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【アライバル】緻密な絵に言葉の無い物語

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜グラフィックノベル〜

エドワード・ゴーリーや先日読んだ「HERE」など、グラフィックノベルが最近の小さなマイブームとなっている。

大人向けの絵本、マンガとも言えるグラフィックノベルというジャンルは、実際のところ明確にジャンル分けしようとするとかなり曖昧な立ち位置にある。
それだけに、個性的で独特な作品が多く、想像をめぐらせて様々な解釈が出来るのが面白い。

本作は、まさしく想像力を掻き立てる最たる作品で、文字が一切ない物語である。
漫画のように読むのか、はたまた、サイレント映画のように読み進めていくのか、様々な楽しみ方が出来、その世界観から色んな解釈が生まれるだろう。


〜人間であることを幸福に思う〜

まず目を引くのは、あまりにも緻密に書き込まれた絵の数々である。
見開き1ページに町の風景がいくつも描かれるのであるが、いずれの街も全く違う顔をもつのである。
そして、物語の世界観。どこかで見たことある町の風景と思いきや、次に主人公がたどり着くのは見たこともない風景の場所。基本的には人間が生活する世界なのだが、実在しない生き物がいくつも現れる。リアルとファンタジーが入り混じった味わい深い世界である。

そして、ストーリー。一般的には本作は「移民が別の国に行った時の戸惑いや混乱を表現している」と言われていることが多いのだが、あくまでそれはひとつの解釈にすぎない。
いろんな想像をして、自分だけの物語を作る楽しさもある。
そして、ラストには誰もが感動するに違いない。
僕は、ラストシーンで、人間に生まれたことに感謝をしたい気持ちになった

作者のショーン・タンは、グラフィックノベルの世界では注目されている作者らしい。彼の他の作品もぜひ読んでみたいと思った。

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