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【インボイスにそなえる本】会社員にだって関係のあるインボイス制度

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

〜全くわからない人にとっては良い一冊〜

2023年10月から開始されるインボイス制度。

巷では「フリーランスや個人事業主が損をする制度」なんて言われており、僕もその程度の認識でほとんど制度のことを知らず、会社勤めの僕にはあまり関係ない話かと思ってスルーしていた。
そんなわけで、この本を手に取ったのもなんとなく「話題になってるしどんな制度か知っておこうか」ぐらいの気持ちで読んだのだが、意外や意外、会社員でもちゃんと知っておかなきゃいけない制度であることがよくわかった。制度が始まる前に、概要程度ではあるものの、勉強しておいて良かったと思った。

実は、今育休中であり、一年ほど会社に顔を出していない。育休に入る前は社内で話題にもなっていなかったが、もしかしたら、会社ではインボイス制度に備えて経理担当者がバタバタと準備をしているのかもしれない。


〜インボイス制度とは?〜

そもそも、インボイス制度とは、どういうものなのか?

インボイス制度は「消費者が支払った消費税」と「国に納められる消費税」をイコールにするために導入された制度である。
今までの消費税の仕組みでは、免税事業者(年間売上が1000万円以下の事業者)には、消費税を納める義務が無いので、免税事業者に支払われた消費税はそのまま免税事業者の利益となり、「消費者が支払った消費税」よりも「国に納められる消費税」の方が少なくなることがあったのである。

では、インボイス制度で何が変わるのか?
まず、インボイスとは「適格請求書」というもので、取引で使う請求書が変わる。そして、インボイスを発行するためには、税務署に登録してインボイス発行事業者となる必要がある。
今までの請求書を使うことも可能なのだが、インボイス以外の請求書では消費税を払っても、消費税として認められなくなる。
そして、これが何に影響するかというと、仕入れなどで支払った消費税があれば、その分は差し引いてOKというしくみ、いわゆる「仕入税額控除」に影響してくる。

例えば、今までであれば消費者が10000円分の品物を購入した場合、店に消費税10%の1000円を預ける(支払う)こととなる。店はその品物を仕入れ先から6000円で仕入れていた場合、仕入れ先に対して600円の消費税を支払っている。店としては、消費者から預かった消費税1000円のうち仕入れ時に支払った600円が仕入税額控除となり、それを差し引いて400円の消費税を税務署に納めれば良かった。
しかし、インボイス制度が始まると、もし仕入れ先がインボイス未登録事業者であれば、インボイスを発行できないため、税務署から仕入れ先に支払った600円が控除として認められず、600円分の負担が増える、ということになる。

さて、このような状況で店や企業はどのように考えるか。「インボイス登録をしていない人とは取引しない」と考えるだろう。
しかし、簡単に「じゃあインボイス登録した方が良いじゃん」というわけにはいかない。年間売り上げ1000万円以下の事業者はいままで免税されていたが、インボイス登録する事で消費税の納税義務が発生することになる。

つまり、消費税を納めていない事業者やフリーランスは、「取引を減らさないために納税する」か「取引が減る可能性があるが納税しない」かの2択を迫られる、ということになる。

これはたしかに、これまで免税事業者としてやってきた人たちにとっては大きな問題だろう。


〜会社員も他人事ではない〜

さて、僕は会社で働く人間なので、その目線でインボイス制度を考えてみる。

実際の経理については経理担当者が行うものではあるが、企業の中で、請求書を受け取る人、または請求書を発行する人はこの制度を特にキチンと確認しておかなければいけない。
当然、取引においては請求書のやりとりが発生するのだが、「取引相手がインボイス発行事業者かどうか」を制度開始までに確認しなければならない。取引相手がもともと課税事業者であった場合、未登録のままにするのはかなりのデメリットがあるので、よほどのことがない限りインボイス登録しているだろうが、取引相手が免税事業者でインボイスに登録する予定がない、ということであれば、対応を検討する必要が出てくる。
インボイス未登録事業者との取引が不利益になるからといって、仕入れ先に一方的に不当な交渉を持ちかけると、独占禁止法や下請法などに抵触する可能性もあるため、早めに対応を決める必要が出てくる。

また取引相手との問題だけではなく、意外な場面でも注意が必要となる。
打ち合わせでレストランやカフェを利用するときや、取引先に手土産を買う時にも、その店がインボイス発行可能事業者かどうかにより、控除が認められないケースも出てくる。
外回りの仕事の人はタクシーを使うことも多いと思われるが、他の公共交通機関と違い、タクシーはインボイス無しでの仕入税額控除が受けられない(3万円以下の公共交通機関の場合、インボイス無しで控除が受けられる)。個人タクシーの場合インボイス未登録事業者である可能性もあるため、タクシー利用には事前の確認が必要となる。

などなど、インボイス制度は全ての会社員に関わる制度であるわけだ。


本書はインボイス制度について図解入りでかなりやさしく解説してくれているので、僕のような「まあ、自分には関係ないか」なんて油断して不勉強だった人にはうってつけの一冊である。
全ての人が理解すべき制度であることを痛感した次第である。

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