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【読書感想】奥田亜希子『ファミリー・レス』

2020/06/20 読了。

奥田亜希子『ファミリー・レス』

6つの短編からなる連作短編集。姉妹、夫婦、父と娘など、すべて家族に関係するお話。

奥田亜希子作品は初めてだった。噂にはちらほら聞いていたけど、すごかった。

まず、情報の出し方がめちゃくちゃ巧い。懇切丁寧な説明はないないけど、ちゃんと読み解けるよう最低限の情報を入れてある。読解とはこういうことか、と楽しくて楽しくてたまらんかった。

6つのお話は、読んだ後よくない夢をみるほどにとてもよかった。

私が特に好きなのは『ウーパールーパーは笑わない』。生き方に彷徨ってる45歳の男性が、事務員の野矢さんに言われた言葉。「私は食べたいものを食べて年をとりますよ。後悔を残さないように今を生きることも、立派に未来のためだと思っています」

野矢さん、格好良すぎる。痺れすぎて、泣けた。私もこんな風に真っ直ぐにバクバク食べたい。

ウーパールーパーが陸化してしまうくだりもグッときた。なんだか分かんないけど泣けた。感情に言葉が追いつかなかった。

失ってしまったものと、取り戻せるもの。『ファミリー・レス』は、喪失と希望の混じり加減が気持ちいい。大きく意気込んでなくてもいいから、揺れながらも丁寧に生きていきたいと思える、そんな小説だった。







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