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【読書感想】島本理生『君が降る日』

2019/03/04 読了。

島本理生『君が降る日』

恋人・降一を事故で亡くした志保。その車を運転していたのは、降一の親友である五十嵐だった。 

「もとに戻って欲しいと何千、何万回も願うほんの一瞬の隙間に、意識が戻ったとしてもこの先どうなるのだろう、という不安が紛れ込んでくる」

この文章にやられてしまった。大切な人のそういう場面で、感情的な自分と現実的に考える自分がいるなあ、と。それを恋愛小説できちんと記述することって残酷だけど、好ましいなあと思った。

島本さんの小説って、私は絶望しか拾えていなくて、いつもどんよりと読み終わるんだけど、角田光代さんの文庫解説を読んで、島本さんの小説はとても希望を含んでいることを知った。角田さんの解説を読んで、目から鱗がボロボロと流れ落ち、島本さんの仕掛けた希望を読み取れるようになった。普通すぎて重要視していなかったけれど、確かにそれは生きることだ。

志保と五十嵐の間に流れる絶望は、同質ではあるけれど少し異なっていて、それは五十嵐の孤独が関係している。五十嵐の果てのない孤独を垣間見た時に、ものすごく怖くて、島本さんの書く恋愛小説は全然幸せじゃないから、好きだなと思った。

五十嵐は、本当に自分は居なくてよい存在だと思っている人だと思う。死にたいんではなくて、居なくていい。そう考えているであろう五十嵐が、事故の瞬間、自分を守ったことがこの小説で感じた私の一番の希望でした。

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