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顧客限定アンケート

「新規事業の可能性を探るべくアンケートにご回答くださった皆様にインタビューしたんですが、全く想定と違う答えが返ってきて…」そんなメッセージを貰ったことが本日のnoteの始まりだ。ということで今回はアンケート設計のポイントについて書き進めていこうと思う。

背景

 その新規事業については公に出来ないのでラーメンに例えて話を進めていこう。まず最初に、そのアイデアは深夜に外に出掛けて家系ラーメンを食べ背徳感を味わう方々向けのものだ。深夜ラーメンの課題はいくつもある。冬場は寒くてやってられないとか。カロリーが高過ぎて肥満が心配とか。その中でも今回着目したのは「味」だ。

 日中に家系を食べるとなれば勢いで食べ尽くせるのだけれども、深夜は体力も落ちていて食欲も減退。全てを食べ尽くすのは中々に難しい。ということで「深夜の家系愛好家に向け、重い味を軽くする特製酢」という製品を手掛けることにした。けれどもあくまで思い付きの域を出ないので、深夜家系派の皆様にインタビューを実施しよう、という流れになったというわけだ。

アンケート設計

 けれどもここからのアンケート設計が少し惜しかった。何かというと想定している顧客を炙り出す設問設計に至ることが出来ていなかったのだ。

➀あなたは深夜にラーメンを食べますか?
Yes/No

②深夜のラーメンが重くて食べきれず、
悔しい思いをしたことはありますか?
Yes/No

③…

深夜ラーメンアンケート

 このアンケートを作成された方はこう考えた。家系だけじゃなくて、家の中でも深夜にインスタントラーメンを食している方々も同じ課題感を持っているんじゃないかと。もしかすると、自分の考案するお酢は深夜の家系だけじゃなく深夜のインスタントのトンコツにも応用できるんじゃないかと。

 しかしながら、この目論見は見事に外れた。アンケートで「Zoomでお話をしても良い」と答えてくださった方々に話を聞くと、「味変のためにキムチを投入している」「もっと刺激が欲しいのでラー油を準備している」といった答えが返ってきたのだ。もっともっとさっぱり食したい、もっともっと軽く楽しみたい、といった声は皆無。

想定外の回答者

 どうしてこんなことが起こったのか?深夜家系の皆様にお酢のニーズがなかったのだろうか?否、単純に深夜家系の皆様にアンケートでリーチすることが出来ていなかった、というだけだ。

 一番最初の設問で「あなたは深夜にラーメンを食べますか?」と尋ねたことが失敗だ。結果として自宅でインスタントラーメンを食べる方々、深夜にラーメンを食べるものの家系を食べない(もっとさっぱりした他のラーメンを楽しむ)方々が紛れ込んできてしまったのだ。

 自分たちの考えているアイデアを喉から手が出るほどに欲しいと思われる方々から生の声を拾おうと思ってアンケートを実施したにも関わらず、間口を広げてしまったが故にノイズが多々入り込んでよく分からない結果が返ってきている状況だ。

検証の進め方

 他のnoteで記載したけれども、ペルソナは一つだけに決め打ちしないことが重要だ。何故かというと一番最初の段階では自分たちの想定しているペルソナが合っているとは限らないことの方が多いからだ。今回の事例では深夜に外で家系ラーメンを食べられる方々ではなく、もしかすると自宅で深夜にトンコツラーメンを楽しむ方々が真の顧客の可能性もある。

 しかしながら、検証を進める際はペルソナをまず一つに定めることが重要だ。最初から複数のペルソナを同時に相手にすると、そもそも人によって抱えている課題が異なり、結果として自分の考案している解決策(製品やサービス)の妥当性が確かめられなくなる。

「○○という顧客の、××という課題を、△△という製品で解決できるのでは?」という仮説が立ってのであれば、まず○○という顧客を絞り込み検証を行う。もしそれで○○さんが××という課題を持っていなければ、◎◎さんは◇◇という課題を持っていないだろうか?と次の仮説を立て検証をする。同時に○○さんと◎◎さんを相手にしないところがポイントだ。

 もしかすると深夜に自宅でインスタントのトンコツを食べられる皆様は、より簡単に家系に味を近付けられる具材や調味料を求めているかもしれない。もしかすると深夜に外でさっぱりラーメンを食べられる皆様は、気が向いた時に濃厚な味付けに出来る背油などを求めているかもしれない。こんな風に人それぞれ課題が異なるからこそ、同時に話を聞いたとしても自分たちの考える製品やサービスが本当に刺さるか否かは確かめようがない、というわけだ。

一人から始めよう

 そろそろ纏めに入ろう。アイデアを作り上げた後は検証のフェーズだ。けれども検証は多くの人の声を集めることが重要ではない。大事なことは自分たちのアイデアに泣いて喜ぶ人を定め、その方々にお話を聞くことだ。もしそれで可能性がないと分かったのであれば仮説を練り直し、次のお客様をまた一人に定めて話を聞く。その繰り返しだ。最初から数多の属性の方々の話を聞いて混乱することのないよう、仮説検証がきちんと進められるよう、聞くべき相手を絞り込んでいこう。今回の記事がアイデアをカタチにされたい皆様の一助となりますように。

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