりのない旅」のようなのものだ。予測できなくて大変な事も多いが、次の目的地に想いを馳せると、いても立ってもいられなくなる。だからといって、闇雲に歩いたり、行き先もわからない列車に飛び乗ったり、怪しい水先案内人についていったりはしないだろう(たまにはそれもいいけれど)。

遠くの彼の地にロマンを馳せながらも、時折立ち止まっては、目の前のコンパスや地図をじっくりと吟味する。そしてまた歩き出す。マーケターや広報PRパーソンは、そのような「旅人」でありたい。オススメです!

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