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ディズニーシーロゴ標本③【S.E.A.】

東京ディズニーシーのロゴマークの使用例を採集する。第三回は「S.E.A.」。クリストファー・コロンブスやレオナルド・ダ・ヴィンチが名誉会員として名を連ねる秘密結社「探検家・冒険家学会」である。
16世紀の大航海時代から脈々と現代まで存続しており、メディテレーニアンハーバーの港のさまざまな場所で見られる彼らのロゴを見てみよう。

なお、前回は「ロストリバーデルタ」。

エクスプローラーズ・ランディング

フォートレス・エクスプロレーション

入り口上部(レリーフ①)
レリーフ②
レリーフ③
バナー①
バナー②
看板①
看板②
看板③
看板④
看板⑤(ルネサンス号)
ルネサンス号(船首)
ルネサンス号(船尾)
ペンデュラムタワー
エクスプローラーズ・ホール①
エクスプローラーズ・ホール②
大砲
パネル①
パネル②
ベンチ
トラッシュカン

S.E.A.のロゴは多岐に渡り、これは時代による違いと推察されている。
「冒険」「発見」「発明」「ロマンス」を表す四つのイラストが描かれた紋章から始まり、ベルトで止められた近年のもの、そして最もシンプルなSの中にEとAを含んだものに分かれている。
ちなみに、いちばんおもしろいS.E.A.ロゴはトラッシュカンだと個人的に思っているのだが、写真がなかったので次回の宿題としたい。

追記:
トラッシュカンの画像を追加。黒いラインの周囲にパープルの縁取りがされており、画質が悪いように見える。

リフレスコス

マゼランズ

入り口レリーフ
入り口看板
入り口扉
アーチ①
アーチ②
地球儀
会計バインダー
会計伝票

「マゼランズ」といえば本棚の先のいわゆる「隠し部屋」が有名だが、「アーミラリー・チェインバー」という部屋も存在する。
この部屋は、S.E.A.ロゴの中でもアーミラリー(「ロマンス」の象徴と言われる)のみをフィーチャーしており、この図象だけが単体でデザインされている。

アーミラリー・チェインバー

ソアリン:ファンタスティック・フライト

特別展バナー
常設展バナー
レリーフ①
レリーフ②
レリーフ③
ガイド
トラッシュカン

***

S.E.A.は「がめつい」のか?

以下のページをご覧いただきたい。

現在、S.E.A.という組織は、本家「ビッグサンダー・マウンテン」や本家「ジャングル・クルーズ」にすら登場するグローバルなものになっている。しかし、原作映画などは一切存在せず、組織の端緒は東京ディズニーシーのフォートレス・エクスプロレーションである。

それぞれの記事をよく覗いてみると、例えば「ビッグサンダー・マウンテン」については”In 2013 the queue line was reimaged introducing a S.E.A. link”「2013年、S.E.A.との関連性を持ち出すべく待機列が再創作された」とある。「ジャングル・クルーズ」の記事での記述は“In 2021……"となっている。
東京ディズニーシーがオープンしたのは2001年だが、2013年を境にS.E.A.に関するアトラクションが急拡大した。そして、かつて作られたアトラクションにS.E.A.の設定を「後付け」する形で登場しているのである。

これは正に「ソアリン:ファンタスティック・フライト」において、「ファンタスティック・フライト・ミュージアム」を経営する2代目館長のカメリア・ファルコの死後、S.E.A.が経営に加わったエピソードと縁がある。
このアトラクション内で提示された博物館の歴史を見ても、どこにもS.E.A.は存在しない。つまり、S.E.A.は後からこの博物館の経営に参入した。

博物館設立までの歩み

S.E.A.とはそういうがめつい組織なのだ……(?)

S.E.A.は貴方のすぐ近くにいる……

だが、これだけで話が終わってはいけないだろう。このことは、S.E.A.という組織の実態をよく表しているとも言えるのだ。
そもそも、エンリケ航海王子やマルコ・ポーロといった人物が横並びに崇拝され(しかも実際に会員として活動していたと解釈するゲストすらいる)、その下に秘密の学会が設立されたというストーリー自体が史実に対する「後付け設定」なのだから。

だが、S.E.A.のロゴマークとその大量発生が表すのはそれだけではない。

S.E.A.は16世紀のヨーロッパ世界で始まったが、次第に大富豪や探検家の集まるサロンのようなものになっていったとされている。先に紹介した「ソアリン:ファンタスティック・フライト」のカメリア・ファルコは1851年に女性初のS.E.A.会員として認められ、「タワー・オブ・テラー」のハリソン・ハイタワー三世もそのコレクションと冒険譚でS.E.A.に参加している。
S.E.A.は、ディズニーテーマパークが物語の舞台として繰り返し設定している19世紀〜20世紀においても活発に活動していた。16世紀以降のいかなる年代にも登場し、暗躍者として文明を推し進めてきたというのが、ディズニー流の解釈だ。

また、S.E.A.の名誉会員に選出されたのは、フェルディナンド・マゼランやクリストファー・コロンブスのような、いわゆるキリスト教世界の人物だけではなかった。イスラーム世界からイブン・バットゥータが、宗教よりも哲学が主流とされた古代ギリシア世界からプトレマイオスが、そして科学の世界からレオナルド・ダ・ヴィンチが登場している。
名誉会員陣のダイバーシティを反映するかのように、S.E.A.の理念を共有する者は世界中におり、本拠地を持っていた。そして、世界中を旅して網羅的かつ無作為に文化的遺産を蒐集していた。

こうしたことが、S.E.A.を「頻出語句」あるいは「ディズニーリゾート版MCU」としているのであろう。

現代の「ロゴマーク」はCorporate Identity=「企業の統一的な理念」を体現するという。
であるならば、S.E.A.が用いる「冒険」「発見」「発明」「ロマンス」の紋章は、その先駆けである。世界中に散らばったS.E.A.の紋章が、そこにある大航海時代の精神を証明しているのである。

この地から探険家たちは偉大なる発見を求めて航海へと旅立つ。
そしてやがて帰還したのちには、はるか遠い国の物語や驚くべき冒険の数々またすばらしい科学の進歩を語り伝えるであろう。

フォートレス・エクスプロレーション

おまけ

S.E.A.のロゴは、他の意匠と組み合わせて使用されることも多い。
これらは、S.E.A.ロゴの分布範囲にありながら、独立したマークとして存在しているものである。

カメラ・オブスキュラ(ホルスの目)
ルネサンス号
マゼランズ
ソアリン:ファンタスティック・フライト(ファルコ・ファミリー)
ソアリン:ファンタスティック・フライト(博物館のロゴ?)

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