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【Think CIVILITY(シンク・シビリディ】礼節ある美しい社会に向けて

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

礼儀正しさ。これが世の中では、人間関係の基礎となっているはずなのに、どうだろうか、みなさんの周りには、無礼な人が多いと感じないだろうか?僕個人の感覚では、家族、友人、同僚、上司、部下、先輩、後輩、店の客、すれ違うだけの人、そういった全ての出会う人のうち7割ぐらいは無礼な人だと思っている。

僕は、この本に何を期待したのか。それは、無礼な人をこてんぱんにしたり、無礼な人を更生させる術、もしくは無礼な人をうまくかわす方法、そんなものを期待して読み始めたのかもしれない。

もちろん、そういう内容も含まれてはいるが、本書はさらにそこから礼節のある環境を作るにはどうすれば良いか、というところまで書かれている。
礼節のある社会、その素晴らしさに気づき、かつ、その理想に向けて動くためのノウハウ。少し気合を入れて、そんな社会に向けて自ら動き出す価値はあるだろう。


〜礼節のない職場(自身の経験から)〜

僕の以前の職場は、まさしく礼節のない職場だった。係長が陰湿なイジメをする人で、毎年誰かが標的になり、標的になった人が職場を変えるとまた別の誰かに標的を変える、という事が繰り返されていた。僕も、標的となってしまい、その職場を出る原因となった。

その係長が気に入っていた職員が2人いたのだが、彼らはある意味安全圏にいるため、職場では傍若無人に振る舞っていた。遅刻をする、誰にも挨拶しない、やりたくない仕事を新人に丸投げする、自分のミスを人のせいにする、などなど。それを係長が黙認していた、いや、黙認どころか彼らと一緒になり悪行三昧だった。

係長含めその2人の職員は、たしかに能力や知識はあるが、礼節が無かった。仕事中に大声で他の職員の悪口を言う。他部署の職員に横柄な態度をとる。取引先の人に対しても、偉そうな口調で重箱の隅を突くような文句をいう。その3人の傍若無人さに、何もしていない僕個人もそこの所属だからという理由で他部署の人間から嫌われていた。

その職場は、毎日(その3人を除いて)覇気が無く、他部署からもその職場の暗さに気味悪がられていた。正直なところ、他部署からは「あそこの職員は(その3人だけでなく)全員バカだ」と思われていただろう。

まさしくこの本で書かれている「礼節がないがためにダメになる組織」の典型的な形だった。

3人のことについて、周りに相談しても「いや、でもあの人たち、仕事は出来るからなあ…」と、取り付く島も無かった。でも、この本を読んだ今なら自信を持って言える。「能力の有無よりも礼節の有無が、組織の仕事に優劣をつける」のだと。無礼な職員はいくら能力が高かろうと、会社にとってはマイナスなのだ。

〜無礼な人がもたらすコスト〜

本書の冒頭でまず引き込まれたのは、無礼な人を抱える事で会社にどのようなコストがかかるか、と言う事について書かれているところだ。


まずは、無礼な人がいる事で、同僚の健康を害することだ。
無礼な人が近くにいる事で、ストレスが溜まる事が原因だ。心の健康が害されると、休職者、離職者、はたまた自殺者を増やす。本書で紹介された調査において、心身の健康状態は仕事内容よりも人間関係に大きく影響する事がわかつている。

次にら無礼な人は会社に損害をもたらす。
仕事上の人間関係によるストレスによって、休職者だけでなく仕事にかける労力や時間、質を意図的に減らしている人が多くいる。アメリカの調査ではストレスが原因で毎年5500億日の就業日が失われている。また、無礼な人を避けるために1人が1年間に7週間を費やしている、という調査結果も出ている。無礼な人がいるだけで、これだけの労働力が無駄にされている。

さらには、無礼な人は周りの人の思考能力・認知能力を下げる。
実際に周りに対して無礼な態度をとる医者のいる病院では医療ミスが多い、という結果も出ているらしい。

と、無礼な人間がいる事で会社、または社会においてさまざまな悪影響を及ぼしている事を可視化している。ここの部分については、非常に読み応えがある。


〜あなたは本当に礼節のある人間か?〜

さて、この本の第1部まで読むと、いかに無礼な人間が損害を与え、逆に礼節のある人が得をするか、ということが理解できるだろう(この本の第1部まで読んで「いや、仕事に礼節なんて関係ないだろう」とか言う人は、申し訳ない、論外だ)。

礼節の重要性を知ったところで、著者は一度読書を立ち止まらせる。
第2部から「本当にあなたは礼節のある人間ですか?無意識に無礼をはたらいていることもありますよ」と、問いかけてくる。

自分は礼儀をわきまえた礼節ある人間だ、と思う人はほとんどかもしれない。しかしながら、無礼かどうかはあくまで「感じた側」の問題だ。第2部では、「礼節のある人間になる」ためのメソッドが書かれている。
そして、自分自身が自信を持って礼節ある人間になれたときに、第3部「礼節ある組織をつくる」ためのメソッドに移る。非常によく出来た構成である。


この本が理想とする「礼節ある社会」というのは非常に美しい。が、美しすぎる。しかし、その理想を叶える努力をする価値は大いにあるだろう、と僕は思う。

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