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ディズニーシーロゴ標本②【ロストリバーデルタ】

東京ディズニーシーのロゴマークの使用例を採集する。第二回は、パーク奥に位置するロストリバーデルタ。1880年代のハリケーンでかつての古代文明が露わになった中央アメリカである。宝を求める考古学者や探検家、そして噂を耳にした数多くの観光客が入り混じり、ロゴマークを張り出して現代文明の存在を誇示している。

なお、第一回は「U.S.スチームシップカンパニー」。

ロストリバーアウトフィッター

ある探険家が、恋した女性のためにつくったお店。愛情がたっぷりつまったこのショップは、ロストリバーデルタを訪れる探険家や考古学者たちに長く愛されています。

【公式】ロストリバーアウトフィッター|東京ディズニーシー|東京ディズニーリゾート】
大看板
入り口上部看板
レジ上部看板
入り口広告(通常時)

看板の存在感が非常に際立つ。ロストリバーを描いたイラストは、中心部に半円形に挿入される場合と看板全体を彩るパターンがある。あるいは、設立年1917を掲げるものと、"para Exploradores, Mineros Y Cazadores"「探検家、鉱山労働者、猟師のため」と書かれたものとある。

建物入り口の看板とレジ上部の看板を比較すると、ほとんど同じ形。レジ上部のものは先代だろうか?

ミゲルズ・エルドラド・キャンティーナ

伝説の黄金郷(エルドラド)を探し求めてやってきた人々が集まるレストランです。オーナーのマイケル(スペイン語読みでミゲル)も、かつて一獲千金を夢見てこの地を訪れたひとりでした。彼は宝の山を見つけることはできなかったけれど、仲間たちの安らぎの場をつくることで見事に成功をおさめたのです。

【公式】ミゲルズ・エルドラド・キャンティーナ|東京ディズニーシー|東京ディズニーリゾート
建物外壁
入り口上部看板①(川上)
入り口上部看板②(川下)
レジ
レジ上部
トレー

「ミゲルズ・エルドラド・キャンティーナ」のロゴ展開の魅力は、その圧倒的バリエーションである。
こうして並べてみると、ピラミッドのアートがある/ない、"MIGUEL'S"「ミゲルズ」のリボンが下に折れる/上に折れる、“EL DORADO"「エルドラド」の文字が反っている/いない、"CANTINA"「キャンティーナ」の文字に影がある/ない、そして文字全体がステンシルになっている/いない、と、少なくともこうした差異がある。
「ミゲルズ・エルドラド・キャンティーナ」のロゴはこれらのひとつひとつの小さな際の組み合わせで作られており、したがって、総体としては統一感がある。

ユカタン・ベースキャンプ・グリル

ここの食事はとても美味しくて、ロストリバーデルタにひそむ古代文明の謎を解き明かそうとする調査目的の考古学者たちと同じくらい食事目的の人が多いので、遊び心のある考古学者たちがベースキャンプの名を「ユカタン・ベースキャンプ・グリル」と変えてしまったそうです。

【公式】ワイルドな腹ペコたちが集まるレストランといえば?|東京ディズニーリゾート・ブログ | 東京ディズニーリゾート
大看板
入り口看板
メニュー看板
出口看板
トレー

ストーリーの都合上、“ANDREWS UNIVERSITY”「アンドリュー大学」に被る形で「グリル」のペイントや看板が入る。
“遊び心のある考古学者たち”は、キャンプ中を駆け回ってこれらを設置したのだろうか?

エクスペディション・フォトアーカイヴ

ここは、発掘調査隊が撮影した現場記録写真の保管室。現在も記録写真を取り扱っているのですが、そこに写っているのはクリスタルスカルの魔宮に挑む探険家たちの勇猛果敢な(恐怖の?)姿です。

【公式】エクスペディション・フォトアーカイヴ|東京ディズニーシー|東京ディズニーリゾート
「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」内看板①(神殿外)
「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」内看板②(神殿内)
「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」内看板③(出口)
看板
サイン看板

「ユカタン・ベースキャンプ・グリル」入り口と同様のフォントが使用され、統一されている。

トロピック・アルズ

バナー、メニュー
立て看板

かつて、ここにはトロピック・アルと呼ばれるおしゃべりなトゥーカン(オオハシ)が住んでいました。アルは人知れずどこかへ飛んでいってしまいましたが、アルがよく止まっていた木の下にフードワゴンができると、彼を懐かしんだ人々はいつしかこのお店を「トロピック・アルズ」と呼ぶようになったのです。現地の人々も大好きなジャングルのスナックで、パワフルなアルの元気をもらいましょう!

【公式】トロピック・アルズ|東京ディズニーシー|東京ディズニーリゾート

突然出てきたフードワゴンのくせに、しっかりロゴがある。しかもけっこう描き込まれている。すごくね?

ハンガーステージ

かつてこの地域で物資を運んでいたパイロットたちは、ピラニアを恐れもしない勇敢な自分たちのことを、「ピラニア航空」と呼んでいたそうですよ。

【公式】パークの中を散歩して、自分だけの「見つけた」をコレクションしよう!|東京ディズニーリゾート・ブログ | 東京ディズニーリゾート
建物上部
建物入り口
演目看板(休演時)
インディ・ジョーンズ博士の飛行機
工事用パーテーション

失われた河でかつて活躍した航空会社(?)のロゴマークは、エリア内の至る所で見ることができる。
密林の遠隔地であるロストリバーデルタにとって、飛行は一大テーマだ。

密林で暮らす術

ロストリバーデルタの根幹にあるのはやはりその手作り感であると思う。思わないですか、思ってくださいよ。
そう思うと色々なものが見えてくる。

まず、「木々の生い茂るジャングルの中、一世一代の大冒険……」というテーマでは、既にアドベンチャーランドがある。ところが、ロストリバーデルタとアドベンチャーランドは、やはり全く別の世界だということになる。
それは、「ロストリバーデルタ」が他でもない地名であり、それぞれの看板やロゴはそこにあるコミュニティの人々へ向けられているからだ。言い換えれば、「ロゴの存在自体がストーリー上のものである」ということだ。

アドベンチャーランドでは、それぞれの細部にどのようにフィットさせるかというところに問題があり、故にそれらは「統一感」はあるけれども「統一され」てはいない。「ロゴマーク」ではあるが、それはあくまで「目印」なのだ。

建物側面
大看板
建物入口
アトラクションポスター

「カリブの海賊」の例を見れば、ポスターと入り口の看板ロゴが一致するのは2007年のリニューアル後であり、これは映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズからの逆輸入だ。
東京ディズニーランドの知名度が向上し、次第に「テーマパークの施設としてロゴマークを設定する」必要性が出てくる。
しかし、やはりこれと、コミュニティに向けて作られたストーリー上のロゴマークは違う。“Pirates of the Caribbean”「カリブの海賊」はどこまでいってもアトラクション名であって、ストーリー上の名称ではないからだ。

一方、ロストリバーデルタの看板たちは(東京ディズニーシーの全域においてそうであるように)、施設名称のサインとストーリー上のロゴマークを一体化したものである。
しかし、その区分で見ても尚、前回のテーマ「U.S.スチームシップ・カンパニー」と全くもって対照的だ。
ニューヨークの大都市では、金太郎飴のように同じロゴを印刷し、印刷し、印刷して、各所に設置して縄張りを示していた。
対してロストリバーデルタの各々のロゴは、「デザイン自体は統一されているけれどもバージョンが違う」ということで表される。
ある意味での「手作り感」であり、個体差でもある。

この「手作り感」というのはロストリバーデルタの店舗やレストランのスタイルの一つになっているのだろう。
「ミゲルズ」は店主の名前を冠した店名であるが、「アルズ」はその付近で親しまれていた鳥の名称である。
「ユカタン・ベースキャンプ」に「グリル」と付け足してレストランにしたように、"EXPEDITION PHOTO ARCHIVES"の下に"SOUVENIR PHOTO"と足されたり、“EXPEDITION USE ONLY”「探索目的に限る」を書き換えて“EXPEDITION EATS”「エクスペディション・イーツ」という店名に変えられたりしている。

「エクスペディション・イーツ」側面
「エクスペディション・イーツ」全体

一攫千金を求めてジャングルにやってきた人々の苦心を感じ取ることができる。
ロストリバーデルタを形作っているのは遺跡や神殿だけではない。そこで夢とビジネスを追い求める人々の営みが、そこに人の住んでいることを発信しているのである。

更新履歴

2023/01/12
*一部ロゴの写真を差し替えました
*以下の施設を追加しました
「エクスペディション・フォトアーカイヴ」「ハンガーステージ」
*以下のロゴを追加しました
「メニュー看板」「出口看板」

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