見出し画像

ウォーゲーム初心者向けに考案された『カーテンシュピエール』のルール紹介

戦争は非常に複雑な現象です。政策決定者は、自国の戦争目的を達成するため、軍隊をいつ、どこで、どのように使用するのかを決定し、軍人はそれを踏まえて戦場に兵力を展開し、敵の部隊と交戦する方法を選択します。しかし、その決定の結果は相手の反応によってさまざまに変化するため、戦争では予期しない事態がしばしば起こります。

プロイセンの軍人カール・フォン・クラウゼヴィッツは、そのような不確実さは戦争の最も重要な要素の一つだと考えていました。近年、この戦争の特性を教える方法の一つとして、ウォーゲームを使うことが提案されています。

ロンドン大学のフィリップ・セイビン(Philip Sabin)教授は古代史を専門とする歴史学者ですが、ウォーゲームの分野で『戦争をシミュレートする(Simulating War)』(2012)という著作も出しています。これはウォーゲームの歴史とその機構を考察する研究として評価されており、著者が自ら開発したウォーゲーム『カーテンシュピエール』のルールも掲載されています。これは可能な限りルールを簡略化しつつ、教室で使用できるように工夫されたウォーゲームです。

今回の記事ではそのルールを説明してみたいと思います。19世紀のナポレオン戦争の会戦をイメージしており、10名のプレイヤーが参加します。ゲームに必要な道具は一式のトランプだけです。

ここから先は

4,620字 / 9画像

¥ 300

調査研究をサポートして頂ける場合は、ご希望の研究領域をご指定ください。その分野の図書費として使わせて頂きます。