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【感想文】肉体の悪魔/ラディゲ

『恋愛ゼミ夏季集中講義 ~傾向と対策~』

「恋愛駆け込み寺」と呼ばれてはや六十年。
そんな我が寺に駆け込んだ恋の受難者を通算すると、九千八百六十五万三千九百七十二名が駆け込んだ。というわけで今回は集中講義と題し、恋に悩める者に向けて愚僧が悲願成就の秘訣を指南する。なお、本講義で用いるテキストは新潮文庫版『肉体の悪魔』である。

▼ 恋愛ゼミ夏季集中講義 ~傾向と対策~

【その①】本能はわれわれの案内人だ。しかもわれわれを破滅に導く案内人だ/P.106
解説:
本能の赴くままに欲する態度は猿の所業であり、その所産に幸福なる恋愛など無い。遥か昔の春秋時代、子貢(しこう)に「人はどう生きるべきか」と尋ねられた孔子、答えて曰く「それ恕(じょ)か」と。つまり、相手への思いやりが肝心であり、それは本能ではなく理性によってのみ実現できる。これは何も恋愛に限らず、この世界における様々な事柄は哲学的観照なる態度、即ち理性を要することでより豊かな認識が生ずるのであって、それすら知らぬままに恣意的態度で相手と接する者は一過性の桃色遊戯に堕ちるのが関の山、これを転じて「ヤリマン」と称する。

【その②】(マルトが)黙っているのはもう僕を愛していないからだろうと、(僕は)彼女を責めるのだった/P.103
解説:
被害妄想は得てして幼稚なものだ。だってそうだろう、自分が一人で勝手に妄想しただけで、相手にしてみればどうして責められているのか伝わらないのだから。こうしたはた迷惑な男に成り下がるのではなく、ここはあえて堂々たる態度で相手と接するべきだ。

【その③】愛する人が、われわれの加わっていない饗宴の席に、大勢の人に取り囲まれて連なっているのは耐え難いことである/P.157
解説:
これはダサいね。男の嫉妬ってのはねー、同性から見てもダサいんですよ。これも前述②と同様、器の小ささが見え透いており、もっと堂々としとけばいい。<<耐え難いことである>> ではなく、男なら耐えろとコイツに言ってやりたい。

【その④】どんな恋愛にも、青年期、壮年期、老年期がある/P.95
解説:
様々な試練を耐え抜いた後にその恋愛は激動の青年期を終え、そして壮年期を迎える。だから、そろそろプロポーズすればいい。そういえば昔、スシローでプロポーズしてる男性を目撃したことがあるけどあれはどういうことなんだろう。「君との人生を現世だけでなく来世も、また来世も、そのまた来世も巡り巡って何周も過ごしたい、この回転寿司のレーンのように」という意図が込められているんだろうか。

【その⑤】蜜蜂が蜜を漁ってその巣を豊かにするように、恋する男は、道を歩いて感ずるあらゆる欲望で恋愛を豊かにするものだ/P.120
解説:
恋愛中は何もかもが楽しいぜー!ってことでしょう。これはまあよくある話ですよね。

【その⑥】恋愛はその幸福をひとにも分たせたがるものである/P.94
解説:
私の知人は高校時代、田園の広がる畦道あぜみちでファーストキスをしたそうだ。俺の学生時代にそんな出来事は1ミリも無かった。

【その⑦】精神的な類似が外貌にまで及ぶことがある/P.101
解説:
え、そんなことってあるの。ペットと飼い主の顔が似てくるのと同じ理屈ってことか。

【その⑧】恋はわれわれに、相手の女性を、おそらく平凡ではあろうが至極穏やかな運命から引き抜く権利を果たして与えるものであろうか/P.141
解説:
え、なんだこれ。全然わからん。だってそうじゃん、僕には恋愛経験が全く無いのだから。

といったことを考えながら、この感想文を姉に見せたところ姉は軽蔑の眼差しを向け、その隣で母は静かに泣いていた。

以上

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