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アビスパ福岡「来れない奴ら」の理由

アビスパ福岡の観客動員数が振るわない。

かつてはタダ券バラ撒きがあったとか無かったとかで、20,000人近く入る試合がありましたが、ここ最近は10,000人を超えるのもやっとの状態。

アビスパ史上最強の数年を過ごしているのにもかかわらず、この状況はさすがに寂しいです。なんでお客さんが増えないのかなぁと思いました。やっぱホークス至上主義なのかと。

そんなことを考えたとき、あるチャントが脳裏を過りました。

さあ声を出し飛び跳ねろアツい歌で。
来れない奴らのためにも、福岡勝たせようぜ。

来たくても来れないサポーター。予定が合わない、遠く離れた場所に住んでいるサポーター。そんな彼らの分も歌ってサポートしようというチャントです。

待てよ。時間や地理的理由で来れないサポーター以外にも、来れない理由があるんじゃないか?

例えば、お金とか、お金とか、お金とか。

そこで今回は、観客動員数と各地の平均年収を比べ、そこから見えてくるものがないか考えてみます。

1.順位と平均観客動員数について

ヴィッセル神戸は順位も収容率も優秀。

まずは順位との関係を見てみました。

J1初優勝となったヴィッセル神戸は、動員数は中位ですが収容率は約75%と非常に優秀でした。アビスパは横浜FCとともに10,000人未達です
スタジアム規模がそれぞれ異なるので、収容率に希望を委ねたいところですが、43.3%でワースト4位でした。

全体的な感想として、リーグ順位と平均観客動員数はあまり影響はなさそうで、浦和、FC東京、横浜Fマリノスは安定して30,000人程度の観客動員数を記録しています。成績が振るわない&スタジアム規模の小さい湘南や柏も収容率では60%以上を記録していることからも、「Jリーグサポーターの固定化」は想像より進んでいそうです。

2.各地の平均年収

首都東京を追随する、茨城の本気。

次にホームタウンの平均年収を見てみましょう。

1位は当然東京都です。それに続いて、茨城県鹿島市、神奈川県横浜市、愛知県名古屋市、神奈川県川崎市、大阪市…と首都圏→地方大都市という序列になっています。

福岡は14位で、地方都市の中では年収は低めです。驚いたのは広島市と札幌市。前者の要因はわかりませんが、北海道は札幌市以外の市町村が、農業や畜産のキーエリアになっているので、サポーターの平均年収はもう少し高くなるかなと思います。

それでは福岡市の皆さんが苦しい生活をしているのか。

そういうわけではありません。

福岡市の魅力は「物価の安さ」です。特に飲食代金は首都圏からすると破格ですね。だいたい首都圏より2割程度安い感覚がありますので、市内で生活する分には特段不便に感じることはないと思います。

各都市の可処分所得が把握できたので、さらに掘り進めます。

3.平均年収とチケット価格

ゴール裏・当日価格一覧(一部DP導入チームあり)

ゴール裏の当日券価格のランキングです。

驚きました。アビスパ福岡が首位です。

僕は先ほど言いました。福岡は物価が安くて済みやすいと。そんな中チケット代金は堂々の首位です。仮に2023年の17試合すべてに当日価格で参加した場合は、約65,000円となり年収に占めるチケット代金は1.82%です。

年収8位(実質5位)で、チケット最安値の湘南ベルマーレが1.12%ですので、おそらくこの差は金額以上に大きいと思われます。チケット代2位のサンフレッチェ広島も年収占拠率が高いですが、これまでのクラブ実績や新スタジアムなどのバリューを加味すると、体感は3,500円より安くなるでしょう。

絶対的・相対的、どちらにおいてもアビスパ福岡のチケットは高価であると言えることがわかってしまいました。そして同じような課題を、お隣のサガン鳥栖(チケ代4位、年収占拠率1.69%)も持っているのだろうということが想像できます。

この価格設定が良い、悪いというわけではありません。

アビスパ福岡に必要な観客収入を確保するためには、このくらい高価にしなければならないというのが現状だということです。単に「チケット高いよね」では済ましてはいけない状況なのかなと思います。

そしてサポーターの中にも、お金が理由でスタジアムに行けないひとがいるんだろうなと想像します。

私の両親がまさにそうです。現役時代はホームほぼ皆勤賞の母も、年金生活になった最近は1/3程度しか現地参戦していません。
経済的に困窮する家庭ではありませんが、バックスタンドで5,000円×2人を毎月2〜3回出すのはちょっと躊躇すると思います。アビスパ福岡以外にも、費やすものがあるのが当然で、それだけ足が遠のくというわけです。

根本的な原因は、九州圏内の年収が首都圏・関西と比べて安価であるという部分かなと思います。これは地方都市の永遠の課題ですし、一夜で解決することではありません。
企業誘致による経済発展を望んでも、企業の中には「福岡市は首都圏より安価だから」という理由で福岡に移転するものもいるでしょう。となると、労働力も当然現地の現状ベースで評価されますので、働く人間のお財布事情は結局変わらないのです。

またスポーツクラブである以上、選手という商品は「首都圏価格」であり、「世界価格」です。九州だから2割安いということはありませんし、年俸査定で九州プライスを提示しては、選手を留める事は困難になります。だれもが城後寿のような愛をもっているわけではないのですから

このことからも、九州以外で仕入れたもの(=選手)を九州で消費することは、非常に利益率の低いビジネスだと言えます。地理的デメリットの1つです。

4.将来を考える

サッカーはお金がかかる。
それはクラブ運営も、サポーターも同じです。

ではしがないサポーターの1人として、「どうすれば多くの人がチケットを買う(買える)ようになるか」を述べますチケットを安くする方法(誤解を招きそうなので修正しました。)

僕は、サポーターがお友達を1人ずつスタジアムに連れてきたり、SNSでアビスパ福岡の事を発信しスタジアムを満員にする活動は、当然めちゃくちゃ賛成です!僕もできるだけ携わりたいと思っています!

↓はもっと根本部分を変えるために必要なことを書いたものです。

①収益に占めるチケット収入の割合を減らすこと。

それはクラブが、チケット収益以外の収入源をしっかり得ることです。スポンサー収入や興行(試合)以外の収入を得られれば本望ですが、祈っても大きなスポンサーは来てくれないのが実情です(今シーズンもスポンサー獲得には苦戦しています)。
出資者にとって魅力を感じるチームになれば、当然お金は集まりますし、それだけクラブの資産価値は上がります。ではわかりやすいルートはというと。結局強くなることです。タイトル。目に見える評価をえることでチームの肩書を増やし、バリューを高める必要があります。
バリューを高めるというと俗っぽいですが、高めないとお金は流れてこないのです。

そしてもう1つは
②フットボールを福岡の文化にすることでしょう。

その土地に根付くということ考えると、福岡市=アビスパ福岡という常識がもう少し必要です。認知を増やして、街の景色になる事が必要です。表現はふさわしくないかもしれないけど、誰が来ても「アビスパの街」だと認知されることで、市民に一種の刷り込みを行えるのです。
この点、個人的には以前より格段に進歩していると思いますし、街を歩いていても「アビスパ福岡」の文字をみる機会は増えている気がします。②を地道に目指すことで①の実現に繋がるはずです。

チケットを手にしやすくする方法を考えること。それはチームを強くする方法を考えることに置き替えて良さそうです。

それを踏まえ、自分にできることは何かを考えてみます。できることと言えば試合に行くことだけではありません。お友達を誘ってみる以外にも、ダゾーンでの視聴、グッズ購入、AVISPATVなどのサブスクリプションの利用。どれも将来のどこかに繋がっているはずです。

小さいけど地道な愛情表現を続けましょう。

そしていつの日か「優勝したのにチケット据え置き5000円?安いやん!」と言える日が来てほしいし、福岡市民も「5000円なら出せるし、行ってみようかな」と思える豊な街になってほしいなと思います。

それぞれに、それぞれのアビスパ福岡があります。

それでいいのです。

来れない奴らだって、サポーターなのですから。

今来れない奴らが、いつの日か常に来れることを願ってます!


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