ビジョンデザインの現場から | 【vol.6】 未来における存在意義②
—— ビジョンは課題をリフレーミングする。
ビジョンとは「未来における存在意義」。前回(vol.5)では、ビジョンデザインという領域において、私自身が、また、Vision Managementというサービスフレームにおいてそう定義していること、そのなかでも特に「存在意義」の部分についての思考をお伝えしました。
今回は「未来」について。
未来について考えるとき。好きな言葉があります。それは「未来を思い出す」というもの。
これは『開かれた対話と未来 今この瞬間に他者を思いやる』(ヤーコ・セイックラ + トム・アーンキル 著 / 斎藤 環 監訳 / 医学書院)にある言葉で、フィンランドの社会科学博士 トム・アーンキルによって開発された「未来語りダイアローグ」という対話の手法についての言及のなかで登場します。
そこには、こんな一節もあります。
望ましい状況が達成された未来の視点に立って、そこから過去(=現在)を振り返り、誰のどんな協力が現在(=未来)の望ましい状況を達成させてくれたのかを“思い出して”いくというものです。
未来を思い出す。
これは、私たちはすでに、望ましい未来を知っている、内在させているという立場に立ったもの、だと考えています。そして。私は、私たち(個人もその集合体も)はすでに、ビジョンを知っている、内在させている。それを想起する。私はそんなふうに捉えて、向きあっています。
ビジョンは、もちろん時間軸としては現在と地続きのものです。しかし一方で、概念として、必ずしも、現在の延長線上のものではないと考えています。少し言い換えると。現在目の前にしている問題、課題の改善の積み重ねの先として設定されるものだけがビジョンではない、とも言えるでしょうか。
望ましい未来を思い出せたとき。ビジョンを想起できたとき。
いまの問題、課題は、そのままの姿でいるでしょうか? 同じように私たちを悩ませるでしょうか? ビジョンに対する考え方をデジタル・アド・サービス ビジョン推進室のメンバーとシェアしていたとき、その1人から出てきたのが「ビジョンは、課題をリフレーミングするんだね」という、見出しにした言葉でした。
ビジョンを起点にふり返り、課題を再発見、再定義、再設定し、そこからアクションを起こせること。このことは、ビジョンの持つ大切な役割であり、力の1つであると考えています。
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—— 強度のあるビジョンは起点となり、軸となる。
それから。
最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である
これは、イギリスの自然科学者 チャールズ・ダーウィンの言葉。この、コロナ禍という時間を過ごすなかで、改めて認識したこと。それは、軸を持ちながらも変化できることの強さ、です。
確かに予測されること。不確実で多様なこと。そのただなかで、どういう変化が起きるのか? 問い、考えつづけること。それ以上に、どうありたいのか? 他者(対・人、対・企業などだけでなく、環境や自然といった存在も含む)どういう関係性を築いていきたいのか? (詳しくはvol.5へ)を問い、考えつづけること。他者に伝え、他者のそれに耳を傾ける。シェアすることで磨きをかけること。
そうした先に、抽出され、他者と共有できるものとして、関係性のなかに存在できるものとして言語化されるものが、強度のある「未来における存在意義」=ビジョンだと考えています。そして。強度のあるビジョンは起点であり、軸として、私たちにしなやかに変化しうる可能性や選択肢を継続的にもたらしてくれるはずです。
とはいっても。問い、考えつづけること。他者とシェアすること。磨きをかけること。これはなかなか日常的なことではありませんし、その土壌がないことも多いと言えます。ここには手助けが必要です。だから。プロジェクト化し、プロセスとして設計をしています。
少し長くなってしまいました。
最後に。前回、今回。ビジョンへの思考や定義についてお話ししていきました。ビジョンとはなにか? 本当にそうなのか? これからもそうなのか? それ自体を考えつづけること、問いつづけること。他者とシェアすること。磨きをかけること。ビジョンに対しても、そんな姿勢を持ち、向き合っていきたいな、と思います。
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竹内 悠(Takeuchi Haruka):https://www.dascorp.co.jp/blog/4598/