【隣人のあなた】行政や公権力による移民・難民差別を告発
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆
〜行政や公権力による外国人差別〜
壮絶な内容である。
本書が伝えるのは、入管や警察による外国人移民に対する差別や、杜撰でお粗末すぎる国の法整備の実態である。
タイトルにある「あなた」とは、日本に住む外国からの移民のことを指している。
2021年に名古屋の出入国在留管理局で収容中であったスリランカ女性のウィシュマさんが死亡した事件はまだ解決には至らずまだ記憶に新しい話であるが、ウクライナ人の難民を日本に受け入れる動きなどを見て、僕自身は日本の外国人移民に対する対応をそんなに問題視していなかった。しかし、本書で報告される入管や国の移民対応は「これが本当に事実なのか?」と疑いたくなるほど非人道的で残酷なのである。
あまりにも酷すぎて読むのも辛くなってくる内容だ。
〜「告発する側」の視点〜
国がここまで移民・難民に対して酷い仕打ちをしているのか。
本書を読めば、その衝撃的な内容に唖然とするに違いない。
非常に読み応えのある衝撃的な内容の一冊ではあるが、一方に振り切った内容の本や情報については、僕は常に注意するようにしている。ある意味、本書は「告発する側」からの視点で描かれているため、偏った内容である可能性は捨てきれない(在留カードの真偽判定ができるアプリに関する記述は、少し著者の思い込みが入っているようにも感じた)。
当然、この手の問題には「弁護する側」も存在する。もし、そちら側の著書があるようであればそちらも読んでみたいと思う。
もちろん、だからと言って、本書が著者の思い込みだとかフェイクだとか言うつもりはない。どちらにせよ、本書に書かれている事をそのまま鵜呑みにしてしまうのも危険な気がするのである。
〜日本人の中に潜む外国人差別意識〜
さて、本書の8〜9割は入管や警察による外国人差別や国による杜撰な法整備に関する告発なのであるが、残りの1割で著者は「日本人全体に外国人差別の意識がある」ことを示唆している。
移民・難民差別をすることに対して、国や政府だけに訴えても根本解決にはならない。
問題の根っこには国民感情、国民意識がある。
ヘイトスピーチなんかをやる人々は問題外だが、実は直接外国人と関わる人関わらない人に限らず、差別の意識は潜んでいるように思える。
誰もが、実際に肌感覚としてあるのではないだろうか。相手が外国人だというだけで横柄な態度をとる人や露骨に嫌な顔をする人に。
そして、自身にも、差別とまでは言わないまでも、外国人に対する偏見が大なり小なりあると思う。
外国人に対して偏見ゼロと自信を持って言える人は一体どれだけいるのだろう。
僕がこのnoteで差別に関する本を取り上げる度に「差別の意識を変えるのは不可能に近い」とよく書いている。実際に、人の内面はそう簡単には変わらないものだ。
しかし、これはあくまで僕の私見だが、陸続きに他の国が接していない島国という他国に比べ特殊な環境にいる日本人にとって、人種や外国人に対する差別意識というのは、ジェンダーや障害者などに対する差別と比べて、自覚しにくいのではないかと思っている。
少なくとも僕はこの本で「外国人に対してこんな偏見、たしかにあるかもしれない」と自覚が生まれた。
差別をしているかもしれない、と自覚するだけで、誤った行為をやめる人もいるだろう。そんな潜在的に無自覚な差別が多いのが日本人から外国人に対する差別であり、その余白は各人が自覚することで、ある程度埋められるものだ、と僕は思ってる。
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