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たまこんぶのエッセイ

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ワーママの日常で感じた喜怒哀楽をエッセイにした記事をまとめています。たまに思い出話もします。
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#子供のいる生活

母乳をやめた話

母乳をやめた話

疲れている、という実感はなかった。母乳か、ミルクか。できることなら母乳で育てたいと思っていた。母乳は母親の免疫を渡すことができるし、哺乳瓶の消毒の手間もないし、子供とのスキンシップで愛情形成もできるという。母乳はミルクより良いものだという神話が知らず知らずに頭に刷り込まれ、ついには「母乳で育てられないのは子供が可哀想だ」と謎の考えに支配されていた。

しかし息子が生まれて1ヶ月の頃、私は息子に搾乳

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一歳児が車のオーナーになった話

一歳児が車のオーナーになった話

「お土産買ってきたわよ」

と義母が我が家に着くなり言った。ばあばが大好きな1歳9ヶ月の息子は、ばあばの膝にちょこなんと乗っかり、鞄から出てくる手のひらサイズの小さな箱に目を見張った。SUBARUのフォレスターである。非売品のキャンペーン商品だ。悪路走行を演出する紙製の坂道コースまでついている。箱には「登る!止まる!」と誇らしげに書いてあった。

「チョロQですか、ありがとうございます」と義母にお

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保育園で忍者になり、息子を見守った話

保育園で忍者になり、息子を見守った話

「息子さんに気がつかれないようにしてください」

ある朝、変装用のバンダナとエプロン、マスクを手渡され、そう言われた。息子の保育参観である。いつもの自然に遊ぶ様子を見て欲しいとのことで、スタッフに化けて息子を見守ることになったのだが、決して本人にママと気が付かれない事がミッションのクリア条件だった。途中でバレてはいけない。まるで忍者だ。

祖母が伊賀忍者の末裔で、わずかだが自分にも伊賀忍者の血が流

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子供の発熱、母としての働き方

子供の発熱、母としての働き方

ゴトリ、と鈍い音がして夜中に目が覚めた。息子が布団からはみ出して、フローリングに頭を打ちつけた音だった。我が家は7畳のフローリングの部屋に直にマットレスを敷いて巣作りをしているのだが、寝相があまりにもひどく、縦横無尽にゴロつき回る息子はしょっちゅう場外に落っこちている。その度に起きて、ふかふかのお布団に乗っけてやるのが親の役目だ。頭を打っているくせに、スヤスヤと平和に眠っている。大した衝撃ではない

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