竹竿

Instagramで読書感想を書いていましたが、noteに移行することにしました。

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    最近の記事

    【読書感想】伊坂幸太郎『フーガはユーガ』

    2021/11/11、読了。 伊坂幸太郎『フーガはユーガ』 最後に感想を書いたのが、2020/07/23だから、1年以上ぶりにしっかりと本を読んだことになる。しかも、1年前と同じ伊坂幸太郎。私も原点回帰ってことなんでしょう。 優我という青年がファミレスで自分の生い立ちや双子の弟・風我との「入れ替わり」の話をしている所から始まる。 もしかして本当はひとりで超能力は嘘なんじゃないか、などと疑りながら読み始める。 「この人何かしら後で関わってきそう」とか「このアイテム思わ

      • 【読書感想】伊坂幸太郎『火星に住むつもりかい?』

        2020/07/23 読了。 伊坂幸太郎『火星に住むつもりかい?』 平和警察なる機関が、住人の監視と密告によって危険人物を見つけては捕らえ、拷問をし、衆人の目前でギロチン刑に処してしまう話。 気持ちのよい話ではなかった。  拷問シーンが結構リアルであることと、拷問をしている者もそれが職務であるため何の疑問も持っていないこと、これが絶妙に気持ち悪かった。 私は『ゴールデンスランバー』が大好きなのだが、『火星~』は好き勝手する組織に立ち向かえない構造になっているため、ス

        • 【読書感想】桜庭一樹『無花果とムーン』

          2020/07/14 読了。 桜庭一樹『無花果とムーン』 18歳の前嶋月夜は紫の瞳を持つ、もらわれっ子。 義理の父と2人の義兄と無花果町で平和に暮らしていたが、ある日、二番目の兄である前嶋奈落が死んでしまう。月夜の目の前で死んでしまった兄、奈落を月夜は幽霊として感じていくようになる、という長編。 高校生の頃、初めて経験した大切な人の死をどのように乗り越えたかもう忘れてしまった。だから、月夜の喪失感よりも月夜を支える側の人間に同調してしまい、どう月夜をこの世界に留めておけ

          • 【読書感想】嶽本野ばら『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』

            2020/07/10 読了。 嶽本野ばら『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』 中島哲也監督の映画版『下妻物語』が大好きで年に数回は観るんだけど、原作は初めて。自然と深田恭子と土屋アンナの声で再生されて、映画を観るみたいな読書だった。楽しかった。 2人の女の子の友情物語だけど、2人とも超個性的。特攻服に晒し巻いたヤンキーのイチコとロリータファッションとロココを愛する桃子。群れを大切にするヤンキーと孤高のロリータという対比がとても面白かった。 「こいつは、何時も一

            【読書感想】中村文則『あなたが消えた夜に』

            2020/07/01 読了。 中村文則『あなたが消えた夜に』 連続通り魔事件を追う所轄の刑事、中島。中島は殺害された死体を前にして思う。 「なぜ死体というのは、こんなにも存在感があるのだろう」 この言葉で、警察小説とは本質的に違うミステリ小説だという確信を得た。 中島は幼い頃に事件に巻き込まれており、それが時々フラッシュバックする。でも、精神は強い人間だから、それによって崩れていくことがない。言うなれば、中島の話は添え物だ。見方によっては光だ。 文学的ではあるがミ

            【読書感想】辻村深月『ふちなしのかがみ』

            2020/06/24 読了。 辻村深月『ふちなしのかがみ』 怪談系の短編が5つ。読み終わって今はホッとしてる。これで怖い夢見なくて済む。 小学校の鏡が怖かったのを思い出した。理科準備室のホルマリン漬けも怖かった。音楽室の肖像画も怖かった。小学校には怖いものがたくさんあった。 中学にあがると、”モノ”より”ヒト”の方が遥かに怖いと気付き、恐怖を感じる対象が変わっていった。  『ふちなしのかがみ』に収録されている、5つの話のうち4つのお話は人が死ぬ。割と軽やかに人が死ぬ

            【読書感想】奥田亜希子『ファミリー・レス』

            2020/06/20 読了。 奥田亜希子『ファミリー・レス』 6つの短編からなる連作短編集。姉妹、夫婦、父と娘など、すべて家族に関係するお話。 奥田亜希子作品は初めてだった。噂にはちらほら聞いていたけど、すごかった。 まず、情報の出し方がめちゃくちゃ巧い。懇切丁寧な説明はないないけど、ちゃんと読み解けるよう最低限の情報を入れてある。読解とはこういうことか、と楽しくて楽しくてたまらんかった。 6つのお話は、読んだ後よくない夢をみるほどにとてもよかった。 私が特に好き

            【読書感想】貫井徳郎『新月譚』

            2020/06/13 読了。 貫井徳郎『新月譚』 9年前に突然、絶筆宣言をしたベストセラー作家・咲良怜花。怜花は58歳にしては若々しく艶めいていて、とんでもなく美人。この世の全てを手に入れたかのような美人作家がなぜ筆を折ったのか、そしてある時からまるで別人が書いたかのように文体が変わったのは何故なのかを新人編集者の渡部が追っていく物語。むちゃくちゃ長編。 色んな要素がてんこもりなので、どこを抽出するかにもよるんだが、敢えて一言で纏めるなら、「妻帯者との純愛」だろうか。地

            【読書感想】黒澤いづみ『人間に向いてない』

            2020/06/04 読了。 黒澤いづみ『人間に向いてない』 ある奇病が流行してしまった日本の話。その奇病は『異形性変異症候群』といい、若者の中でも引きこもりやニートと呼ばれる層が一夜にして人間の形とは全く別の醜悪な姿にしてしまう。異形になった人間は診断された時点で死亡と見なされ、保護者は死亡届を提出しなけれなならなかった。 主人公の美晴の息子・優一は、蟻と芋虫と百足を合わせたような異形になった。百足のような脚は、人間の指で先端には爪がある。美晴によく似た爪である。

            【読書感想】津村記久子『まともな家の子供はいない』

            2020/05/24 読了。 津村記久子『まともな家の子供はいない』 中学3年生のセキコは家庭に居場所を見つけられず、街を放浪している。季節は真夏。夏休みの昼間、セキコは図書館と親友の家と公園を渡り歩く。 セキコは、仕事を辞め公団住宅の自宅でワイドショーに悪態をついたり、昼日中からゲームに興じる父親を疎ましく思っている。父親と接点を持ちたくなさすぎて、家の中に居られない。でも、夜はちゃんと帰るし、不登校になっている男子中学生のお宅にお邪魔した時も上がり框から上がらない慎

            【読書感想】西加奈子『i』

            2020/05/17 読了。 西加奈子『i』 たぶん、今から書く感想は自分から剥がれてきた汚い部分だと思うけど、垢だって自分の一部なので正直に記す。 読み終わって一言目に出たのは「働け」だった。  「アイよ、社会の不幸を嘆きながら、働こうや」と吐き気がした。 赤子の時に裕福な夫婦の養子になったシリア出身の女の子、アイ。見目はシリア人だが、中身はズブズブの日本人。アイは、没個性を肯定される日本の学校が合うし、数字で判断する偏差値制度にも疑問を持たないし、自分の進路も人

            【読書感想】吉田修一『キャンセルされた街の案内』

            2020/05/13 読了。 吉田修一『キャンセルされた街の案内』 これといって印象に残らない作品が10編。特に落ちがあるわけでもなくいきなり終わったり、ゆるっと終わったりする。吉田修一の雑多な感じが好きだったなーと耽ったりした。 日常って続いていくものだから、落ちなんて求めるのは異常なのかもしれない。十の短編は、どれも平坦な日常の一瞬を切り取って文章にしている。決して明るくはない、なんなら暗い。惰性や諦念、そういった言葉が似合う物語ばかりだった。  「数日間着続けて

            【読書感想】中村文則『遮光』

            2020/05/05 読了。 中村文則『遮光』 恋人の事故死を周りに隠し、海外で生きていると嘘を吐きながら暮らす男の話。 私は中村文則さんの作品の中で『悪意の手記』が一番好きなのだけれど、それと並ぶくらい『遮光』はよかった。読み終わった後の自分の心の揺れや動きを記しておきたくて感想文を書いているけれど、この小説は言葉にするのがとても難しい。言葉にしたら私も「私」を演じられなくなるのではないかという不安もある。 主人公は死んだ恋人の指を持ち歩いている。ただ、その指に性的

            【読書感想】朝井まかて『最悪の将軍』

            2020/05/03 読了。 朝井まかて『最悪の将軍』 江戸幕府5代将軍・徳川綱吉を、綱吉本人と妻の信子の視点から描いた小説。 綱吉と云えば「生類憐れみの令」だが、自分が見聞きしてきた綱吉公の印象とは真逆の小説だった。今となっては何が正しいかは分からないから、この小説も全てが真実ではないと思う。でも、疫病が流行る今この時に読むと、物の見方が変わるというか、国を司る者に対しての虚しさが感じられてよいのではないかと感じた。 文を以て、真に泰平の世を開こうとした綱吉。民は国

            【読書感想】村田沙耶香『きれいなシワの作り方 淑女の思春期病』

            2020/04/14 読了。 村田沙耶香『きれいなシワの作り方 淑女の思春期病』 村田沙耶香の声が好きだ。上品で優しくて柔らかいあの口調が好きだ。 実際の村田沙耶香と村田沙耶香の作る物語は当たり前だがかなり違う。ほわほわした人となりから想像できない猟奇的な小説世界。 このエッセイはどっちの村田沙耶香なのだろう、と思って本屋で手に取った。活字の村田沙耶香が気になった。 読みながら思ったのは、どこにでもいるような女性だなということ。化粧や服装、人間関係、旅行、結婚観、子

            【読書感想】桜庭一樹『赤 × ピンク』

            2020/04/09 読了。 桜庭一樹『赤 × ピンク』 非合法のガールファイトで働く、まゆとミーコと皐月、3人の人間の物語。3人の"女性"と書くことに抵抗があるので"人間"と書く。 廃校の校庭で夜毎開かれる非合法のガールファイト。そこは正直、現実感がないんだけど、女の子たちの心情は生々しい程のリアル。同性愛的な空気が仄かに漂っていのも現実感がある。語り手は、まゆミーコ皐月なんだけど、書き手が男性的な目線でガールファイトを捉えているからなのか、性別が溶け合って無くなって