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盗まれても良いアイデア

 アイデアを思い付いた後、「盗まれるのではないか」と不安に感じて、ついつい秘密にしてしまうことがある。けれども、特にスタートアップや新規事業の初期段階では、アイデアを積極的に共有することで大きな進展が期待できるもの。というわけで今回は、「アイデアが盗まれたらどうしよう?」と心配している方に向け、安心できる三つの理由を伝えていこう。

 一つ目の安心理由は、思い付いたアイデアは完璧ではないからだ。本人としては「これはいいアイデアだ!画期的!」と思っても、それは既に他の誰かが考えていたり、過去に試されて失敗していたりすることがほとんど。だからこそ、アイデアは公開してフィードバックを受け取ることで、真に世に通じるものへと進化を遂げることができる。

例えば、「ミカンを発酵させてお酒を造ろう!SDGsに沿って青ミカンを使おう!」というアイデアを思い付いたとしても、残念ながら誰もが簡単に思い付くアイデアで、そこに価値は一切ない。そのアイデアで閉じずに人に話をすることで、「青ミカンじゃなくて熟した黄色いミカンの皮を発酵させたら?」といったフィードバックが届き、そこからアイデアは発展していく。

 二つ目の安心理由は、思い付いたアイデアそのものよりも、それをカタチにするための実行力こそが重要だからだ。アイデアをカタチにするためには、仲間を集め、顧客を見つけ、課題を確認し、試作品を作り、資金を調達し…といった無数のステップが待ち構える。そのアクションを全てやり切ることができるのは、アイデアに対して圧倒的な情熱を持つ当人だけであり、たとえアイデアを盗まれてもその想いや情熱はコピーされることはない。

「ミカンを発酵させてお酒を造る」というアイデアが仮に盗まれたとしても、そのアイデアに対して本気の情熱を持っている当人に匹敵する熱意を持ち、最後までやり遂げられる人は中々現れない。確かに儲かりそうだし、確かに地域に良さそうだけれども、どうして自分がそこまで死ぬ気で行動して成し遂げる必要があるのかと、他の人は躊躇してしまう。

 三つ目の安心理由は、他人のアイデアを盗もうとする人は滅多にいないからだ。多くの人は自分の仕事やプロジェクトに忙しく、他人のアイデアに時間を割く余裕を持っていない。例え起業を準備していたり、新規事業の開発に携わっていたとしても、他人のアイデアを盗んで着手することはリスクでしかなく、そこに踏み込む人は極めて稀だ。

「ミカン酒を作る」というアイデアが起業準備中の方や新規事業室の担当者の耳に届いたとしても、○○さんが準備を進めて地域で盛り上げている中で、同じアイデアで勝負するのは風評被害にもつながり、他の取り組みもできなくなり、○○さんにも顔向けできなくなる、とブレーキが働くもの。

 アイデアが盗まれるんじゃないかと心配し続ける必要は一切ない。あなたが思い付いたアイデアは完成しておらず、他者との共有によってこそ世に届けられるようになる。またアイデアは実行してこそ価値を持つものであり、それを担保する情熱は、考案したあなたにしか持てないもの。そしてそもそも、アイデアを盗むことにはリスクがあり、そこに踏み込んでくる人はほとんどいない。だからこそ、挑戦を始める際には、アイデアを共有、そして公開して進んでいこう。不安な皆様の一助となりますように。

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