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『ファートンいきもの記』【47】 (2023年11月22日) 

【記事累積:1849本目、連続投稿:794日目】
<探究対象…生き物、観察、パラメーター、兵法>

今日の「いきもの」は名づけるならば≪ヒ番犬≫である。なぜこのように呼ぶことができるのだろうか。

この前の日曜日、ビエンチャンの中心部からメコン川に沿って寺院を散策していると、川沿いには素敵な寺院がたくさんあった。その一つが「ວັດໂຄກນິນ(ワットコックニン、Wat Koknin)」である。この寺院の詳しい様子については寺院紹介のシリーズで綴ることにしたい。

この寺院に入ってしばらくすると、違和感のようなものがあった。大抵の寺院では、侵入者に気づくと奥の方から番犬なのか野良犬なのかよく分からない犬たちがやってきて、警戒の意味合いを込めて吠え出すのだが、この寺院は入ってからウロウロしていても一向に犬に吠えられることがなかったのである。

不思議に思って周囲を見回すと、一匹の犬を発見した。しかし奴は日陰で気持ちよさそうに昼寝をしていたのである。その平和な雰囲気を動画に収めようと近づくと、足音に気づいたのか奴は立ち上がった。このあとはいつものように吠えられるのだろうと思っていたところ、予想外の反応であった。最初は少し距離をとっていたが、すぐにこちらに接近してきたのである。ただあえて接近してきて、相手を油断させてから吠え出すというパターンもないわけではないので、多少の緊張感はあった。しかし奴は吠えることはなく、撫でてほしいような素振りを見せたのである。どうやら私は奴にとって警戒対象ではないようなので、奴の希望通り撫でてあげることにした。

撫でてもらってよけいに気分が良くなったのだろうか。続けて奴は日差しで暖かくなっている地面に寝転がり、目を閉じて「日向ぼっこ」を始めたのである。その様子も撮影しようと思い、近づくと一瞬起きたのだが、また寝てしまった。私は容赦なく奴に近づいていくと、めんどくさそうに寝返りうってこちらに背を向けたのである。

これだけリラックスして過ごしているところを見ると、奴はこの寺院に住み込んでいる犬だろう。そのため形の上では「番犬」なのだが、この日は日曜日だったので奴は「非番」で勤務時間外だったのかもしれない。また奴が寝転がっていた場所は敷地の真ん中で、太陽の光が集まる絶好の場所であった。そのため太陽の光を全身で受けている堂々とした姿は、「太陽の番人」にさえ思えてきたのであった。

奴の様子を見ていると、「とくしゅ(特殊能力)」は「空城の計(くうじょうのけい)」であることが分かる。空城の計とは中国の魏晋南北朝時代の兵法書である『兵法三十六計』の中に記されている戦術の一つである。この戦術は、兵力差があって不利であるにも関わらず迫ってくる敵に対し自分の城の門を開けておくものである。通常ならば門を閉じて防御を行うのに対し、真逆の状態で敵を迎えるのである。あえて門を開けている状況を見たとき、敵軍の指揮官が優れていればいるほど、その異常さを警戒し、何かワナが仕掛けられているかもしれないと考えるため、逆に侵入することの躊躇を引き出そうとする戦術なのである。

通常の犬ならば吠えて好戦的な姿勢を見せるところだが、見たところ犬は奴しかおらず、兵力の少なさを自覚していたのだろう。人間一人と犬一匹の関係では兵力差があり不利なので、奴は「空城の計(くうじょうのけい)」を用いて、心理戦を仕掛けてきたわけである。ただし、私はその様子に警戒して撤退はしていないので、この戦術がどれだけ効果があったかというと微妙なところであろう。

それでも奴は「空城の計(くうじょうのけい)」を巧みに利用しながら、「番犬ではない存在」と相手に認識させて、直接的な戦闘を避けることには成功している。そして、太陽の光が集まる重要な場所に寝転がり、そこに相手が入ってこられないようにしているので「太陽の番人」としての役割も果たしていることになる。つまり奴は「非番の犬」であると同時に、「日の番犬」でもあったのである。ここから奴の名は≪ヒ番犬≫となる。

なお、添付したスライドは奴の「呼び名」、「とくしゅ(特殊能力)」、能力値のパラメーターなどを分かりやすくまとめたものである。

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(以下で今日の「いきもの」をスライドにて紹介)
(動画も紹介)

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