世論って何ですか?
~日本はどこに向かっていくのか~
世論って何?
民意という人もいる。
ウィキペディアで調べたら
世間一般の意見のことで、公共の問題
について多くの人が共有している意見
もしくは大多数の賛同が得られている
考え
となっていた。
しかしそこには但し書きがついており
ひとつの問題を巡って世論が割れ対立
し合うこともある
とあった。
その通りだと思う。
定義はさておき、世論を巡っては必ず対立やしこりが生じるものだ。
その世論を政治的にくみ取る方法は選挙であり、それに資するのがメディアの役割りということになる。
そしてその結果は、よほどのことがない限り(共産主義国家や独裁国家の選挙など)、正当な手続きの結果として受け入れるしかないだろう。
それに従うというのが民主主義というものだ。
先の自民党総裁選しかり。
アメリカ大統領選しかり。
その結果をめぐっては、メディア、SNSなどいろいろな媒体を通して、批判、称賛、憶測、誹謗中傷などが飛び交った。
日本の未来に直結する問題でもある以上いろいろな見方があるだろうから、それぞれ意見も異なり、それを発信することができるということは、ある意味正常な民主主義社会とも言えるかもしれない。
ただメディアがくみ上げる世論(民意)というものは冷静に判断しなければならない。
先のアメリカ大統領選でも、日本の大手メディアは選挙運動中は民主党寄りの報道を続け、開票が始まると
民主党のハリス優勢
と報じていたが、蓋を開けてみたらトランプの圧勝だった。
彼らがハリス優位と報じた根拠はどこにあったのだろう。
ある程度事前アンケートなどでアメリカ人の民意を汲み上げたうえでの報道だったのではなかったのか。
しかしその予想は、あまりにもアメリカ人の本当の「民意」とかけ離れていた。
ところがメディアはその報道内容に責任を取るという姿勢は決して見せずに、トランプを選んだアメリカ国民の品位を疑うようなことを言ったり、トランプ本人の人間性や行状を非難したりするようなコメントばかり取り上げていた。
確かに憲法で示されているとおり、思想・良心の自由の一環として
報道の自由
も確保されなければならず、いろいろな意見を報道することは自由かもしれないが、他国民の品位や対立候補の人格を非難する前に、まずは冷静に結果を受け入れるべきではないだろうか。
圧勝という結果であったならば、きちんと取材をしてさえいれば、事前にその民意もくみ取れていたはずだ。
いや逆にくみ取れていたからこそ日本人にはそれを隠したのか。
「報道しない自由」などといった論理を振り回す輩もいるほどだから・・
事実を正確に伝えないのであれば、汲み上げた世論を報道しないとなればもはやメディアの存在価値はない。
しかしそうは言っても、メディアの報道内容というものも、何も彼らだけで形作られているものではないだろう。
それだけの報道をするからには、そのような報道姿勢を是とする民意も日本国内には少なからずあるということだ。
所詮メディアも利益を追求する民間企業である以上、視聴率や売り上げ部数が伸びないと企業として成立しない。
そうしなければスポンサーは離れていくし、視聴率や読者も減る。
ということは、たとえ現実の選挙結果を受け入れざるをえなくなったとしても、それを認めたがらない国民が少なからずいるということになる。
それが報道姿勢に反映されたということになる。
ただそうは言っても、私は何もトランプ大統領が好きだったり、ことさら彼に当選して欲しいと願っていたわけでもない。
日本と同盟関係にある大国の大統領選なので、その結果は少なからず日本に影響があると思われるが、いかんせん他国の選挙だ。
誰が当選しようが、それはアメリカ国民が選択した結果であって、我々がとやかく言える筋合いのものでもない。
しかしまだ選挙結果で一喜一憂する事態はいいかもしれない。
百歩譲って広い目で見れば、先にも述べたとおり民主主義が機能していると捉えてもいいかもしれないからだ。
ただ日本の近代史を俯瞰する時、かつて日本はこの世論なるものに振り回され、それに国運を委ねたが故に、悲惨な戦争に突き進んでいかざるをえなかったという一面もあることを忘れてはならないだろう。
日本は明治維新後、近代国家として歩み始めてから三回も世界的な大国と戦争をしてきた。
最初は、当時アジアの大国であった清である。
その頃清は欧米列強の植民地支配の標的とされ、領土を蚕食されつつあったものの、いまだに中華思想を背景としての周辺諸国に対する影響力は大きく
眠れる獅子
と恐れられていた。
この戦争には、当時朝鮮半島にあった李氏朝鮮がその清の宗主国であったことが背景としてある。
宗主国とは、他国の自治は認めるものの相手国に対して少なからず影響を及ぼすことができる力を有する国のことで、いわば李氏朝鮮は清の属国とも言える状態であった。
このためその状態を放置すれば、清の次に植民地化の危機が及ぶのは朝鮮半島である。
おまけに清の後方には、当時最大の領土と国力を有したロシア帝国が隣接しており、彼らも不凍港を求めて南下政策を推し進めていた。
地政学的に日本ののど元に匕首を突き付けられるように存在する朝鮮半島を放置すれば、遅かれ早かれ欧米による植民地支配の危機が日本に迫りかねない。
当時の日本政権はそう考えただろう。
そしてそれは正しい判断だったと思う。
このため日本は李氏朝鮮に何度も特使を派遣して、鎖国を解き、宗主国清の保護から独立して近代化を推し進めるよう進言した。
しかし李氏朝鮮は頑固としてこれを拒否して鎖国を続け、日本はその姿勢を後押しして日本に圧力をかけてきた清との戦争やむなきに至った。
それが日清戦争の正当な評価と思われる。
幸いにも日本はこの戦争に勝利を収めて、清から台湾や遼東半島の割譲を受けたが、その背景には
大国との勝利に酔った国民の
異常なまでの領土要求という
「世論」
があった。
確かに戦争に犠牲はつきものであり、世論の背景にはその戦争で大切な家族を失った遺族の存在が大きかっただろうことを思う時、政権もそれを無視できないものがあったのだろう。
しかし当時日本は領土要求までは考えておらず、朝鮮の独立さえ担保されればいいと考えていたようだが、最終的にはそのような世論の後押しを受けて領土の割譲要求まで踏み込んでしまった。
ところがこれを
日本の大陸に対する野心の現れ
と見たロシアは、ドイツ、フランスとともに、日本に対して割譲を受けた遼東半島を清に返還するよう求めるに至った。
ロシアにとって、日本が遼東半島を支配すれば自らの南下政策がくじかれると思ったからだった。
いわゆる
三国干渉
である。
その後日本政府が泣く泣くこの理不尽な外圧を受け入れ、ロシアが日本に変わって遼東半島に不凍港を開設するようになると、日本国内の世論は激高して政権の弱腰をののしり
ロシア打つべし
の声が盛り上がったが、これを後押ししたのが大手新聞社の論調だった。
新聞は売れに売れて各社とも業績を伸ばし、最後は
臥薪嘗胆
(『薪の上に寝て肝を嘗めるような苦しく苦い思い』)
というフレーズで、さらに世論を煽った。
何も日本は大陸に対する領土的野心があったのではなく、それを持っていたのは我々国民だったという面もある。
そして新聞各社は自社の収益をあげるためにそれを煽って売り上げ部数を伸ばした。
ただそうは言っても相手はロシアである。
当時ロシアは、世界最強規模の陸軍と海軍を有する強大な国であった。
とても近代化してまだよちよち歩きの日本が相手になる国ではないと目されていた。
しかし今度は国際世論という「魔物」が日本の後ろ盾となった。
当時中国や朝鮮半島の利権に食指を伸ばしいてたイギリスやドイツ、フランスなどは、ロシアの南下政策に危機感を感じており、ロシアの南下政策は極東アジアに緊張をもたらすといった世界的世論を作りあげた。
イギリスにいたっては日本と同盟を結び、日本がロシアと戦うことを決意する大きな後ろ盾となってくれ、戦費調達のための莫大な戦時国債の引き受けにも応じた。
そのような経緯を経て国運を賭けて始まった日露戦争は、仮想敵国をロシアと仮定した長きにわたる血の滲むような猛訓練を重ねてきた陸海軍と、ロシア本国から遠く離れた極東での戦いという地の利、共産主義者の台頭により政情不安定となったロシアの国内事情、さらには「臥薪嘗胆」という国民の一致団結した敵愾心にも助けられて奇跡的な勝利を収めることができた。
確かにこの戦争で最初に宣戦布告をしたのは日本だったが、歴史的経緯を見れば、日本にとっては欧米の植民地支配から免れるための自衛の戦争だったという側面があることは明白である。
日本人は
この戦争に勝たなければせっかく鎖国
を解いて近代化を推し進めてきたにも
かかわらず、植民地化されるようなこ
とになればまた後戻りする
という悲壮な思いでこの戦いに臨んだと思われる。
しかしこの勝利は欧米の殖民地支配に苦しんでいたアジア諸国民にとって
有色人種も白人に勝てる
という希望の光になる一方、欧米にとっては「新たな敵」の出現として警戒感をもって捉えられた。
その後ここでも、国内世論はさらに盛り上がり
多くの将兵の血で贖った
と捉える領土要求の世論はさらに強まり、その後それは日本が望むと望まざるに関わらず韓国併合や満州国建設につながっていった。
そしてそれは、その後第一次世界大戦による好景気で国力を蓄えてアジア市場に食指を伸ばしてきたアメリカの利権と衝突することとなった。
日本の次の仮装敵国はアメリカとなった。
日本はせっかく国際連盟理事国の地位までのぼりつめたにもかかわらず、その地位を放棄してまで国際的孤立に陥っていくこととなった。
また世界的大不況も重なって、ブロック経済圏を確立した欧米に対処して自存自衛のために大東亜共栄圏という新たな経済圏を確立しようとしたが、ABCD包囲網という日本包囲網を敷かれるにあたり、またしても自存自衛のためにアメリカと干戈を交えざるをえなくなった。
そしてその戦中においても、国民の戦意高揚にひと肌脱いだのは、朝日新聞をはじめとした大手メディアで
一億総玉砕
討ちてしやまん
などと紙面で煽った。
報道内容にも軍の検閲が入り、正しい報道ができなかった。
そんな時代だった。
そう弁解したい方もあるに違いない。
ただアメリカの大統領選挙報道でも見られたとおり、国民に真実をひた隠したという姿勢は同じだった。
戦意を継続させる世論を作った責任はあまりにも大きいが、誰も責任を問われることはなかった。
そればかりか、戦後はGHQの検閲にひれ伏して逆に反日プロパガンダの旗手となって生き残った。
日本ではこの戦争の終結を「終戦」という言葉でごまかしているが、莫大な戦費と人的物的損失の引き換えに残ったものは、焼野原となった国土だけであった。
終戦ではなく「大敗」だった。
もはや、欧米に抗う術もないほど世論も打ち砕かれた。
国民やメディアは、すがるようにGHQから押し付けられた憲法や自虐史観を有難く押し頂き、過去の価値観を全て投げ捨てた。
そして欧米追従政権となる見返りとして経済的繁栄を手に入れたが、日本人としてのアイディンティティは骨抜きにされた。
これが日本の近代史を世論とそれを取り上げるメディアを中心とした見方だ。
戦前までの世論は180度転換してしまったが、その歴史的経緯を見る時、日本国内の世論と言えど、その成立の元凶となっているのは欧米であることがよく分かる。
なんのことはない。
歴史を俯瞰すれば、日本の国内世論はいつの時代も欧米にふりまわされてきたということになる。
そしてその世論を造り上げてきたのはいつの時代もメディアだった。
今アメリカは、トランプを盟主として世界に切り込んでこようとしている。
来年からは世界的な政治学上の変動が起きるであろう。
長い歴史を経てアメリカと同盟関係となった日本にとって、その影響は良しに着け悪しきにつけ大きいだろう。
今や世界は、資本主義対共産主義という対立の構図から
グローバリズム対民族主義
となった。
おそらくしばらくは、グローバリズムに抗おうとするトランプに対してメディアは反民族主義的キャンペーンを振りかざすだろう。
しかし世界を見渡せば、移民政策で国内治安が不安定となった欧米諸国のなかにも静かに反グローバリズム的精神が浸透してきつつある。
もはや自民党ですら、政権維持のためだけに移民政策、夫婦別姓など日本を内部から崩壊させるような政策にも踏み込もうとしている。
そしてそれを支えているのは大手メディアであることを思う時、「世論」の読み方はというものは今後ますます重要になってくる。
今後その判断基準は、従来の右か左か、保守か革新か、グローバリズムか反グローバリズムといった既存のものではなく、過去の歴史を俯瞰して同じ轍を踏むことのないよう
日本人としてどう進むべきか
国体を維持していくためには
どうすればよいか
国益を守るためにはどうしたら
よいか
と言った、「日本第一主義」の視点に立つことが大切だろう。
トランプが
アメリカ・ファースト
と言っているように。
確かに世論を造り上げるというものは、メディアにしかできないという一面もある。
ただ事実を正確に伝えるということが最も大切だ。
事実をひた隠しにして偏向した報道を続ければ、先の大戦の時ように、将来日本を誤った方向に導きかねない。