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【いけない Ⅱ】(ネタバレあり)前作同様、ネタバレしたくなる面白さ

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜面白さの変わらない安定感"体験型ミステリー"〜

以前、読んでかなり面白かった道尾秀介さんの体験型ミステリー小説「いけない」の第二弾。

第二弾なので、続編というわけではない。
なので、このシリーズが気になる人は前作本作どちらから読んでも問題ないと思う。

短編4編からなるこの本。物語を一通り読んで、各編最後に写真が一枚あり、その写真から物語に隠された真実を推理する、という前作からのルールは変わらず。
前作同様、自分で物語を埋めていく快感・感覚は相変わらず面白い。

早くも第三弾を希望している僕である笑




以下、ネタバレ!!




〜(ここからネタバレ)〜

さて、前作「いけない」はSNS上でさまざまな推理が繰り広げられたことで話題になったそうだ。
誰もが本作を読めばその結論を誰かに話したくなるのは、読めばわかる笑

というわけで、僕もネタバレを書きたくなったので書くことにしようと思う。
(あくまで、僕の解釈なので、他の解釈等があればコメントいただけると嬉しいです)

〜明神の滝に祈ってはいけない(解釈)〜

本書ではこの話が1番面白かったと思う
この話は前作までや他の話と違い、最後だけではなく、冒頭にも写真が一枚ある。

読み進めて行くうちに、最初の写真は行方不明になった姉・緋里花かと思うのだが、実はこれは妹の桃花だった。
なぜなら、写真で組んでいる手を見ると指が9本しかないのだが、これは桃花が管理小屋の冷凍庫で大槻から隠れた際に中指の爪が剥がれたのだが、それを見られないために中指を隠したのだ。
しかし、この写真を撮った大槻に気づかれて、桃花は殺されて、死体を冷凍庫に入れられる。

大槻が冷凍庫に隠した死体は、自分の母親と桃花の死体だった。つまり、この物語は、殺された桃花と大槻、それぞれの章に一年の時間差がある物語だった、ということになる。

その証拠が、最後の写真。
写真に載っている"尻尾がちょろっと丸くなった"「干支だるま」は明らかに牛なのだが、桃花のパートでは「雪ネズミ」が出てくる。
子年の次は丑年なので、桃花の章は大槻の章の一年前の話、ということになる。

時系列に並べると、
緋里花行方不明→
桃花、緋里花の裏アカを見つけ捜索を開始→
桃花、大槻の隠していた死体(この時、冷凍庫の中にあったのは大槻の母親の死体のみ)→
大槻が冷凍庫に新たに桃花の死体を隠す→
隈島刑事が操作のために大槻の管理小屋を訪ねるようになる(この時、隈島刑事の言う「一年前に行方不明になった女子高生」とは、桃花のこと)→
大槻自殺

では、姉・緋里花はどうなったのか?
これは、最終章で明らかになる。


〜首なし男を助けてはいけない(解釈)〜

最後の写真、右側に吊るされているのは首吊り人形ではなく、上下をスウェットに着替えた伯父さん

伯父さんは、罪の意識に苛まれて自殺を図ったわけだが、なぜ自殺してしまったのか?

それは、最後の真との会話に理由がある。
真の「殺したの?」というセリフは、タキユウのことを聞いていたのだが、伯父さんは真の言葉から「中学生の頃に川で見殺しにした父」の事を言われていると勘違いしてしまった。
そして、見殺しにした父親の事について真に追求されたことにより、伯父さんは自殺してしまったのだ。

思えば、物語を通して真は引きこもりのようになった伯父さんを助けようとしていたのだが、それらが全て裏目に出てしまったような印象がある。
「首なし男=声を出さなくなった伯父さん」と解釈すると、皮肉なタイトルだなぁ、と感じるのは僕だけだろうか?

〜その映像を調べてはいけない(解釈)〜

千木夫妻は、殺してしまった息子を「息子が大好きだった花の下に埋めた」と語っており、物語の中で息子の好きな花はサザンカだとイミテーションされていた。
そして、隈島刑事たちも読者もサザンカが多く生息している夜目ケ山に、息子の死体が埋められている、と思ってしまう。

しかし、最後の写真で息子が好きだった花はサザンカではなくコスモスであった事が判明し、息子の死体は一輪のコスモスが置いてある座卓の下に埋められている、という事がわかる。

実は、個人的にはこの話だけ腑に落ちていなくて、一輪の花が置いてある座卓の下に息子の死体を埋めた、というのは、本文の最後の一文でなんとなくわかり、写真から何か新しい事が判明した、というのがあまり無かったのである。

何か見逃しているような気がするので、もし何か違う解釈があれば聞いてみたい。


〜祈りの声を繋いではいけない(解釈)〜

最後の写真は秀逸だと思う。

桃花の番号から着信(これは桃花と緋里花の両親がかけた電話)があったことで、緋里花のスマホの所在がわかり、その中身から緋里花の行方不明になった動向がわかる。また、千木夫妻の家が燃えた事で、おそらく千木夫妻の息子の死体も出てくる。
この一本の着信で全ての事件が世に明るみになる事が示唆されている。

前作も秀逸な結末だったが、今作も前作とはある意味真逆の結末で、非常に満足度の高い作品だったと思う。


以上、本作の僕なりの解釈。
何か見逃していたり、違う視点があったりするなら教えていただけると幸いだ。

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