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❖見タイ!知りタイ!伝えタイ(号外20)❖ まいに知・あらび基・おもいつ記(2024年1月25日)

【記事累積:1924本目、連続投稿:858日目】
<探究対象…タイ、比較政治、厚遇と冷遇>

♪サワディー(こんにちは)
去年まで住んでいたタイを離れてからもうすぐ1年が経ちますが、ネットニュースでタイ関連の記事が目に入ると、反射的に記事をタップしてしまいます。昨日もネットニュースの一覧を見ていると、タイ関連の記事がいくつか上がっていました。その中で特に気になった記事が2つありました。他にも昨日はタイ関連の記事を見たのにもかかわらず、どうしてその2つだけが特に気になったのでしょうか。

1つ目は、タクシン元・首相の記事(毎日新聞デジタル版)でした。タクシン氏は2006年に軍部によるクーデターで失脚し、その後2008年に汚職などの罪により実刑判決を受けました。しかしそれから彼は亡命し、長い時間を経て2023年8月22日にタイに戻ってきました。彼は実刑判決を受けているので、タイに戻ってくればそのまま収監されることは分かっていましたが、ちょうどその頃、タクシン氏と繋がりが強い政党(タイ貢献党)が連立政権の主軸となり、帰国当日に指名されることになっていた新首相もタイ貢献党に所属していたので、帰国前から減刑されるという見方がありました。帰国後、タクシン氏は療養を理由として刑務所ではなく病院に収容されましたが、10日も経たないうちに恩赦によって刑期は「1年」に短縮されたのでした。

そんなタクシン氏ですが、現在も病院で療養をしています。さらに1月中旬には法務省が異例とも言える声明を出したため、市民団体の反発が高まっているというのが、昨日見た記事でした。その声明というのは、タクシン氏は現在刑務所ではなく病院にいるので「囚人」と呼ばないようにというものだったと記事では言われています。このような対応を市民団体は「特別待遇」だとして批判しているようです。

もう一つの記事は、タイの政党「前進党」の元・党首ピタ(ピター)氏の記事でした。ピタ氏率いる前進党は革新的な政策を掲げ、若者を中心に支持を集め、2023年5月に実施されたタイの下院選挙で151議席を獲得しました。そのため、選挙で第一党となった前進党を軸に連立政権が生まれ、新首相としてピタ氏が指名されるのではないかとみられていたのです。しかし首相を指名する投票の第1回目ではピタ氏は過半数の支持を得られず、指名投票は次回に持ち越しとなったのです。

そして2回目の指名投票が近づく中で、選挙管理委員会は「ピタ氏が憲法の規定に違反している」という訴えをタイの憲法裁判所に起こしたのでした。タイの憲法では、下院議員の被選挙権を行使できない場合をいくつか挙げていて、その一つが「新聞またはマスメディア事業の所有者または株主であること」でした。ピタ氏が持っている株式がこれに該当するのではないかということで選挙管理委員会が訴えを起こしたのです。

そして裁判所は最終的な判断が下されるまで、ピタ氏の議員資格を一時停止するという決定をしました。それを受けてタイ議会はピタ氏が2回目の首相指名投票に立候補することを禁止する議決をしたため、ピタ氏が新首相に選ばれる道は途絶え、そのあと第2党だったタイ貢献党を軸に政権構想が進み、タイ貢献党のセターが新首相に選出されたのでした。

しかし昨日の記事(TBSニュースデジタルや東京新聞web)を見てみると、「ピタ氏はiTVという企業の株式を父親から相続し保有していたが、iTVは2007年以降メディア事業を行っていない」とタイの憲法裁判所が判断したと書かれています。そして、ピタ氏の株式保有については選挙違反にはあたらないとして議員活動の継続を認める判断をしたと書かれています。

この2つの記事を比べてみると、タクシン氏の方は「権力による厚遇」という特徴があり、ピタ氏の方は「権力による冷遇」という特徴があると思います。タクシン氏はこのままだと一度も刑務所に入ることなく、恩赦によって短縮された刑期を、刑務所に比べると快適な病院という空間で過ごし切って出所できるわけで、権力からの厚遇(ポジティブな処遇)を受けていると捉えられているわけです。一方ピタ氏は、タイの憲法裁判所が選挙違反がなかったこと、そして議員活動の継続を認めていることなど、判断それ自体は悪いことではないのですが、この判断が下されるまでに要した時間の中で、彼は新首相に選出される機会を奪われたと言え、権力からの冷遇(ネガティブな処遇)を受けてしまったと捉えることができます。

昨日はそんな対照的に思える記事を同じ日に見たので、他の記事よりも2つの記事が気になってしまったわけです。2023年9月からセター首相を中心とした新内閣がスタートしていますが、景気刺激策を色々と打ち出してはいるものの、タイ国民の反応はそこまで肯定的ではないように感じます。前進党を除いた連立政権を作るために親軍派の政党も取り込んでしまっているので、スタートから国民の反発があるだけに、このまま景気が大きく好転しなければ、タクシン氏への厚遇やピタ氏への冷遇も影響して、さらに反発が強まってしまうのではないでしょうか。さらに気になるのは、151議席を獲得している前進党が選挙公約に掲げていた「タイ王室に対する不敬罪を改正する案」が刑法に抵触するとして、今後政党が解散させられる可能性が高まっていることです。タイから離れてはいますが、やはりタイの動向は気になります。引き続きリサーチしようと思います。

ちなみに、「囚人」はタイ語で「นักโทษ(ナックトート)」といいます。タクシン氏に対してメディアが使っていた呼称は男性囚人を示す「นักโทษชาย(ナックトートチャーイ)」だったようです。同じくラオ語では「囚人」は「ນັກໂທດ(ナックトート)」になります。

それでは本日はここまで。
♪ジューガンマイ(また会いましょう)

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