見出し画像

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』⑧ver.1:駐車場のヘリの意味とリーが伝えたかった真意を考察

確定申告の準備で忙しく、間が空いてしまいました。ごめんなさい

昨年は本当に何度も何度も車が壊れ
たこ焼きの売り上げより、移動販売車の修理代と維持費が上回る程で
おまけに、特殊な旧車なので。部品を探す手間と時間も膨大で
経費の計算(まだ途中)をしながら昨年の苦悩が蘇り、胸が苦しく・・・

今年は、昨年以上にキツイ年になりそうなので
いろんな意味で、持ち堪える事ができるのか。ちょっと心配ですが
新年早々悩んでも仕方がないので、気持ちを切り替え書きたいと思います!

では、前回はホテルでの場面で

ここから、主要登場人物が全て揃い。物語が動き始める

早朝、交差点の横断歩道手前で停まる戦車
道路の奥では一般車両が停められ、大渋滞が起き
この地域がテロによって交通規制が行われている事が解る
ビルの屋上では、兵士が これから始まるであろう、新たな戦闘への準備
一般人は、規制の影響で新たな交通手段となった自転車で目的地へ
それぞれの一日が始まろうとする
リーは 荷物をまとめ、ワシントンへ 向かう為、車へ乗り込もうとするが・・・

車内に居るジェシーに気付き、荷物を積み込む途中のジョエルを問い詰める
ジョエルの説明を聞くリー
後ろを振り返り、二人の様子を車内から気に掛けるジェシー
そして、状況を冷静に見守るサミー
しばらくして、リーとジョエルの会話が終わり、同乗を許した後
車内の二人の表情が少し緩む。そして、出発!

1分ちょっとの場面だけど。ジェシーの何気ない表情と仕草が
複雑な心境を本当にうまく表現していて、彼女の演技力の凄さが解る
是非、じっくり見て欲しい場面で
ジョエルが『let's go!』と声を発する時の、4人それぞれの表情 も秀逸で
キャリアも立場も違う4人
これから起こる出来事に対し、どういった反応(行動)をし、何を思うのか
一つの事象を、それぞそれの視点 から見せる事で
物語を多面的に捉える事ができ、誰の言動に共感するのか によっても
映画の楽しみ方、感想も変わってくる

画面は走行シーンに
軽快な音楽が流れ。歌詞と映像、時折リズムもシンクロ
途中、無数の放置された車輛が見えると
サミーはジェシーに『見落とすな』と一言

サミーは、このメンバーの中では一番キャリアがあり
彼の忠告というか助言はとても示唆的で、この映画のキーマンと言える存在
今後の彼の言動は最も注目するべき所で、その言動に対するそれぞれの反応も凄く重要

しばらく走り、検問のような場所に
恐らく、ここは電力関連の施設で。州兵が施設を厳重に警備(交通網やインフラ施設は重要な攻撃目標)していると思われ、警戒地域に入る事を意味し
逆に、車外にまで荷物を満載しこの地域から脱出する車輛とすれ違い
より緊迫した状況に向かっている事が伝わり
その状況に対して微妙に表情を変化させるジェシー
彼女はまだ戦場の怖さを知らず、この状況を楽しんでいるかのよう

4人を乗せた車はそのまま走り続け、車内での会話に移る
この場面は、大統領に どのような質問をするのか?という会話を続けながら
視聴者に対し、大統領がしてきた事を改めてお浚いする、という場面

映画では、複雑な状況や解りにくい人間関係、立場等を、物語を進めながら説明する事はなかなか難しく
割り切って、物語が始まる前にナレーションや文字を流し、淡々と説明する事もありますが
言葉や文字で状況を説明する事を極端に嫌い、そのような方法を用いる映画は駄作だと断言する評論家も多く
どのタイミングで、どのように状況説明(自己紹介)をするのか
そして、その事が説明的ではなく
物語(ストーリー)を止める事なく、ごく自然に違和感無くできるかが重要で
以前、CMの例えを用いて書きましたが

この映画は、登場人物がジャーナリストという事で上手く説明しています

では、本編へ

走行中、リーがガソリンスタンドを見つける
ジョエルは『まだ半分以上ある』と答え、ガソリンスタンドの状況も踏まえ
『どう思う?』と判断を委ね
サミーからの『給油のチャンスを逃すな』との 助言に従い 給油する事に

自分も、国内とはいえ日本全国をバイク旅した時
ガソリンスタンドを見つけたら極力寄るようにしていました
寄った時は営業時間を聞いたり、レシートは必ず保管
例え通り過ぎたとしても、何処で見たのかを記憶するようにしていて。ルートを戻る事も想定
余裕があれば、カードの使用が可能か、週末も営業していそうか等。本当に気を付けていました
タンクが小さく、満タンで約8リットルしか入らず
それでいて、荷物満載の総重量が400キロ近い車輛を走らせる訳で


一応、予備ボトルとシュポシュポを持参し
ガス欠になった事は一度もありませんが、油断は本当に禁物

判断に困った時や意見の分かれた時というのは、やはり年長者やキャリアの長い方の意見が重要


では(度々すいません)再び本編へ

車は給油場所に停止し、ジョエルとリーが車外へ
すると、銃を持った3人の中の1人がゆっくり近づき『何か用か?』と
ジョエルがガソリンを入れたいと話すも
”給油許可証”が無いという事で断られてしまう
そこで、リーが相場以上の金額とカナダドルでの支払いでどうかと交渉
相手は少し悩みつつも、承諾する

ここで、基軸通貨である”ドル”よりも
隣国である”カナダドル”の方が信頼されている事が判明
この世界でのアメリカは、想像以上に崩壊している事が解る

給油を始めようとする時、ジェシーはカメラを掛け車外へ
建物の奥へ向かい、その後を銃を持った男が追う
しばらくして、リーも心配そうにその後を

そこでジェシーが目にしたのは、洗車場に吊るされた血まみれの男性が二人
知り合いだが、略奪者という事でこの状況に
そして、これからどうするのか決めかねていて
ジェシーにその判断を任される事になる
動揺するジェシーと、銃を持ってはいるが、引き金に指を掛ける事は無く
最悪な状況になる可能性は低いと判断し、状況を好転させるべく
リーが男性に話し掛け、無事に切り抜ける
交渉術も含め、機転の早さも流石!

場面は切り替わり、再び走行中の車内へ

ジェシーは、若干興奮気味に心境を語り始める
その姿は幼く、少し滑稽に見え
逆に、リーの冷静な態度が二人の対比をより鮮明に
そして、リーから戦場カメラマンとして大事な事を告げられる

『自問自答はしない。質問もしない。記録に徹する
それが、報道の仕事』

恐らく、リーは過去に自問自答を繰り返し、悩み、苦しんだ
でも、結局明確な答えに辿り着かず
状況に介入せず、第三者として記録に徹する
それが、戦場カメラマンとしてやるべき事で
個人的な感想や思いよりも、その写真を見た人がどう思うのか
その事の方が重要で
答えは写した本人ではなく、見た人が決める事
そして、どのような答えを導くかは戦場カメラマン次第で
どの場面を、どの角度で、どのように切り撮り
どのように伝えるのか
それが、戦場カメラマンに求められている事

そのように自分は勝手に解釈
(ですが、リーがジェシーに伝えた言葉は自分にも言い聞かせているはず。ところが、最後は矛盾する行動に出てしまう訳ですが、ヘリの前での言葉に繋がります)

少しキツい言葉で説明するリーに対し
サミーとジョエルはジェシーを心配し、リーを宥めるように接するが
実は、リーが一番ジェシーの事を心配し
自分のような苦しみをジェシーには味わって欲しくない
繊細なジェシーの事を思えばこそ
あのような対応をしなくてはいけないはずで
その事を、サミーもジョエルも解ってはくれない。そこに若干の苛立ちを感じ
車内が険悪な雰囲気になってしまい、その雰囲気を察したのか
ジェシーから『リーが正しい・・・』と
そして、リーがジェシーの方を振り向いた時の表情が
何とも言えない、寂しさと優しさが入り混じったような
娘を諭すつもりが、予定外に傷付ける事になってしまった
そんな繊細な表情に思え
キルスティン・ダンストの表現力に改めて感嘆

車内という狭い空間の中で、映像的にも変化が少なく単調な場面ではあるが。逆に、それぞれの細かい表情や表現が解り易く、とても素晴らしい場面

画面は再び走行中の車輛

車内のラジオからは大統領の演説が流れ
車外の景色は、破壊された建物、炎上中の車輛、放置されたままの亡骸
破壊された軍用車(多分ハンヴィー)もそのまま放置

そして、突然リーが『停まって』と
車は JCPenney の駐車場で停止。リーはジェシーを連れ出し
駐車場に放置されたヘリの残骸の前に立ち『撮って』と
ジェシーは言われるがまま、ヘリを撮影

そして、リーはジェシーの持つカメラ ”Nikon FE2” の事を聞く
リーは、ここで二人の時間を作り
お互い写真家として会話をし。同時に、誤解も解いておきたいと

この場面も凄くいい
まず、何故リーはここでの撮影を勧めたのか
JCPenney といえば、チェーンストアの元祖ともいえるお店で
アメリカの代表的な老舗百貨店だった
”だった”というのは、2020年に連邦倒産法第11章の適用を申請し経営破綻したから
多くの日本人には馴染みが無いとは思いますが。個人的には凄く驚きました
何故かと言うと、チェーンストアについて学ぼうと渥美俊一さんの書籍を何冊か買ったのですが
その中で何度も名前が上がり、簡単な歴史も書かれ。何と、渥美さんは創業者の方と2回会い、とても貴重な会談をしその事も書いています
多くの経営者が手本とし、アメリカを代表する企業だったのが、経営破綻した訳ですからね
そんな経緯を知った上で、この映画で予期せぬ登場
映画の世界では、市民の日常を支える施設 として内戦までちゃんと営業し
その駐車場に、非日常的な軍用ヘリの残骸 が放置。日常が一瞬にして崩壊

この対照的な構図が、市街地で戦闘が行われているという、生々しさを表現する(伝える)には最適だとリーは感じ
その事をあえて言葉にはせず
ジェシーには、写真を撮りながら自分で気付いて貰いたい
そんな思いが、この行動に現れたんじゃないかと
そして、その思いは通じ

最初は、軍用ヘリに近付き過ぎ
ヘリそのモノを被写体として写してしまうが
周辺を歩き、構図を考える中。ふと足を止める

そこには、1台の壊れたショッピングカートが・・・
”日常と非日常” 
墜落したヘリの状態ではなく、今ここでおきている状況
奪われた日常と、普段の生活圏の中で戦闘が行われ
ヘリが放置されたままのこの状況こそ、まさにリーの伝えたかった事で

もしも、あなたが普段家族と買い物をしていたお店
イオンやららぽーと、ドン・キホーテやカインズ、バロー
その駐車場に、軍用ヘリが墜落
しかも、すぐ片付けられる事もなく
いつしか、それが当たり前の光景になっていたとしたら・・・

その事にジェシーも気付き、しばらくして自分の思いをリーに告げる

そして、今回の旅がどのような結果になろうと
それは自分が選択し、選んだ事で。自分の責任
戦場では悩んでいる時間は無い、自分の気持ちに正直に行動して欲しい
そんな思いも、リーは伝えたかったんだと思う
二人の写真家が、ぐっと距離を縮めた瞬間で
同時に、厳しさも共有した瞬間かと

あくまで個人的な推測ばかりですが、映画の楽しみ方も個人の自由なんで
自分はこんな事を思いましたって事です。

ココまで4600文字と、予定よりちょっと多くなってしまいましたので
今回はこの辺で一区切り
読みにくい文章を長々と読んでくれ、本当にありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!

たこハシロウ【日本で一番移動販売を愛する男】
社会的弱者、特に両親を亡くした子供達を支援できる仕組みを作ろうと頑張っています。 チップは専門書の購入や政府・自治体・企業への働き掛けの為の活動費にあてさせて貰います。あと、食品に使用される添加物や化学調味料等の安全性を検証する為、独自の検査をして公開できればとも考えています。

この記事が参加している募集