自衛官から慶応生になって人生変えたときの物話─はじめに─
あらすじ
私が慶応義塾大学に入学したのは、自衛隊を退官した半年後のことでした。いまから9年前のことです。
高校卒業後、私は航空自衛隊に入隊しました。自衛隊は子どもの頃からの憧れでした。小学生と中学生のとき、地元でそれぞれ大きな地震があり、自衛隊の活躍を目の当たりにしたのがきっかけです。危険を顧みず誰かを助ける姿は、素直にカッコよかったです。
そして入隊後は、日々の訓練に邁進しました。心身ともに過酷な毎日でしたが、憧れて入った分、自然と耐えることができました。
そんななか、のちほど詳しくお話するように、ゆくゆくは大学に進学したいという志がふつふつと湧いてきました。そこで、日頃の自由時間をフル活用し、訓練の傍らで受験勉強をすることにしたのです。当時のルーティーンといえば、こんな感じでした。
自衛隊の生活自体は自分のしょうに合っていたので、名残惜しい気持ちもありました。しかし、勉強に専念するため、入隊2年目の夏に退官。その後、受験までの半年間は地元に戻って浪人生活を送りました。そして翌春、第一志望だった慶応義塾大学法学部に合格、入学することができたのです。
これが、自衛隊入隊から大学進学に至るまでの2年間のあらましです。次回以降、当時の記憶をたどりながら、この2年間のことを具体的に書いていこうと思います。
誰にも話してこなかった当時のこと
実のところ、この2年間の出来事について、詳しいことは今日に至るまでほとんど誰にも打ち明けていません。たしかに、比較的珍しい経歴ではあるため、自衛隊入隊から大学進学までのいきさつについて、興味を抱いてくれる方は多かったです。しかしそれでもなお、誰かに多くを語ることはしてきませんでした。それには理由があります。
ひとつは、自衛隊と受験勉強との「二刀流」の生活が、あまりにも過酷な毎日であったため、誰かに訊かれるたびに思い出していてはとても心が持たないと思ったからです。このnoteを書いている今も、無意識のうちに心拍数が上がっているのが自分でも分かります。
できることなら、あの頃を頻繁に思い出したくはない──。そう思うほど、当時の日々は私の人生において大変な時代のひとつでした(もちろん、良かったこともたくさんあります。むしろそれを伝えたくて書くに至ったわけです)。
自衛隊での厳しい訓練生活。その合間を縫う受験勉強。退職後の孤独な浪人時代。さまざまな記憶が未だに脳裏にこべりついています。また記憶だけでなく、いろいろな感覚もまた、つい昨日のことのように蘇ってきます。
改めて、このときの経験は大変なものでした。
そしてふたつめの理由は、当時のことを武勇伝的に語ることに対して私のなかで抵抗があったからです。たしかに、この2年間の出来事は、間違いなく私の人生のなかで、圧倒的な成功体験のひとつです。
ただ、のちほどお話していくように、この成功は決して私自身だけに依拠しているものではありません。この成功は、自衛隊の教えや仲間の支えに大きく依存しています。そのため、下手に喋って単なる自慢だと捉えられることにためらいがあったのです。
これらの理由から、今日までの9年間、このときの出来事を積極的に語ることはありませんでした。
それでも書こうと思った理由
しかしこの経験から私は、人生を生きるうえで大切なことをたくさん学び得たことも事実です。また明らかに、この2年間で私の人生は大きく好転しました。
私は高校時代、偏差値40ほどの高校で、クラス内の成績が下から数えて五本の指に入るほどの落ちこぼれでした。成績が悪すぎて、所属していたサッカー部を退部するほどです。
もしもそのまま漫然と生きていたら、慶応義塾大学への入学や今の私のキャリアになんて、まったく縁のない人生を送っていたことと思います。この2年間で、私の人生は変わりました。
そのため、長らく思い出のまま封印してきた当時の記憶ですが、このまま眠らせておくのはもったいないと思い、この度noteに綴ることにしました。
大それた人生哲学について私が言えることはありませんが、私が人生を変えたときのエッセンスについては、皆さんに共有できるのではないかと考えています。
これから、入隊から大学合格までの間の話を、数十回に分けて記していこうと思います。
読んでいただくまえに
これから綴っていく2年間は、長い人生において極めて異例な期間の話です。つまり、当事者である私でさえ、人生の全期間を通じてこうしたストイックな生活を送ることは心身ともにできっこありません。あらかじめ認識いただきたいのは、人生には頑張らなくていい期間もある、ということです。
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【note創作大賞2022一次選考通過作品】人生を変えた自衛隊生活と受験勉強の二刀流──。限られた時間、過酷な生活、さまざまな葛藤のなかで…
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