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映画館で観るための映画の思い出【眠り姫】

チケットを買い 夜を待つ。

東急周辺のざわついた「渋谷」の雰囲気は 一つ角を曲がると次第に落ち着きを取り戻していく。

まだ周りは明るいけれど 店の灯が ともり始めて

映画館の外観はカフェになっており 一瞬素通りして慌てて戻った。

良い席に座るため開始時間より早くシアターに入る。

こじんまりとした空間に40〜50席ほどの色とりどりの椅子が並び シネコンのようなTHE映画館椅子ではないがクッションが置いてあったりして 居心地が良い。

既に何人か着席していた。大体の人が一人のようで それも落ち着く。時間が近づくと満員となり 知らない皆で始まりを待つ。

スタッフが始まりを告げ だんだんと暗くなり スクリーンが浮かび上がる。

バイオリンの 高音だが 心地よい音色とともに夜明けの樹々の陰影と空の変化が映しだされる。

綺麗とはいえないアパートの一室に場面は変わり トイレの流水音などの生活音と女の子の咳き込む音 いくら寝ても寝足りない というナレーションが入る。

七里圭監督「眠り姫」

映画館でしか上映されない作品で 風景が流れていくなか人が映ることはなく音声のみ。

こんなにも「音」にこだわった映画を私は知らない。

映画館で音を堪能する贅沢。音楽を生演奏する特別な回もあるが 機会に恵まれず いつか聞いてみたいものだ。

アップリンク渋谷で恒例のように上映してくれて(4、5年前の話です。今はわかりません…)年に一度 渋谷の映画館で「眠り姫」を観ることは私の最高の贅沢だった。



つけヒゲに憧れているのでつけヒゲ資金に充てたいです。購入の暁には最高のつけヒゲ写真を撮る所存です。