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【読書感想】桜庭一樹編『江戸川乱歩 傑作選 獣』

2020/04/05 読了。

桜庭一樹編『江戸川乱歩 傑作選 獣』

作家の桜庭一樹さんが厳選した、江戸川乱歩の7編の小説と2つの随筆。

江戸川乱歩は好きだけど、文字数が多いのと、漢字が難しいので、読むという行為に集中してしまい、味わうのは二の次になることが多い。

この傑作選に収められている幾つかの小説は既に読んだことがあったのだが、文字を追っているに等しい読み方で物語の細部まで覚えているわけもなく。ただ、この傑作選を読み終えた今、私は乱歩をうまく咀嚼できていなかったのだなぁと改めて思った。この傑作選は、乱歩の読み方を教えてもらえた、私にとって特別な一冊になった。

なぜ、こんな風な気付きが与えられたかは、小説の並びにある。

・二銭銅貨
・一枚の切符
・D坂の殺人事件
・屋根裏の散歩者
・一人二役
・パノラマ島綺譚
・陰獣

二銭銅貨、D坂の殺人事件、屋根裏の散歩者は有名な作品だけど、一枚の切符や一人二役はパンチが弱い。なんで傑作選に収められたんだろう、と疑問を持ちながら、エグいパノラマ島綺譚を読む。変態もここまでくると耽美だなーなどと思う。ここまではいつもの私の乱歩の理解。しめに陰獣。ここで、0.1の視力が2.0になるくらいピントが合いまくった。これぞ開眼。

陰獣では、乱歩のそれまで作品が伏線になっていた。その伏線となる作品が、二銭銅貨からパノラマ島綺譚であった。一作一作で楽しませてもらって、最後にそれらが結ばれ、陰獣となる。もうなにこれ。凄すぎ。

随筆を2つ読んで、更に乱歩の読み方を深めた段階で、編者の桜庭一樹の解説がくる。 

「デビュー作、二銭銅貨から始め、乱歩自身が自己抹殺に使用した初期作品を順に読み、陰獣にゴールするという読み方をしたらどうだろう。(中略)自分の頭にある、蔵の形をした本棚に、読んだ順に適当に詰めこんだっきりだった乱歩の本たちが、夜鳥の如く風に舞い、月光を浴びて開いて飛び、書かれた順に並べ替わっていくような」

桜庭さんの思惑通り、脳内の乱歩が整理され、作品同士が結ばれ、新たな乱歩として生まれ変わった。

こういう読み方を与えてくれてありがとう、だなあ。ありがとうございました。





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