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❖見タイ!知りタイ!伝えタイ(号外21)❖ まいに知・あらび基・おもいつ記(2024年2月8日)

【記事累積:1939本目、連続投稿:872日目】
<探究対象…タイ、比較政治、憲法裁判所、憲法違反>

♪サワディー(こんにちは)
2024年1月下旬にタイの憲法裁判所は、選挙違反の可能性があるとして訴えられていたタイの政党「前進党」の元・党首ピタ(ピター)氏の株式保有については選挙違反にはあたらず、議員活動の継続についても認める判断をしたことは前回の投稿で綴りました。そのとき今後、「前進党」が解散させられる可能性が高まっていることについても触れました。そしてこの可能性に関連して、これからタイ国内は慌ただしくなっていくように思います。さてそのように考えるのはどうしてでしょうか。

2023年5月に実施されたタイの人民代表院(下院)選挙で、革新的な政策を掲げていた「前進党」は、定数500のうち151議席を獲得して、第一党となりました。しかしこの選挙で141議席を獲得し第二党となった「タイ貢献党」との連立構想は頓挫しました。そこには、選挙後に上院も含めて行われた首相指名の投票の難航、ピタ氏を選挙違反として選挙管理委員会が訴えたこと、そもそも王室改革などを主張する「前進党」と王室に寛容な態度をとる「タイ貢献党」との間の政策のズレなどが複雑に絡み合っていたのです。結局、両党は手を組まず、親軍派の2政党なども含めた大連立を結成し、「タイ貢献党」と「タイ誇り党」などを軸とした新内閣が発足しました。

そして先月終わりのタイの憲法裁判所による判断で、ピタ氏の議員活動の継続が認められました。これを受けてピタ氏が首相になる可能性はあるのかというと、スタートしたばかりの内閣が総辞職したり、9カ月前に総選挙が実施されたばかりの下院が解散したりしない限りは、その可能性は低いと思います。そう考えるとこの先、タイの政治が穏やかに進むのではないかと思われますが、必ずしもそうではないようです。

1月末から2月初めのネットニュースを見ていると、気になる2つの記事がありました。一つは、タイの憲法裁判所が2023年5月の選挙で前進党が掲げていた公約を憲法違反と判断したという日本経済新聞の記事(2024年1月31日)で、もう一つは、連立内閣に参加している親軍派の「国民国家の力党」の党員が選挙管理員会に「前進党」の解党を申し立てたという日本経済新聞の記事(2024年2月1日)です。

一つ目の記事に関して、タイは君主制をとる国であり憲法などでも王室を敬うことが重んじられていることが分かるので、その王室に対する不敬罪の改正を公約に掲げることは現行憲法に合致しないとの判断と考えられます。その判断の内容から、前進党の公約が国家転覆を意図したものと捉えられていることが分かります。そして二つ目の記事に関しては、前日の憲法裁判所の判断に基づくと、そのような憲法違反の公約を掲げる政党は解党されるのが妥当であり、政党を運営している党役員の公民権は停止されるべきという内容の申し立てのようです。

これらの動きのきっかけは1月25日のピタ氏に対する判断だと思います。ピタ氏や前進党がこのまま5月の下院選挙の勢いを保ち続けると、2024年5月に任期満了を迎える元老院(上院)の選出にも影響が及ぶことを危惧している人たちがいるわけです。現在の上院は2014年の軍部によるクーデターのあと、民政移管の形はとったもののそのまま親軍派が政権に居座り、その影響下で議員が任命されました。そのため現在の上院は親軍派が多数を占めていると考えられます。親軍派政党としては、次の上院議員の選出の際にも一定の影響力を残しておきたいので、躍進した「前進党」をそのままにしておきたくないという思いがあると考えられます。

2024年5月の上院議員の任期満了に向けて、今後もタイ国内は政治的に慌ただしさが増しこそすれ、減りはしないと考えられます。公約を憲法違反と判断され、他党から解党処分の申し立てが出ている「前進党」ですが、この政党は、2020年に解党を命じられた「新未来党(アナコットマイ政党)」の後身政党と考えられています。そう考えると、前身の「新未来党」が最終的に解党を命じられていることから、「前進党」も同じような道を歩むことになる可能性は高いと思います。しかし5月の下院選挙で「前進党」が国民から支持され第一党となったのは事実なので、それにも関わらず解党ということになると、国民の反発がかなり大きくなることでしょう。タイの政治のリサーチは続きます。

ちなみに、「憲法」はタイ語で「รัฐธรรมนูญ(ラッタタムマヌーン)」といいます。同じくラオ語では「ລັດຖະທໍາມະນູນ(ラッタタムマヌーン)」になります。

それでは本日はここまで。
♪ジューガンマイ(また会いましょう)

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